えとじやK。
11月でえとじやに入社して2年目を迎えました。 仕事を始める前はどんなことが待ち受けているのか、期待と不安のスタートでしたが、始めてみるといろんな業種のいろんな方とお会いでき、とても楽しくお仕事できました。
そんな中で、へえー、なるほど、うーん、と思うこともさまざまありました。 前例(? お。さんの「1年を振り返って、7つの驚き。」ですね)にならって書いてみようと思います。 7つにしたかったのですが、6つで。
1.業界さまざま、商品さまざま、でも大事なことは同じ。
この一年で、一番確信できたのがこれです。 いろんな業種のビジネスを少しずつ勉強させてもらいましたが、結局本質的な、大事なことはどこでも同じなんだな、という理解ができました。 これは嬉しかったです。
2.皆さん、優しい。 そして共感がある。
「これは、米系大手外資の弊害なのかも知れませんが、前職では、みなさん常に「戦闘モード」で会話しますし・・・」と去年お。さんが述べていますが、本当にそうで、ミーティングの後にはぐったりとして甘いものをばくばく食べる、なんていうこともありました。 が、この一年間、もちろん外部の人間、ということもあるかもしれませんが、皆さん優しい。
社内外問わず、お互いが非常に協力的で、「そうなんだよね」ってみんなで共感できる場面が多々あり、これは働く上で大きなモチベーションになりました。
3.共感できる分、気をつけないと・・・
ただ、共感が時折、ナーナー(ってカタカナ?)になったり、本当は細かく突っ込んで議論するべきところが、そのままになったりする場面も見受けられました。
お互い分かったつもり、だったり、わかったふりをしていたり。 でも聞いてみると他の人の反応をうかがいながら、無難な回答ばかり。 さらに突っ込むと答えはばらばら。 これは注意が必要です。
前職時代は上司や関係者が外国人だったりして、日本人の阿吽の呼吸がまるでないので、「なんでそんなことまで?」っていう細部の説明を求められ、つらかったのですが、今思えばあの作業でかなりの部分まで言語化して落とし込め、それが共有化できていたんですね。
4.「先生に教わる」の学習モデル
日本人はやはり学校で先生から勉強を教わる、という学習モデルで育っているんだなあ、と再確認。 1)教科書が必要、2)理論から入る、3)先生の話していることに異論ははさまない、4)自分の考えは間違っているかもしれないので、(特に自分よりよく知っているであろうと思われる人がいる前では)みんなの前で自分の考えは出さない。 でも実は意見はある。
今の仕事になってから、クライアントさんの前でプレゼンやセミナーをさせていただく機会が多くなりましたが、最初は反応が悪いのにちょっと不安を覚えていたりしました。 が、終了後のアンケートでは「とてもよかった」と書いていてもらったり。 なので、見た目の反応と実際の反応は違う、この学習モデルに合わせて構成が必要、というのが学びでした。
でも、もっとインタラクティブに参加してもらったほうがいいんだけどな。 こちらのファシリテーション能力を上げることも重要ですね。
5.製品への愛と客観性の両立
皆さん自分の携わる製品について伺うと、いろんな形で製品への愛情を語ってくれます。 本当に誠実に、まっすぐに取り組んでおられるので、製品知識はもちろん、開発に関わるエピソードなどもたくさん出てきます。 カレーを作っている人に話を聞いた時は、自分もカレーをかき混ぜている気分になれました。
ただ、その製品が市場に出たときに、どう見えているのか、どう受け取られているのか、という少し引いて見た、客観性はある程度持っておくといいんでしょうね。 よくあるのが、「これだけ一生懸命作っているんだから、お客さんも理解しているはず」という思い込み。
時としてこの思い込みが間違った戦略設定になることもあるようです。
「こんなにおいしいカレーなのに売れないなんて。もっとおいしくしなければ!」←そんなにおいしいって、まだ気づいていない人が多いだけかもしれません。
6.無駄な調査
調査に関わっている私からするとすごく残念なのですが、どうやら無駄な調査が世の中にはたくさんある気がします。
調査会社にすすめられ、型にはまったありきたりの調査をなんとなくやって、どう使うかわからず、結局「ふ~ん」と言って終わり。
もしくは、コンセプトテストなど製品に対しての評価をやたらとたくさんやっているケース。 たくさんテストしてどれかあたればいいなと神頼み。 これまた無駄。
書き出すと長くなるので、ここでは触れるだけにしますが、調査の役割は、会社のビルの中からはわからない、お客さまのインサイトを理解し、それをビジネスにつなげること。 目的に合った、柔軟なリサーチが、必要最低限行われるべきです。 これを改善するのがいわば私の仕事なので、自分ががんばらないといけないのですが。
K。
「1本で部分洗いも兼用できる、スーパー洗剤」というアイデアを無事考え(前回のブログを見てください)、いよいよ本格的にコンセプトを作りこんでいきます。
Aさんはこの洗剤のターゲットを「ひどく汚れた洗濯物の多い、30代主婦」に決め、どんな時にこの洗剤が役立つのかを理解するため、もう一度ターゲットの訪問調査をすることにしました。
Aさんがなぜこのターゲットにしたかというと、スーパー洗剤の洗浄力が一番活躍する、ひどく汚れた洗濯物はやっぱり子供の泥汚れや食べこぼし。 そうなると30代主婦が一番このアイデアに響くはず。 ということなんだそうです。 果たしてうまくいくでしょうか。
今回の訪問調査はターゲットの主婦Mさんにお願いすることになりました。 事前にスーパー洗剤を使ってもらった上で、インタビューします。
Aさん: 「こんにちは、「一本で部分洗いも兼用できる、スーパー洗剤」使っていただいてありがとうございました。 いかがでしたか?」
Mさん: 「うーん・・・。 私はもう少し香りがいい方がいいかな。」
Aさん: 「えっ、あれっ? Mさんのお洗濯物、汚れが多いとお聞きしていたので、スーパー洗剤気に入ってもらえるかと思いましたが・・・。」
Mさん: 「そうそう、汚れね、息子の幼稚園の体操服とかね。 でもあんまり変わりないかな・・・。」
Aさん: 「(えっ!絶対こっちの方が汚れをよく落としているはずなのに・・・どうしてだろう???)Mさん、早速なんですが洗濯の様子、見せていただけますか?」
まずは話に出ていた幼稚園の体操服、確かに泥汚れや食べこぼしがシミになっています。 どうするのかな、とみていると、Mさんはささっと洗濯物すべて洗濯機に入れ、洗剤、柔軟剤を入れるとスイッチオン。 「終わりです。」
Aさん: 「あ、これだけですか?」
Mさん: 「え、普通こうじゃないんですか?」
Aさん: 「あ、そ、そうですよね・・・。」
なんだか前回のB子さん(前回参照)とはずいぶん違います。
さて夕方、もう一度乾いた洗濯物を取り込むMさんの様子を見にお邪魔したAさん。
やはりさっきの体操服は汚れが残ってしまっています。
Aさん: 「今日の仕上がりはいかがですか?」
Mさん: 「こんなものかな。 いつもと一緒です。」
Aさん: 「(体操服、気にならないのかな?)今日の仕上がりでもっとこうなったらいいな、ってこと、ありますか?」
Mさん: 「・・・特にないです。」
Aさん: 「(ないのか!)・・・体操服は汚れ、どうですか?」
Mさん: 「ああ、これですね。 しょうがないですよね。 落ちないと思うんです、これは。」
Aさん: 「・・・もしかしたらこれがもっと落ちるっていうことは・・・ないんでしょうかね?」
Mさん: 「えー、わからないです。 でも元には戻らないですよね。 洗濯機で洗ってもだめなんだから。」
話をするうちに、Mさんはどうやら「汚れを落とすこと」というよりは「洗濯機に入れて回すこと」が洗濯であり、それで落ちないものはしょうがない、と思っていることが分かってきました。 また前回のB子さんに比べて「汚れている・汚れを落とさなきゃ」という意識が少ないこともわかりました。
Aさん: 「使っていただいた、洗剤の話に戻るんですが、使っていただいて、洗浄力に違いは感じられましたか?」
Mさん: 「えー、ごめんなさい、わかりませんでした。」
Aさん: 「そうですか(やっぱり)。
***********************************
前回のB子さんも、今回のMさんも、同じ30代主婦、子供がいて汚れた洗濯物の多いご家庭です。 しかしどうやらこのターゲット設定だと随分と違った人が含まれてしまうことが、Aさんにもようやく分かってきたようです。
マーケティングの教科書には、必ずターゲットをきちんと決めましょう、と書いてあり、大抵のブランドや製品にはターゲットが設定されています。
しかし、よくあるのが、年齢や性別、職業、子供の有無、といった属性でターゲットを決めているケースです。
少し突っ込んで、XXで買い物をX回以上する、とかお洗濯を週X回以上する、といった行動、洗濯物が多い、とかシミがある、といった事実で設定されているケースもあります。 が、いずれもターゲット設定には不十分であることがあります。
今回のAさんのケースで見ていただいたように、まず属性でのターゲット設定は相当なマスブランドなどでない限りは難しいことが多いです。 同じ世代とはいえ、皆好みも生活もばらばら、ですよね。 働く女性、とかママとか、20代女性とか、「そんな区切りでひとくくりにしないで!」って本人たちは思っていると思います。
行動や事実・環境による区分ですが、属性よりは似た人が集まってきますが、今回のように「汚れた洗濯物が多い」というだけではなかなかくくれないこともお分かりいただけたかと思います。 大事なのは、その行動をする理由、事実や環境に対してどう思っているのか、です。
では何で設定するのがよいのか。 それは意識やニーズです。
例えばAさんのケースの場合。 「汚れた洗濯物をできるだけきれいに洗い上げたいと思っている人」というほうがターゲット設定としてはよいでしょう。 汚れていても気にしない人、はこの製品は欲しくありません。 汚れた洗濯物があるのを気にして、普段からちょっとした努力もしていて、でももう少しいい方法があるんじゃないかと思っている。 そんな意識を持っている人がターゲットであるべきなのです。
そうすると、別に30代である必要がありません。 20代でも40代、50代でも。 子供のひどい汚れでなくてもご主人のYシャツの襟について同じように思っているかもしれないし、他人から見たら「そんな汚れてないじゃない」って思うものでも本人はきちんとしたい、と思っているかもしれません。
この設定にすると、おそらく子供がいて汚れた洗濯物が多い人が結果的にたくさん入ってくると思います。 が、まずはこの意識を持った人、とすると、製品の便益の設定が作りやすくなってきます。
結局のところ、ターゲットを設定するのは消費者の行動に隠れた理由・インサイトを探る作業にほかならず、ですので、私たちの大好きな訪問調査もターゲット理解・設定の際に行うことが多いです。 インサイトを知ろうと思ったらターゲットの生活や普段考えていることなど全体が分からなくてはなりません。 逆に、全体がわかると、どんなものが欲しいのか、どんなことを求めているのか、細かい調査を繰り返さなくてもわかるようになってきます。
ではどのくらいまでターゲットを深く理解する必要があるのでしょうか。
ここで簡単なターゲット理解度チェックです。
「あなたのブランドの典型的なターゲット、Sさんを思い浮かべてください。
忙しい毎日のなか、思いがけず自分の時間が2時間できました。 さて、Sさんは何をして過ごすでしょうか?」
これが想像できない場合、ぜひターゲット理解をもう一度やってみてください。
でもどうすればいいの?
そんな場合はえとじやまでどうぞ。 って最近こればかりですが・・・。
K。
(えとじやは、とっても訪問調査が好きなんです。 加えて、先日のP&Gが取り上げられていたTV番組以来、何かと質問も多く、その中で「ホントにわざわざ消費者の家に行くんですか? それで何がわかるんですか? あれTV用ですよね?」といったお問い合わせも多いので、今回はK。に、どうして訪問調査がそんなに楽しいのか、ちょっと解説してもらいます。 お。)
今日もまた、洗濯用洗剤を担当するAさんのお話しです。 Aさんは相変わらず「汚れのよく落ちるスーパー洗剤」を何とかいいコンセプトにしようと頑張っています。
以前、主婦B子さんにインタビューをして、コンセプトを見せたときのやりとりです。
Aさん: 「汚れのよく落ちる、スーパー洗剤、どう思います?」
B子さん: 「・・・買うかどうかわかりません。」
Aさん: 「どうしてそう思われますか?」
B子さん: 「今使っている洗剤でも十分汚れは落ちていると思うので。」
Aさん: 「そうですか・・・。 汚れにはどんなものがありますか?」
B子さん: 「子供の泥汚れや食べ物の汚れ、ですね。」
Aさん: 「そういう汚れって、落ちにくくないですか?」
B子さん: 「うーん、そうですね・・・。 でも落ちてるかな。」
Aさん: 「スーパー洗剤は他の洗剤よりもっと落ちるんですけど?」
B子さん: 「・・・今のは使い慣れているし、十分落ちてるからどちらでもいいんですが・・・。」
だんだん押しつけがましくなってきたAさん、本当に汚れが多いならどうしてスーパー洗剤がいいと思わないのか、納得のいかない様子。
B子さんにしてみれば、「この人何回言ったらわかってくれるんだろう、しつこいなあ。」
2人はすれ違います。
Aさん: 「お洗濯は今どのようにされているんですか?」
B子さん: 「えっ、ふつうです。 特別なことは何も・・・。」
B子さんは洗濯物の汚れが多い主婦、という、Aさんが想定していたスーパー洗剤のターゲットです。なのにこんなにつれない返事とは。 Aさんがしつこくなるのも理解できます。
Aさんは実際のところがどうか確かめたくなり、B子さんにお願いしてご自宅を訪問し、洗濯物や洗濯の様子をみせてもらうことにしました。
*******************
まずおうちに入ってびっくり。 家中とてもシンプルできれいに片付いています。 お子さんがいるようには見えません。 でもお子さんが描いた絵や写真が至る所に飾ってあることから家族の仲の良さが感じられます。
A: 「素敵なお宅ですね!」
B: 「そうですか? なかなかうまく片づけられなくて・・・。」
A: 「全然! ものすごくきれいですよ。 じゃあ早速なんですけど、お洗濯、見せていただけますか?」
B: 「はい。 まずは洗濯物を洗濯機の中に入れて・・・。」
A: 「ちょっと待ってください! 今、洗濯物を仕分けてらっしゃいますがどうしてですか?」
B: 「ああ、白物や特に汚れてないものから洗うんです。」
A: 「どうしてですか?」
B: 「キレイなのが汚いのとまざるのが嫌なので。 あと、白物にはタオルが多いので、柔軟剤を入れます。」
A: 「なるほど~。」
B: 「で、まわします。 その間に、少し汚れているものには部分洗いしておきます。 主人のYシャツの襟とか、ですね。 で、置いておきます。」
A: 「なるほどー。 この前おっしゃっていたお子さんの汚れ物ってのが出てきてないですが?」
B: 「ああ、それはここです(と、お風呂の洗面器を見せて)。 これは体操服なんですけど、泥汚れがひどかったので昨夜から漂白剤で漬け置きしてました。」
A: 「本当だ。 汚れはすっかり落ちてますね。」
B: 「そうなんです。 手間かけたら割とどれもそこそこ落ちますよね。」
A: 「なるほど・・・。・・・スーパー洗剤、どう思われますか?」
B: 「・・・洗剤は、どれも同じだと思うんです。 結局汚れを落としているのは部分洗い用や漂白剤なので。 洗剤は汗とか軽い汚れを落としてくれたらいいです。」
A: 「そうなんですね・・・。 じゃあ何かお困りのことはありますか?」
B: 「うーん、もう少し手軽にきれいになったら嬉しいかな。 やっぱりいろいろと使わないといけないし、ずいぶんと手間ひまかかっているなぁとは思っているので。」
このインタビューをふまえて、Aさんは「1本で部分洗いも兼用できる、スーパー洗剤」というコンセプトを考えました。
さらに、楽に汚れが落ちてすごいでしょ、ではなく、(そんなことを言ってもB子さんはきっと信じてはくれないので)B子さんのように毎日頑張っている主婦が少しでも楽になるように、という気持ちを込めたいな、と思いました。
もう一つ、B子さんのおうちに合うような、シンプルで清潔感のあるパッケージデザインにしたいなぁとも思いました。
********************
さて、今回は訪問調査のススメ、です。
訪問調査とは文字通り、消費者のお宅に伺い、インタビューしながらいろんなものや行動を見せてもらう(観察する)ものです。
インタビュールームでインタビューするのに比べ、ご自宅で実際洗濯しながら話を聞くことで、Aさんは何が分かったでしょうか。
・B子さんは汚れにそんなに困ってないのではないか→
やはり、汚れはあって、それをしっかりと落とす努力をしていた(実際の問題のレベル)
・洗濯の仕方は「ふつう」にやっている→
かなりの手間ひまをかけて工夫してやっている(言動 vs. 実際の行動)
・今の洗剤で十分汚れは落ちている→
汚れを落とすのは部分洗いや漂白剤で、洗剤はどれも同じだと思っている(より深い洗剤に対する態度)
・すごく家族のことを考えているお母さん(母としての人物像)
・大変な手間をかけて毎日洗濯をしている(主婦の実態の理解と、それに対する共感)
・シンプルな片付いた家で、インテリアの好みもベージュ系で落ち着いている(生活やデザインに対する好み)
実は3時間の観察・インタビューで分かったことはもっともっとあったのですが、ここに挙げたものでも十分Aさんには新発見だったようです。
皆さんは実家や親せき、友人宅以外のおうちに行ったことはありますでしょうか。
自分の周りの人は良くも悪くも「似通った」人の集まりです。 ですので、自分と周りの常識をつい「ふつう」と考えてしまいがちです。
しかし実際には100人いたら100通りの暮らしと住まいがあり、それぞれの「ふつう」の暮らしをしています。 それを口で説明してもらってもなかなかわからず時には疑問や謎が増えるだけ。実際に見る方が正しく理解できます。
また自宅は一番自然な姿が分かる場所。 女性として、主婦として、母として、妻として。 その価値観も垣間見ることができます。 インタビュールームではわからないことですよね。
百聞は一見に如かず、です。
特にモノづくりをされている皆さん、なにはともあれ、ぜひ一度ユーザーさんのお宅に行ってみてください。 まず、自分の関わったものが生活に入り込んでいるのを見るのは感動します。 そして、自分が今まで「ふつう」と思っていたこととのズレに驚かされます。 机の上で、ビルの中で、あれこれと考えるよりずっとヒントが得られます。
ところでえとじやは訪問調査が大好きで、行くとすぐ「楽しい、楽しい」とつぶやいてしまうのですが、それはなぜかと考えてみると
・どこの家にもドラマがある
・何軒行っても、なお常に新発見がある
・実際に使っている人と一緒に考えたり感じたりできる
ということでしょうか。
ホントにそんなにいいの?
どうもよくわからない、どんな時にいったらいいんだろう、どうしたら実施できるのか?
そんな疑問をお持ちの方はえとじやまでご連絡くださいね。
なんせ大好きなので喜んでお手伝いいたします!
K。
とある洗剤メーカーで洗濯用洗剤を開発しているAさん。 今日は新しい製品のアイデアを見てもらおうと、主婦に集まってもらいグループインタビューをしました。 たくさんの人にインタビューしたいと思い、6名のグループを10組設定しました。
Aさん:「みなさん、こんにちは。 今日はお洗濯についてご意見をお聞きしたいと思います。 さて、早速ですけど、皆さんのおうちではどのようにお洗濯をされていますか?」
「毎朝1回まわしています。 洗剤は香りがあるのが好きです。」
「うちは家族が多いので2回します。 男の子がいるので、泥汚れがねぇ。」
「うちは共稼ぎなので、夜洗濯して部屋干ししています。」
Aさん:「そうですか。 では次に洗濯の際に工夫していることがあったら教えてもらえますか?」
「白物とそれ以外に分けてます。 色落ちしたら嫌なので。」
「汚れがひどいものは夜つけ置きして、朝洗濯機で洗います。」
「・・・私は特にないです。」「同じです。」・・・
Aさん:「ありがとうございました。 今日は新しい洗剤のアイデアを見てもらいたいと思っています。 『どんな頑固汚れもさっと落ちる、スーパー洗剤登場!』どうでしょう?」
「あ、それいいですね。 うちの子供の汚れ、すごいので。 野球しているので、体操服や靴下が真っ黒です。 本当に落ちるか、試してみたいです。」
Aさん「なるほど。 ほかの方はどうですか?」
「・・・うちはあまり汚れ物がないので、どうかな。」
「汚れが多いっていうお友達がいるのですが、その人は買うかもしれません。」
Aさん:「では皆さんの買いたい気持ちを5段階で表すとどれになるか、選んであてはまるものに挙手をお願いします。 では必ず買うだろう、と思う方?」(10名挙手)
「多分かうだろうと思う方?」(22名挙手)
「買うかどうかわからないと思う方?」(34名挙手)
10組すべてに同じ質問をした結果、20名が「必ず・多分買うだろう」と答えました。
まとめの際にAさんは「60名の主婦に調査したところ、33%の人が買うと答え、このアイデアは十分製品化できる可能性がある」とし、製品化を進めることにしました。
*********************
さて、このインタビュー、どう思われますか?
結論からいうと、やるだけ無駄。 このインタビューからは何もわからず、あるいはわかりきっていることが確認できただけ、次にとるべきアクションもわからずじまい、です。 でも、残念ながら似たような状況をよく見かけます。
いったい何がまずいのでしょう。
たくさん「NG」がありますが、中でもまずいのは、安易にグループインタビューを選んでいることだと思います。
まず、調査の目的がとても曖昧ですね。 アイデアの最終評価をしたいのか、それとも消費者の意見を聞いてアイデアを修正していきたいのか。 目的がはっきりしないので、とりあえずグループインタビューで聞いてみよう、的な。 せっかくのグループインタビューなのに、一問一答形式で、答えもみなバラバラ。 結果、「なぜ・どうして」を掘り下げることなく、個人の行動と表面的な反応しか聞けていませんし、グループインタビューなのに「33%の人が・・・」なんて結論まで出してしまっています。
グループインタビューで聞く購入意向5段階評価はあてにならないし、それを数値化しても意味がない、というのは、誰もが習う調査の基本中の基本。 なのに、多いですよね、これをやっちゃう人。 目的がアイデアの最終評価であれば、確かに評価を数値化していくことは行いますが、グループインタビューでしても仕方がありません。
初対面の人に囲まれ、アイデアを作ったらしい人(参加者にとってはリサーチ会社のひともメーカーのひとも区別はつきません)に「買いたいと思いますか」と聞かれて「買いたくありません」とはなかなか言えません(前のブログ参照)。 他の人がどう答えるのかな、とちょっと横目で感じつつ、自分だけが外れないように、と、まわりの影響をかなり受けるのがグループインタビューです。 実際、買いたいと思っていなくても雰囲気と場のノリで「買うかも」ということはよくありますし、買わない、と思っている人は大体「わからない」と答えます。 定量調査で行った場合にはもっと「買わないだろう」という回答が増えます。
じゃあ調査方法はどうすればよかったのか?
もし目的が最終評価で製品化するかどうか、であれば、定量調査にしましょう。 繰り返しになりますが、いくらグループインタビューでたくさんの人に(たとえ定量調査と同じ人数であっても!)聞いたところで、あてにならず、これで判断を下すのは大きなリスクです。
アイデアのもとになるようなことを知りたい、理解を深めたい、もっと個人の行動を掘り下げて、その行動に隠された深層心理を知りたい、なんて時には個人インタビューが向いています。 どのように洗濯するのか、どんな気持ちで洗濯するのか、ひいてはどんな妻・母でありたいのか、どのように家事をしたいのか、といったインサイトは個人でじっくり時間をとらないとなかなか知りえません。 そんなこと他人がたくさんいるところで話したくないですからね。
もしも反応を聞いてよりよいアイデアにしていきたいのであれば、「買いたいかどうか」よりもむしろ「どうして買いたいのか、買いたくないのか」を知るために、普段のお洗濯のニーズや行動をじっくり丁寧に聞くことが必要でしょう。 この時に選択肢になる調査方法は個人インタビュー、もしくはちゃんと設計されたグループインタビューになると思います。
先述の通り、グループインタビューではほかの参加者の影響を大きく受けます。 その参加者同士のダイナミックスを利用して、個人では生まれないアイデアや意見を出すことができるのが最大の特長です。 お互いの意見を聞いて、「そうそう、そう言われてみれば…」とか、「私もそう思う!」「こんなこともあるかも!」といった感じです。
ですから、例えば未完成のアイデアを見てもらい、「これをどんなふうに使ったらいいと思いますか」と聞いてどんどん発想を膨らませてもらうと、その会話の中にアイデアをよくするヒントが入っていたりします。
そのためにも「盛り上がるメンバー」になるように参加者を選ばないといけません。 うまく会話をリードできる人が進行役を務めないといけません。
もし私がAAさんなら?
個人インタビューをしてインサイトを知り、アイデアを改良した上で、定量調査。
グループインタビューはしないと思います。
*******************
残念ながらAさんのように、あまり考えずに、何か調査をしなければ、じゃ、とりあえずグループインタビュー、というのをよく見ますが、どうしてなんでしょうね。 実施するのが簡単だからでしょうか。 「はい、リサーチはちゃんとやりましたよ」というアリバイ作り? でも、グループインタビュー、実はとても難しい調査です。
初対面の人たちの(そしてシャイで他人がどう思うかをやたらと気にする日本人の)グループの盛り上がりを作り、調査目的に合った結果を出す、というのは至難の業。 全員が黙ってしまうこともあれば、変に盛り上がりすぎて脱線したり、思ってもないことを雰囲気で言ったりすることもあります。 というか、初対面の他人の前で本当のことを言う、ほうが、むしろ珍しいことですよね。
私個人としてはここ数年、グループインタビューは数えるほどしかしていません。 難しさもそうですし、調査目的でどうしてもグルインでないと、というのは実際それほど多くはありません。
最近、消費者調査で有名なとある大手企業さんは、グループインタビュー原則禁止、個人インタビューや観察型の調査(これはまた後日お話します)にしている、なんて話も耳にします。
調査をしよう、じゃあグルイン、ではなく、まずは目的と知りたいことを明確にし、その目的に合った調査をぜひ設計していきたいものです。
それでもやっぱりグルイン!というときに、グループインタビューの成功のコツは
・ 調査から何が知りたいのかを、事前に詳細に確認しておくこと - 目的や知りたいことが明確でなければ掘り下げて理解ができません(これは定性調査全般に言えますが)。
・ グループインタビューの特長をどう活かすのか、グループで聞くことで逆に注意しないといけないことは何か、を確認しておく。
・ プロの経験豊かな進行役(モデレーター)にお願いすること - 場の作り方や、質問の流れはモデレーターにかかっています。
・ 同じグループに呼ぶ人はニーズやライフスタイルなど調査目的に合わせて共通点があること ― 話の盛り上がりは共通点から生まれます。
そして人数を数値化したり、やたらたくさんグループを設定したりしても意味がないことはどうかお忘れなく。
今日は目的に合った調査をしましょう、よく使われるグルインですが実はなかなか難しいんですよ、というお話でした。
K。
製品開発者Aさんのプロジェクトに最近インド人のBさんが加わりました。 とても優秀な技術者で、すっかりチームの中心的存在になっています。
さてある日、Aさんは自身の企画する洗濯用洗剤の新製品のコンセプトを消費者に見てもらい、感想を聞くインタビューを行いました。 チームメンバーも一緒です。
Aさん: 「これは新しく開発された洗剤の説明文なのですが、読んでどう思われるか、教えていただけますか。」
消費者C子さん: 「…(ちょっと考えて)いいと思います。 私の友達のD美さんはこれを欲しがると思います。」
Aさん: 「なるほど…。 どうしてそう思われますか。」
C子さん: 「D美さんはよくこんな汚れに困ってるって言ってましたから・・・。」
Aさん: 「C子さんご自身はどうですか。」
C子さん: 「……今はあまり困っていないんですけど、いいって誰かに聞いたら買うかも知れません。」
うーん、これは前にご紹介した、「よくないコンセプトへの反応」のパターンですね。 (詳しくは前の記事をみてください。)
終了後、このインタビューのまとめをチームでしました。 Aさんがこう切り出しました。
Aさん: 「あまりよい反応ではなかったですね。 C子さんにとってどうやらこの新製品はあまり必要ではなさそうですね。」
するとインド人技術者のBさんが、不思議そうな顔: 「いいと思います、って言ってましたよね。」
Aさん: 「いや、ああは言っていたけど、C子さんは自分が買いたいとは思ってないですよね。」
Bさん: 「え? D美さんは買うだろう、って言ってたし、C子さんも買うかもしれないって言ってましたよね。 これは売れるなと思いましたが。」
さて大変です。 日本人にはホンネとタテマエがあって…なんて、文化の話にまでなってしまいました。
結局、Bさんに同調する人も出て、チームの結論は先送りになりました。
Bさんは文化背景も違いますし、いわゆる行間を読むのは難しいことかもしれません。 でも行間の読みとりかたは同じ日本人同士であっても違いがあり、人によって全く異なった結論を持つこともあるのです。 これはインタビュー調査の難しさでもあります。
ではそんな理解のズレを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
まず、本当にこれはいいって思っている時にどういうかを知っていると、反応がよかったのかどうかわかります。
こんな質問をC子さんにしてみましょう。
私: 「C子さん、最近買ったもので、これはよかった!ってものありますか?」
C子さん: 「野菜の皮をむく手袋! これすごいんですよ・・・。 ごぼうとか手でこするだけでむけちゃうんですよ~。 とっても楽で手放せません。 それでね・・・・・。」
C子さんはちょっと興奮気味にその手袋がどのくらい役立つものか、説明してくれました。 話はなかなか尽きません。
誰でもそうだと思いますが、これはいい!と思ったものには強い理由や気持ち、感情が伴います。 そして、いいと思ったものについて話すときにはその気持ちが自然とでてくるものです。 その話し方をぜひ見てみてください。 それと同じ、とまではいかなくても同じような表情や話し方をしているでしょうか。
次にいつも使っているものと比べてもらう方法です。
私: 「C子さん、今お洗濯の時にはXXブランドをお使いとおっしゃっていましたよね。 この新製品とXXが売っていたらどちらを買うと思われますか?」
C子さん: 「・・・やっぱりXXかな。 使い慣れてるし、香りが好きなんです。」
(出ました、無敵の「香りが好き」、こちらの記事もどうぞ。)
もう一つ、実際に買ったとしたらいつどこでどう使い、どんな風に自分の生活はよくなると思うか聞く、というのもアリです。 どう使ってどんないいことがあると思うか、具体的にイメージされていたら「本当に買いたい」証拠です。
私: 「もしこの新製品を買われたとしたら、どんな風に使いますか?」
C子さん: 「いつもの洗剤の代わりに洗濯機に入れて普通に使います。」
私: 「この新製品に変えたら何かいいことはありそうですか?」
C子さん: 「うーん。 汚れは落ちるんでしょうけどね・・・。 今までと変わらないと思います。」
例えば服を買うときには、「あのシャツと合わせたらいいかな」とか「今度の旅行に着ていけるなあ」など、実際に着た時のイメージを持ちますよね。 本当に買いたいな、と思ったものは、無意識のうちに自分の生活の中に当てはめてみて、それでいいと思ったものであるはずです。 逆にそんなにピンと来ないものは、自分の生活に入るイメージができなかったり、できたとしても今と変わらなかったりするものです。 もしC子さんのお友達、D美さんが本当に欲しいと思う商品であれば、こんな感じで答えてくれたと思います。
D美さん: 「うちの息子、すごく靴下を汚してきて、真っ黒なんですよ。 今、つけ置きして洗ってるんですけど、やっぱり落ちなくて。 この新しい洗剤だとそれが落ちるのか、見てみたいです。 もし落ちたら絶対買います!」
今日はインタビューを聴く人が「買いたい」本音を聞き分ける、ちょっとしたヒントでした。
K。

