売れる売れないは出す前に
くだんのTVCMの続編ががんがん流れ始めたので(・・・)追記をあげるのではなく、実はTwitterでidouble kさんからコメントをいただきまして。 ひとつ前の、「だいまつみらう~す」の記事について「書かれている事は理解できるんだけど、何がダメか書いて欲しかった。」と。 加えて、idouble kさんは「正しくない商品名を言わせて、なかなか大胆なCMだなぁと、印象に残り、第3のエコカーを知ったので、特に不快ではなかったので。」とも。
まず、後半の意見ですが、それならば、まさに作り手の意図通りの反応ですので、関わった方々はよろこんでいると思います。 快・不快については、かなり個人的な感想ですので、私にはとっても不快だけれども、見る人によって、そうは思わない、ということで、とりあえず突っ込まないことにします。 誰がターゲットなのかさっぱりわからないので、何とも言えないのですが、主たるターゲットとなる人やその人に影響力を持っている人に強い不快感を抱かせていたとすると問題ですが、それもここではこれ以上の議論の材料はないですね。
「意図通り」については、まさに「自虐」の手法なんだと思いますが、idouble kさんが感じ、理解し、行動した通りの、自虐の手法のおもしろさにひかれて、答えである「第3のエコカー」の存在と意義にいきつく、という仕掛けなんでしょう。
私が前の記事で「マーケッターの仕事・クリエイティビティー」として採り上げた問題は、広告の表現手法の問題ではなく、広告を何度見ても、「そもそもこの車、何ができて何にいいのか、さっぱりわからない、いったい誰に買ってほしいのだろう?」ということです。
「いやいや、リッター30kmって言ってるじゃない」とおっしゃるかも知れません。
でも、それって単なる事実(機能やスペック)ですよね。 だから、何がどうしたの? です。 車が好き、あるいは、燃費を常に考えている人には、納得のいく事実なのかも知れませんが、多くの人にとっては、それが自分にとってどんな意味があるのか考えない限り意味のない数字です。
「第3のエコカー」にしても、なかなか粋な名前だと思いますが、それって何だろう? と考えたり調べたりしない限り、何のことかさっぱりです。 意味がわかると、へ~なるほど、なんですが、ちょっと難しすぎます。
ベネフィット、とか、便益とか言ったりしますが、この製品を買う可能性のある人にとって、どんないいことがあるのか、それが決定的に欠けていると思ったので、前の記事になった、というわけです。
電池+燃料車や電池車を買おうとしている、あるいは、だいぶ前に買って買い替えを考えている、おそらく燃費を数字で語られても実感できる人に、「冷静に比べてよ、こっちのほうが(安いし)燃費もいいよ」といいたいのか。
単に「燃費がいいので、維持費がかからずお得よ」というのであれば、すでに軽自動車の購入か買い替えを考えている人がターゲットですね。
車は動けばいいし、変な罪悪感なく安い車に乗りたい、という人なら、「ガソリン消費はそんじょそこらのエコカーに負けないし、安いよ」かも知れません。
あるいは、「エコカー」なんであれば、「地球の、将来のことを考えるなら」だったり、「こっちのほうが、実はエコだよ、賢い人はこっち選ぶよね」かも知れないし、「ちゃんとエコのこと考えてあえて軽自動車選んでる(かっこいい)人に見えますよ」ってのもあるかも知れません。
単純に、「エコを考えた時、3つ目の選択肢ができました」ってのも、考えられるかも。
(ちなみに、これらのことを、広告で「ちゃんと言葉で言っているか」ということを問題視しているわけではありません。 伝えようとしているか、ということです。 私がこの広告を見る限り、「ないよなぁ~」でした。)
こうした、ターゲットを決め、その人に合った「何がいいのか」を見つけるのが、マーケッターの仕事なんだけどなぁ、というのが、前回のぼやきだったわけです。
これを決めてあげれば、あれだけお金があるんですから、クリエーターたちがよってたかって楽しい広告を作ってくれます。
さてさて、この「それは事実か、ベネフィットか」というのは、実はかなり「解釈の問題」で、議論が分かれるところ。 行きすぎるとスカ食らいます。 実際に私も日々の仕事で、「どこらへんがちょうどいいベネフィットなのか」については、いつも悩んでます。 それを、「このへんだよな~」って決めるのは、結構どきどきする仕事。 でも、そこがマーケティングのおもしろさのひとつなんです。
お。
ここにきて急に見なくなりました? あの「だいまつみらう~す」のコマーシャル。 終わったんだとすれば、ほっとしますが。
予定の放映分が終わったのか、あるいは、あまりの苦情にストップしたのか。
(そんなわけはないか。)
でも、私はすごく嫌いです。 うるさいし、意味がよくわからないし、しかも、テレビをつけていると見ないでは済まされない量が流れてるし、まさにAnnoyingというやつで。
と、Twitterとfacebookでつぶやいたら、「どうしてああいうことになっちゃうんでしょう?」という質問をいただきました。
もちろん私は内実を全く知らないので、「企業の意気込み・気合いと、莫大な予算と、それに群がる広告業界がそろうと、よくああいうことが起こります」とだけ答えておきました。
壮大な気合いの空回り。
当たらずとも遠からずだと思いますが。
規模はあんなに大きくありませんが、私自身も似たような経験は多々あります。 売り手の気合いの空回り。 「あ~あ、やっちゃた・・・」って。
ターゲットの設定(または設定していないこと)から、製品・サービスが何をしてくれるものなのかの明確化、マーケティング上でのねらい、広告のアイディア、広告表現の手法、などなど、「あらあら」と思わざるを得ないことが盛りだくさんなんですが、それらをひとつひとつあげつらってみても仕方ないので、今日はその中からひとつだけ、マーケッターが、そのクリエイティビティーを発揮しなければならなかったのに、しなかった、できなかった、あるいは、してたのに経営陣などに無視された、ことについて少し考えてみましょう。
クリエイティビティー。 特に今、ジョブスさんの言葉や考えなどがあちこちで話題になっていて、彼の、いろいろな刺激や示唆に富んだ話を聞いていると、「あ~、でも、私は天才じゃぁないんでね・・・」とため息も出たりしますが、「そうか、そういうことでいいんだ」と勇気づけられることもあり。
マーケティングの一連の流れの中で、広告やデザイン、あるいは製品の開発などに携わる人にとってのクリエイティビティーというのは、見えたり聞こえたり、形があるものが多いので、イメージしやすいのかも知れませんが、マーケッターにとってのクリエイティビティーは少し見えづらいものがあります。
なので(か、どうかはわかりませんが)、すっ飛ばしてしまったり、忘れられてしまったり、さぼってしまったりするんじゃないでしょうか。
マーケッターがクリエイティビティーを発揮すべき場所、とは、戦略を立てること、です。
クリエイティブな戦略。
世にブルーオーシャンとか呼ばれているものは、その典型的なものでしょうね。
そこまでいかなくても、「へ~、なるほどねぇ、そういう風に考えたことはなかったけど、言われてみればその通りだよね」と、ターゲットの人たちが合点がいき、納得し、あるいは感動する戦略・コンセプト・考え方・見方を開発することこそが、マーケッターと呼ばれる、その人自身は何も生産しない、会社にとって無駄とも思われる人たちがすべき大切な仕事です。
言い換えれば、それにつながるインサイトを開発すること。
そのためには、ブランドやモノに関わるあらゆることを知っていなくてはならないでしょうが、中でも大切なもの。 それはターゲットのひとたちの生活や考え方・感じ方を熟知し、そこから「発見を紡ぎ出すこと」、変な日本語ですが、これがマーケッターの洞察力=想像力と創造力(いやん、ダジャレね)です。
「第3のエコカー=考えてみれば、電池なんか積んでなくたって、電池と燃料を積んでいる車と同じくらいの燃費を、ガソリンで達成してしまえば、それはちゃんとエコカーだよね」という発想は、それ自身、とてもクリエイティブな概念だと思います。 もしかすると、複雑な機械を満載している大きな車を作るために排出してしまう二酸化炭素の総量も含めて比較すると、少なくとも短期的には、電池と燃料、あるいは、電池だけの車たちよりエコかも知れない。
会社として、あるいは、技術者として、あるいは、社会的価値において、これは、とてもクリエイティブですよね。 そりゃあ、会社は盛り上がるわけですよ。 「私たち、すごいよね!」って。
しかし、マーケティングに関わる人は、そこで止まってしまってはいけない。
でないと、「よし、あとは、有名人使って、がんがん名前を連呼すれば、社会が買ってくれる」みたいなことになってしまうわけです。
誰に買ってもらわないといけないんだっけ? 国民? まさか・・・。
もっともっと限定された、でも、十分に大きなグループのはずです。
それが誰なのか、どんな人たちなのか、何を考え、感じて生活している人なのか、そこからどんな発見を紡ぎ出せるのか=どんなインサイトを作りだすことができるのか、そして、その人たちに「ほ~~~、そうか、そうだね」と言ってもらえる戦略・コンセプトは何なのか。
これをやっておけば、あとは周りの人たちがうまくやってくれます。
そんなことはわかってるよ、そうはいかないことがあるんだよ。 という関係者のつぶやきが聞こえてきそうですね。
きっと、このプロジェクトの、あまりの大きさ=会社の期待、の中で、例えば、よくわかってない重役がしゃしゃり出てきたり、あるいは、「もしかして、これはやっぱり『国民』が買ってくれるんじゃないの? ターゲットなんか限定したらだめだよ」というような下心が噴出したり、とか、その辺も全部ちゃんと作ってオリエンしたのに無視された、とか、いろいろあったんでしょう。 「だいまつみらう~す」以外の広告も、どれもひどいものばかりですもんね、「第3のエコカー」は。
あの会社、他の車種のコンセプトやデザイン、あるいは広告は、良くできているものが多いので、きっとちゃんとやればちゃんとできるはずですから、無関係な私がごちゃごちゃいうことではないですね、はい。
ただ、マーケティングに携わる人にとって、とてもいいレッスンだと思ったもので、つい。
失礼しました。
お。
「1本で部分洗いも兼用できる、スーパー洗剤」というアイデアを無事考え(前回のブログを見てください)、いよいよ本格的にコンセプトを作りこんでいきます。
Aさんはこの洗剤のターゲットを「ひどく汚れた洗濯物の多い、30代主婦」に決め、どんな時にこの洗剤が役立つのかを理解するため、もう一度ターゲットの訪問調査をすることにしました。
Aさんがなぜこのターゲットにしたかというと、スーパー洗剤の洗浄力が一番活躍する、ひどく汚れた洗濯物はやっぱり子供の泥汚れや食べこぼし。 そうなると30代主婦が一番このアイデアに響くはず。 ということなんだそうです。 果たしてうまくいくでしょうか。
今回の訪問調査はターゲットの主婦Mさんにお願いすることになりました。 事前にスーパー洗剤を使ってもらった上で、インタビューします。
Aさん: 「こんにちは、「一本で部分洗いも兼用できる、スーパー洗剤」使っていただいてありがとうございました。 いかがでしたか?」
Mさん: 「うーん・・・。 私はもう少し香りがいい方がいいかな。」
Aさん: 「えっ、あれっ? Mさんのお洗濯物、汚れが多いとお聞きしていたので、スーパー洗剤気に入ってもらえるかと思いましたが・・・。」
Mさん: 「そうそう、汚れね、息子の幼稚園の体操服とかね。 でもあんまり変わりないかな・・・。」
Aさん: 「(えっ!絶対こっちの方が汚れをよく落としているはずなのに・・・どうしてだろう???)Mさん、早速なんですが洗濯の様子、見せていただけますか?」
まずは話に出ていた幼稚園の体操服、確かに泥汚れや食べこぼしがシミになっています。 どうするのかな、とみていると、Mさんはささっと洗濯物すべて洗濯機に入れ、洗剤、柔軟剤を入れるとスイッチオン。 「終わりです。」
Aさん: 「あ、これだけですか?」
Mさん: 「え、普通こうじゃないんですか?」
Aさん: 「あ、そ、そうですよね・・・。」
なんだか前回のB子さん(前回参照)とはずいぶん違います。
さて夕方、もう一度乾いた洗濯物を取り込むMさんの様子を見にお邪魔したAさん。
やはりさっきの体操服は汚れが残ってしまっています。
Aさん: 「今日の仕上がりはいかがですか?」
Mさん: 「こんなものかな。 いつもと一緒です。」
Aさん: 「(体操服、気にならないのかな?)今日の仕上がりでもっとこうなったらいいな、ってこと、ありますか?」
Mさん: 「・・・特にないです。」
Aさん: 「(ないのか!)・・・体操服は汚れ、どうですか?」
Mさん: 「ああ、これですね。 しょうがないですよね。 落ちないと思うんです、これは。」
Aさん: 「・・・もしかしたらこれがもっと落ちるっていうことは・・・ないんでしょうかね?」
Mさん: 「えー、わからないです。 でも元には戻らないですよね。 洗濯機で洗ってもだめなんだから。」
話をするうちに、Mさんはどうやら「汚れを落とすこと」というよりは「洗濯機に入れて回すこと」が洗濯であり、それで落ちないものはしょうがない、と思っていることが分かってきました。 また前回のB子さんに比べて「汚れている・汚れを落とさなきゃ」という意識が少ないこともわかりました。
Aさん: 「使っていただいた、洗剤の話に戻るんですが、使っていただいて、洗浄力に違いは感じられましたか?」
Mさん: 「えー、ごめんなさい、わかりませんでした。」
Aさん: 「そうですか(やっぱり)。
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前回のB子さんも、今回のMさんも、同じ30代主婦、子供がいて汚れた洗濯物の多いご家庭です。 しかしどうやらこのターゲット設定だと随分と違った人が含まれてしまうことが、Aさんにもようやく分かってきたようです。
マーケティングの教科書には、必ずターゲットをきちんと決めましょう、と書いてあり、大抵のブランドや製品にはターゲットが設定されています。
しかし、よくあるのが、年齢や性別、職業、子供の有無、といった属性でターゲットを決めているケースです。
少し突っ込んで、XXで買い物をX回以上する、とかお洗濯を週X回以上する、といった行動、洗濯物が多い、とかシミがある、といった事実で設定されているケースもあります。 が、いずれもターゲット設定には不十分であることがあります。
今回のAさんのケースで見ていただいたように、まず属性でのターゲット設定は相当なマスブランドなどでない限りは難しいことが多いです。 同じ世代とはいえ、皆好みも生活もばらばら、ですよね。 働く女性、とかママとか、20代女性とか、「そんな区切りでひとくくりにしないで!」って本人たちは思っていると思います。
行動や事実・環境による区分ですが、属性よりは似た人が集まってきますが、今回のように「汚れた洗濯物が多い」というだけではなかなかくくれないこともお分かりいただけたかと思います。 大事なのは、その行動をする理由、事実や環境に対してどう思っているのか、です。
では何で設定するのがよいのか。 それは意識やニーズです。
例えばAさんのケースの場合。 「汚れた洗濯物をできるだけきれいに洗い上げたいと思っている人」というほうがターゲット設定としてはよいでしょう。 汚れていても気にしない人、はこの製品は欲しくありません。 汚れた洗濯物があるのを気にして、普段からちょっとした努力もしていて、でももう少しいい方法があるんじゃないかと思っている。 そんな意識を持っている人がターゲットであるべきなのです。
そうすると、別に30代である必要がありません。 20代でも40代、50代でも。 子供のひどい汚れでなくてもご主人のYシャツの襟について同じように思っているかもしれないし、他人から見たら「そんな汚れてないじゃない」って思うものでも本人はきちんとしたい、と思っているかもしれません。
この設定にすると、おそらく子供がいて汚れた洗濯物が多い人が結果的にたくさん入ってくると思います。 が、まずはこの意識を持った人、とすると、製品の便益の設定が作りやすくなってきます。
結局のところ、ターゲットを設定するのは消費者の行動に隠れた理由・インサイトを探る作業にほかならず、ですので、私たちの大好きな訪問調査もターゲット理解・設定の際に行うことが多いです。 インサイトを知ろうと思ったらターゲットの生活や普段考えていることなど全体が分からなくてはなりません。 逆に、全体がわかると、どんなものが欲しいのか、どんなことを求めているのか、細かい調査を繰り返さなくてもわかるようになってきます。
ではどのくらいまでターゲットを深く理解する必要があるのでしょうか。
ここで簡単なターゲット理解度チェックです。
「あなたのブランドの典型的なターゲット、Sさんを思い浮かべてください。
忙しい毎日のなか、思いがけず自分の時間が2時間できました。 さて、Sさんは何をして過ごすでしょうか?」
これが想像できない場合、ぜひターゲット理解をもう一度やってみてください。
でもどうすればいいの?
そんな場合はえとじやまでどうぞ。 って最近こればかりですが・・・。
K。
(GWのせい、とかもあったのですが)書くことがなくて困っていたわけではなく、どちらかとういうと、まだまだあれもこれも書きたい、と思うことが多くて、頭の中でまとまらなかったという感じです。 長く女性相手のマーケティングをやっていたので、書きたいことは山ほどあって。 でも、前回、次が最終回ですよ、と言いましたので、これで一旦しめますね。
最終回は「いいわけ」について書きます。 うまく、彼女がいいわけできるように助けてあげると買ってもらえる確率があがりますよ、というお話。
でも、いきなり結論とかHow-toとかに行く前に、少し寄り道しましょう。
よく恋愛などの心理(学)ネタとして語られることですが、一般に男性は一点豪華主義で女性は平均点主義ということが言われます。 (これが恋愛ネタだと、「だから男女はそこですれ違うのよ!」とか、「だからオンナを・オトコを磨くときに、磨く場所を間違えるのよねぇ。」という話になるわけですが、ここはあくまでマーケティングの話。)
男性は、自分が好きな・気にしている・こだわっているポイントが優れている(らしい)モノを好み、それ以外の部分に目が行かない、あまり気にしない、場合によっては、他ができない・良くないことをむしろポジティヴに考えてしまうことがあるくらいだと言われています。
一方、女性は、重要視するポイントを見ながらも、他の複数のポイントも評価し、できない・良くないポイントがない・少ないことをチェックし、平均して優れているものを好む傾向にあると言われています。
もちろん、あくまでも一般論だし、傾向の話ですが。
これを前回まででお話しした「センス(感覚)」と「マインド(頭)」と「ハート(心)」の話とくっつけてみます。 実はもちろん男性もセンスとマインドとハートを動かされたモノを買うのですが、それは「ひとつのポイント」についてのセンスとマインドとハートなのに対して、女性の場合、3つ(以上)の評価ポイントの平均的な良さを見る、ということにつながります。
以前あげた例で話をすると、かっこいいデザイン(センス)に食指が動いたとします。 男性の場合は、有名なデザイナーなのか(マインド)、そのデザインの狙いやストーリーは何なのか(マインド)、どのような工夫をして色を出しているのか(マインド)、それを使っている自分はどれほどかっこよく見られるか(ハート)、などの情報を欲しがります。
一方、女性は、かっこいいデザイン(センス)に食指が動くと、はたしてそれは見た目だけでなく十分な機能を持っているか(マインド)、価格はばかみたいな値段ではないか(マインド)、誰か有名人や雑誌などがおすすめしているか(マインド)、自分や他人の生活・気持ちにいい影響を与えるか(ハート)、などをチェックします。
つまり、女の子に、気持ちよくモノを買ってもらうためには、その心を動かす特徴(センスかハートかマインド)だけではなく、それ以外の2つのポイントに、他人に「どうしてそんなものを買ったの?」と聞かれても「平均的に損な買い物ではない」と説明できる「いいわけ」を与えてあげなけらばならない、ということです。
もうひとつ例を挙げましょう。
いわゆる「限定モノ」。 これは男女問わず無敵のいいわけですが。
女の子の場合、きっと、本当はかわいいから欲しかったんですね。 ちょっと値段が高いなど、自分にはいくぶん背伸びかな?と思っていたり、でも憧れていて、彼女の「センス」はものすごく欲しがっていたわけです。 でも、いいわけが必要。 「だって、これ限定モノなんだよ。」は、マインド的いいわけとして無敵なんですね。
男性の場合、「限定モノだってよ」だけでは終わりません。 シリアルナンバーが打ってある、とか、何年モデルの復刻版だとか、オークションでいくらで取引されているか、などなど、「限定モノ」の素晴らしさの一点豪華主義。
食べ物は「おいしそう!」(センス)だから欲しいと思うんですが、「たっぷり(レタスX個分の)繊維が入ってるし」(マインド)、「なんとなくお肌がきれいになるかも」(ハート)があるから「買っちゃってもいいよね」ということになる。
「きれいになりたい!」(ハート)から新しい化粧品が欲しいのですが、実は頭の中では、結局効かないかもしれないことはわかっていて、「なんでそんなの買ったの?」って言われたときのために、マインドに訴える情報、「最近話題のXYZ成分が入ってるらしい」とか「雑誌で賞をとっていた」とか「(少なくとも)くすみに効くって書いてある」とかが必要なわけです。 そのうえ、パッケージや広告がかわいい(センス)のも必須。 ようやく買っていただける。
(長くなるのでここでストップしますが、世の中で「差別化」と呼ばれている、マーケティングの世界ではあたかもそれが一番大事だと言われていることの多くは、実は「いいわけ」に過ぎないんですね。 例えば、古い記事ですが、こちらの記事をどうぞ。)
女の子に気持ちよくお金をはらってもらってモノを買ってもらおうと思うなら、彼女が好きなポイントだけが良くてもだめです。 平均点的に考えても、問題のない買い物であることがわかりやすいこと。 なおかつ、誰かに「どうしてそんなものを買ったの?」と聞かれても「だってXXXだから」ってちゃんと言える「いいわけ」を用意してあげましょう。
お。
とある洗剤メーカーで洗濯用洗剤を開発しているAさん。 今日は新しい製品のアイデアを見てもらおうと、主婦に集まってもらいグループインタビューをしました。 たくさんの人にインタビューしたいと思い、6名のグループを10組設定しました。
Aさん:「みなさん、こんにちは。 今日はお洗濯についてご意見をお聞きしたいと思います。 さて、早速ですけど、皆さんのおうちではどのようにお洗濯をされていますか?」
「毎朝1回まわしています。 洗剤は香りがあるのが好きです。」
「うちは家族が多いので2回します。 男の子がいるので、泥汚れがねぇ。」
「うちは共稼ぎなので、夜洗濯して部屋干ししています。」
Aさん:「そうですか。 では次に洗濯の際に工夫していることがあったら教えてもらえますか?」
「白物とそれ以外に分けてます。 色落ちしたら嫌なので。」
「汚れがひどいものは夜つけ置きして、朝洗濯機で洗います。」
「・・・私は特にないです。」「同じです。」・・・
Aさん:「ありがとうございました。 今日は新しい洗剤のアイデアを見てもらいたいと思っています。 『どんな頑固汚れもさっと落ちる、スーパー洗剤登場!』どうでしょう?」
「あ、それいいですね。 うちの子供の汚れ、すごいので。 野球しているので、体操服や靴下が真っ黒です。 本当に落ちるか、試してみたいです。」
Aさん「なるほど。 ほかの方はどうですか?」
「・・・うちはあまり汚れ物がないので、どうかな。」
「汚れが多いっていうお友達がいるのですが、その人は買うかもしれません。」
Aさん:「では皆さんの買いたい気持ちを5段階で表すとどれになるか、選んであてはまるものに挙手をお願いします。 では必ず買うだろう、と思う方?」(10名挙手)
「多分かうだろうと思う方?」(22名挙手)
「買うかどうかわからないと思う方?」(34名挙手)
10組すべてに同じ質問をした結果、20名が「必ず・多分買うだろう」と答えました。
まとめの際にAさんは「60名の主婦に調査したところ、33%の人が買うと答え、このアイデアは十分製品化できる可能性がある」とし、製品化を進めることにしました。
*********************
さて、このインタビュー、どう思われますか?
結論からいうと、やるだけ無駄。 このインタビューからは何もわからず、あるいはわかりきっていることが確認できただけ、次にとるべきアクションもわからずじまい、です。 でも、残念ながら似たような状況をよく見かけます。
いったい何がまずいのでしょう。
たくさん「NG」がありますが、中でもまずいのは、安易にグループインタビューを選んでいることだと思います。
まず、調査の目的がとても曖昧ですね。 アイデアの最終評価をしたいのか、それとも消費者の意見を聞いてアイデアを修正していきたいのか。 目的がはっきりしないので、とりあえずグループインタビューで聞いてみよう、的な。 せっかくのグループインタビューなのに、一問一答形式で、答えもみなバラバラ。 結果、「なぜ・どうして」を掘り下げることなく、個人の行動と表面的な反応しか聞けていませんし、グループインタビューなのに「33%の人が・・・」なんて結論まで出してしまっています。
グループインタビューで聞く購入意向5段階評価はあてにならないし、それを数値化しても意味がない、というのは、誰もが習う調査の基本中の基本。 なのに、多いですよね、これをやっちゃう人。 目的がアイデアの最終評価であれば、確かに評価を数値化していくことは行いますが、グループインタビューでしても仕方がありません。
初対面の人に囲まれ、アイデアを作ったらしい人(参加者にとってはリサーチ会社のひともメーカーのひとも区別はつきません)に「買いたいと思いますか」と聞かれて「買いたくありません」とはなかなか言えません(前のブログ参照)。 他の人がどう答えるのかな、とちょっと横目で感じつつ、自分だけが外れないように、と、まわりの影響をかなり受けるのがグループインタビューです。 実際、買いたいと思っていなくても雰囲気と場のノリで「買うかも」ということはよくありますし、買わない、と思っている人は大体「わからない」と答えます。 定量調査で行った場合にはもっと「買わないだろう」という回答が増えます。
じゃあ調査方法はどうすればよかったのか?
もし目的が最終評価で製品化するかどうか、であれば、定量調査にしましょう。 繰り返しになりますが、いくらグループインタビューでたくさんの人に(たとえ定量調査と同じ人数であっても!)聞いたところで、あてにならず、これで判断を下すのは大きなリスクです。
アイデアのもとになるようなことを知りたい、理解を深めたい、もっと個人の行動を掘り下げて、その行動に隠された深層心理を知りたい、なんて時には個人インタビューが向いています。 どのように洗濯するのか、どんな気持ちで洗濯するのか、ひいてはどんな妻・母でありたいのか、どのように家事をしたいのか、といったインサイトは個人でじっくり時間をとらないとなかなか知りえません。 そんなこと他人がたくさんいるところで話したくないですからね。
もしも反応を聞いてよりよいアイデアにしていきたいのであれば、「買いたいかどうか」よりもむしろ「どうして買いたいのか、買いたくないのか」を知るために、普段のお洗濯のニーズや行動をじっくり丁寧に聞くことが必要でしょう。 この時に選択肢になる調査方法は個人インタビュー、もしくはちゃんと設計されたグループインタビューになると思います。
先述の通り、グループインタビューではほかの参加者の影響を大きく受けます。 その参加者同士のダイナミックスを利用して、個人では生まれないアイデアや意見を出すことができるのが最大の特長です。 お互いの意見を聞いて、「そうそう、そう言われてみれば…」とか、「私もそう思う!」「こんなこともあるかも!」といった感じです。
ですから、例えば未完成のアイデアを見てもらい、「これをどんなふうに使ったらいいと思いますか」と聞いてどんどん発想を膨らませてもらうと、その会話の中にアイデアをよくするヒントが入っていたりします。
そのためにも「盛り上がるメンバー」になるように参加者を選ばないといけません。 うまく会話をリードできる人が進行役を務めないといけません。
もし私がAAさんなら?
個人インタビューをしてインサイトを知り、アイデアを改良した上で、定量調査。
グループインタビューはしないと思います。
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残念ながらAさんのように、あまり考えずに、何か調査をしなければ、じゃ、とりあえずグループインタビュー、というのをよく見ますが、どうしてなんでしょうね。 実施するのが簡単だからでしょうか。 「はい、リサーチはちゃんとやりましたよ」というアリバイ作り? でも、グループインタビュー、実はとても難しい調査です。
初対面の人たちの(そしてシャイで他人がどう思うかをやたらと気にする日本人の)グループの盛り上がりを作り、調査目的に合った結果を出す、というのは至難の業。 全員が黙ってしまうこともあれば、変に盛り上がりすぎて脱線したり、思ってもないことを雰囲気で言ったりすることもあります。 というか、初対面の他人の前で本当のことを言う、ほうが、むしろ珍しいことですよね。
私個人としてはここ数年、グループインタビューは数えるほどしかしていません。 難しさもそうですし、調査目的でどうしてもグルインでないと、というのは実際それほど多くはありません。
最近、消費者調査で有名なとある大手企業さんは、グループインタビュー原則禁止、個人インタビューや観察型の調査(これはまた後日お話します)にしている、なんて話も耳にします。
調査をしよう、じゃあグルイン、ではなく、まずは目的と知りたいことを明確にし、その目的に合った調査をぜひ設計していきたいものです。
それでもやっぱりグルイン!というときに、グループインタビューの成功のコツは
・ 調査から何が知りたいのかを、事前に詳細に確認しておくこと - 目的や知りたいことが明確でなければ掘り下げて理解ができません(これは定性調査全般に言えますが)。
・ グループインタビューの特長をどう活かすのか、グループで聞くことで逆に注意しないといけないことは何か、を確認しておく。
・ プロの経験豊かな進行役(モデレーター)にお願いすること - 場の作り方や、質問の流れはモデレーターにかかっています。
・ 同じグループに呼ぶ人はニーズやライフスタイルなど調査目的に合わせて共通点があること ― 話の盛り上がりは共通点から生まれます。
そして人数を数値化したり、やたらたくさんグループを設定したりしても意味がないことはどうかお忘れなく。
今日は目的に合った調査をしましょう、よく使われるグルインですが実はなかなか難しいんですよ、というお話でした。
K。

