えとじやブログ - ひねくれマーケッターのひとりごと

ひねくれマーケッターのひとりごと

売れる売れないは出す前に

ブランドを串刺しにするブランド

ちょっと歌の連呼がうっとうしい、とおっしゃる向きもあるようですが、私は好きです。 (単に水川あさみが好きだから、というだけの理由ではなく、マーケティングとして!)

そうです、あの「プラっズマっクラスターはシャープだけ(・の冷蔵庫)♪」シリーズです。 好きなんで、たくさん載っけちゃいます。

歌の連呼と、その放映量の多さが相まって、結構「脳内リピート再生」が止まらなくて気持ち悪い、というのもわかりますが。 パナソニックさんが、すべてのお金を3Dテレビにつぎ込んでいる間に、空気の「汚れ」が気になる梅雨~夏にかけて、しかもいわゆるボーナス月前後、シャープさんの気合いが伝わってきます。

広告の表現手法としては、これっぽっちも目新しいものはなく、むしろ古典的な手法の組み合わせばかりですが、そんなことは問題にならない、きっぱりとした、きっちりと考えて作られた戦略と、それを、どストレートに表現してはばからないのがいいですね。

 

ある技術・機能と、それに伴う利点をブランド化して複数のカテゴリの商品に搭載し、それを軸にマーケティングする。 複数の商品・ブランドを串刺しにするブランド、という手法です。

かつての「いんてるハイッテル」が、本家を食い尽くす寄生虫ブランドだったのに対し、こちらは自前のブランドなので、いんてるに持っていかれた「効果」が、自分ちにかえってくるので、安心です。

広告などマーケティング投資の効率化が叫ばれ続ける中、「複数の商品をいっぺんに売る」というのは、多くの会社にとって共通の課題です。 が、ほとんどの場合、店頭施策や短期的プロモーションでしかなく、しかもさらに悪いことに、ほとんどが「売り手の都合」がお客さんに見え見えで、どんびきです。 「社員でも株主でもないのに、なんであんたの会社の商品でまとめなきゃいけないのよ?」って。 自分勝手でひとりよがりなマーケティングですね。

では、何で「まとめる」のか? みなさん、ここで悩んでらっしゃる。 いろんなパターンがありえます。

そもそも、会社の名前をすべてのブランドにくっつけてあるので、もともと大丈夫、というパターン。 ひとつのカテゴリ(あるいは近いカテゴリ)に複数の商品を展開する場合は、かなり有効です。 KIRINがこのパターンですね。 一番搾りだろうが、淡麗だろうが、KIRINはKIRIN。 「何飲んでますか?」 「KIRIN。」
単なるプロモーションといえばそうですが、気合いの入れ具合でブランドかのように見せかける「エコカー減税、補助金も!」。 各社やるので、会社のブランド力と声の大きさ(メディア量)で勝負、という体育会系アプローチです。 そのうえ、あの会社は「Hybrid」という、串刺しブランドも持ってますから、手に負えない・・・・。

 

おっと、話をプラズマクラスターに戻しましょう。

空気をきれいにする独自の技術と利点を「ブランド」化して、関連する複数のカテゴリの商品に搭載、そのうえでそれぞれのマーケティングを展開する。 結果として、1+1=3みたいな効果が出るという仕掛けです。 それが、技術に立脚しているので、「おいおい、そんなの、誰だって言えるじゃん」ではないところがいいですね。

シャープさんは、ひとつの得意技術にフォーカスして複数の商品に波及効果をもたらす、ということにこだわっている会社のように思います。 だからこそできたことなんでしょう。 技術に基づいたもので、「思いつき」・「後付け」じゃないので、説得力があります。

 

実は、プラズマクラスター、以前から売ってたんですが、正直言って広告がいまいち過ぎました。 技術の自慢してるだけで、「で、私にとって何がいいの?」がさっぱりわからない広告ばかりで。

それが、今回のシリーズ、特に冷蔵庫以外のは、「誰が何のために・誰のために使っているか」がすごくはっきりしていて、ともかくわかりやすい。 実感レベルで納得できる感じです。 (冷蔵庫のは、まぁ、確かに「実感」しにくいですから、難しいんでしょうが、少し残念です。)

 

econaviパナソニックさんは、「追いつかれるまでの3カ月」にすべてをかけることにしたのか、3Dテレビに全力投球ですが、その少し前、「ECO NAVI」っていうのを展開していましたね。 使っている人が考えたり行動しなくても、家電がECOに勝手に導いてくれる(ので、あなたは何もしなくていい)、というのをブランド化して、トイレから冷蔵庫まで、あらゆる家電に搭載しました、というやつです。 車のHybrid的な発想です。

プラズマクラスターとも似てますね。 しかも、規模(とメディア量)は、こっちのほうが大きい。 相変わらず広告はさっぱりおもしろくないですが。 (パナソニックさんで、心に残っている広告なんて、ほとんどないですが。 ストーブのお詫び広告くらいかな。)

が、「それって、いまどきの家電ならどれでもそうじゃん」な印象はぬぐい切れません。 言ったもん勝ち? そうですね、そういう意味ではそれも立派な「マーケティング」ですね。 無理やりな感じはしませんし、「ブランドを串刺しにするブランド」としては、こちらも成功例だと思います。

 

いずれにせよ、「串刺しブランド」は、それが生活する上での便益に直結していて、あるいは、社会的な意味があって、串刺しにされたブランドに悪影響を与えない、あるいはブランド化が困難なカテゴリである。 そして、「全部買ってください」とか、「なんでそれとこれが一緒にされてるの?」とか、「そろえないと意味ないですよ」みたいな自分勝手な発想が無い、このあたりがミソですかね。 (担当者は「複数の商品をそろえて買ってくれるかも」とか妄想してそうですが、そんなことはありえませんよ!)

 

お。

ニオイが好きだから、についての考察。

Luxといっても、残念ながら男女の関係のお話ではありません。 拡大解釈してそう読むことを止めはしませんが、そういうつもりでも書いていません。

マーケティングのお話です。


サラリーマン生活21年間のうち、結局18年ほどはヘアケアの仕事に関わっていました。 その中でできあがった、なんとなくそうかもなぁ、という個人的な経験則なので、リサーチデータなどの裏付けは全くありません。


それは、「ニオイが好きだから」は「ニオイが好きだから」ではない、です。


長く高い売り上げを保っているヘアケアブランドのユーザーさんたちに、「使っている商品のどこが好きで使い続けているんですか?」という質問をすると、よく「そうですねぇ、ニオイが好きだから、です。」という答えが返ってきます。

これを聞いたまじめなマーケッターは(私もまじめだったころがあるんですよ、これでも)、

「そうか、香りが理由なんだな、ふむふむ。」

と考えます。 きまじめなマーケッターは、「そうか、あのブランドは香りで売っているわけではないので、ユーザーはそれほどあのブランドのことをしっかり理解していないのだな、ふむふむ、チャンスかも。」と考えます。

くそまじめなマーケッターは、「よし、じゃぁ、あのブランドより優れた香りを開発すればいいのじゃ、ふむふむ、行け~~~!」と、一大香り改良プロジェクトを立ち上げ、目隠しテストで勝利する香りを開発します。

あるいは、くっそまじめなマーケッターは「シャンプーを香りで選んでいませんか?」というボケたコンセプトを書き上げて消費者テストにかけたりしてしまいます。

しかし、(もちろん香りは大切なので、製品の評価は向上しますが)結果は、、、、

やはりみなさん、相変わらずあのブランドを使い続けます。

「おっかしいなぁ、うちの商品のほうがいい香りだってテスト結果があるのに。」ということで、もう一度調査に向かいます。

「どうしてその商品を使い続けるのですか?」

「そうですねぇ、ニオイが好きだから、です。」

「うちの商品を使わない理由を教えてください。」(最悪の質問です、ちなみに。)

「えぇ、、、ニオイとかかいでみないと、わかんないです。」

(さ、これです、どうぞ。)「どうですか?」

「いい香りですね。 でも、友達とか使った人の言うことを聞かないと、わかりません。」

おっしまい。


悲しい物語です。

彼女たちは、香りが好きで商品を選んでいるわけではないのですよ、要するに。
(香りが嫌いだったら、絶対使いませんがね。)


じゃぁ、なぜ彼女たちは「ニオイが好きだから」と答えるのか。

ここで、消費者調査というものを、調査される側から考えてみましょう。 (ちょっとお小遣いがもらえるとしても)なかなか緊張しますよね、学校のテストみたいなもんです。 マーケッターはテストされてるのは自分だと思っていますが、実は調査対象者も「テストされている」と思っているのです。

そこで、何か質問されると、あなたが学校で先生に当てられたのと同じで、「間違ったことをいいたくない」という心理が働きます。 正解を言いたい、ちゃんと思っていることを伝えたい、という気持ちは、実はあんまりないんですよ。 授業で意見を求められて「XXちゃんと同じです。」と答えるのと同じ。

「ニオイが好きだから」は、ほぼ無敵です、この意味では。 特定の機能について答えると、実は世の中にはもっといい商品があるだろうから、「じゃぁこっちの方がいいんじゃないですか?」とか問い詰められるといやだし。 どうしてですか? と聞かれても「だって、私の好みですから」と逃げれば追求を免れます。 押し売りから逃げるのに、もっともいい答えです。

では、彼女はホントは何を言っているのか。

実は、「ニオイが好き」=「なんとなく全部が好きだから」という意味なんだと、私は思い至ったわけです、数々の失敗の後、ね。

ヘアケアのお客さんが「ニオイが好きだから」と答えてくれるのは、心の中では「結構、全体的に気に入ってて、どこがどうとか、あんまり考えてないからちゃんといえないんだけど、好きなんですよね~。」って思っているからなんですよ。


もちろん、世の中には、香りを訴求した商品もあるので、すべてにあてはまるわけではないし、香りはとても大切な要素なので、重要でないと言っているわけでもありません。

ただ、「ニオイが好き」というコメントにそのまま反応してしまっても意味がない、ということです。

香りが主要な選択基準になっているカテゴリーですら、これは私のさらに個人的な意見ですが、香りは「売り」にすべきではありません、ほぼ絶対。 あとで痛い目に遭います。 まぁ、この話は長くなるので、また今度。 (ヒントはこちらの記事をどうぞ。)


ヘアケア以外のカテゴリーでも、この「ニオイが好き」に相当するモノがあるんでしょうね。

きまじめに追求するとスカを食らう、でも大切な何かを伝えているモノが。

うちの商品ではこんなことあるよ、とかあったら、是非、教えてください。


「私のどこが好き?」

「全部。」

とかいう、間抜けな男女のやりとりの話ではありませんよ、くどいようですが。


お。

食べ物はおいしそうだから買う、あたりまえのことだと思うんですが。

SOYJOY私はあまり間食をしないし、サラリーマン時代もほとんど残業をしなかったので、ちょっとしたエネルギー補給にサプリ系の食べ物を食べる、という習慣がありません。 幸いにして(今のところ)体重に気を遣う必要もないので、食べ物に対するカロリー意識は全く高くありません。
なので、「なぜSOYJOYが売れるのか」について、とやかく言える筋合いではないのかもしれませんが、それでも、見ているだけで「あれは売れるよねぇ」と思うので、今日はそのお話し。

結論から言ってしまうと、「人は食べ物を買う時、おいしそうだから買う」という、あたりまえのことをちゃんとやっているブランドだから、だと思います。

少 しおなかがすいた時のエネルギー補給の食べ物、ちょっとコンビニに行って見回してみると、(個人的に興味・関心が薄いから余計に)その数・種類の多さに びっくりします。 そしてその多く、いや、すべてが、いかにカロリーが低いか、太らないか(太りにくそうか)、余分なものを摂らずにすむか、ビタミンや繊維などがたっぷり摂れるか、などの機能を全面にうたっています。 そういや、機能食品とかいうんですよね、ああいうの。
その中で、ひときわ輝いているのがSOYJOYです。
もちろん、売れているから棚での扱いが大きい、というのはありますが、それを差し引いても目を惹きつけます。
それは、おいしそうだからです。

太らない、健康に対する悪影響を最小限に抑える・健康にいいものを摂取するための食べ物ですから、みなさん、いかに機能的に優れているかを一生懸命訴えます。
差別化ですね。
マーケティングの世界では、この差別化というのがとっても大切だと、こっぴどく教わります。 「私はここが(他のひとと)違うから、優れているので、(他のひとではなく)私を選んでください」、ということです、簡単に言うと。
法的な規制などもあり、直接「ここが、これくらい優れている」とは言えないことが多いので、そうなると、今度は原材料の優位さや、優位だというイメージを利用したり、レモン何個分とか、グリーンピース何千粒分だとか言います。 あるいは、健康に詳しそうだったり、こだわってそうな有名人や専門家や団体などが 推奨しているかのようなイメージを付けたりします。

ところが、この「差別化」に躍起になるあまり、大切なことを忘れてしまうんですね。
差別化って、結局は買う時の言い訳であって、買う理由ではないんですよ、多くの場合。
食べ物はおいしそうだから買うんです。
SOYJOY は、そのパッケージデザインがとってもとっても良くできているから、みんな買うんです。 味のベースになっている材料のおいしそうな写真、そして中味を ちゃんと見せていて、それもなかなかこんがりおいしそうです。 味の違いを区別するための色もうまく選択されています。 たいしたことないデザインに見えますが、とてもきちんと作ってあります。
もちろん、大豆がベースだとか、なんとなく「身体にいい」と認識されているフルーツなどを使っていて、機能食品の「言い訳」もちゃんと用意しています。
店頭勝負のマーケティングのとてもいい成功例だと思います。

(最近CMをがらっと変えましたが)はっ きりいって、あんなに大物タレントを多数起用したTVコマーシャルなんていらないと思いますよ。 (最初のころの、みのMたのCMよりは、ずっといいですが。) 知名度・認知率を上げるのに、間違いなく役立ってはいますが、あ そこまでお金を湯水のように使わなくても、、、。 まぁ、大きな会社だし、売れてるんだから、あれくらいの無駄遣いは痛くもかゆくもないんでしょうね。 少なくとも大手代理店さんとTV局とタレントさんは、喜んでいることでしょう。

食べ物・飲み物はおいしそうだから買う。
化粧品はきれいになりそうだから買う。
洗剤は汚れが落ちそうだから買う。
そういうことだと思いますよ。
差別化の迷路に入ってしまって見落としてません?

お。
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プロフィール
お。"

えとじや店主 お。
  岡本 晋介

* 世の中の様々な問題を「ブランド・マーケティング」で解決する、腕利きコンサルタント、になるのが夢です
* それに向けて、現在、鋭意努力中

* 1988年、大手外資メーカーのマーケティング部に入社、以来21年、ブランド・マーケティング一筋でした
* 7年間、いくつかの商品(ブランド)を担当、コンセプト開発、新製品導入から広告制作、マーケティングプラン・投資の決定、消費者リサーチと、あらゆるマーケティング仕事に携わりました
* その後14年間、マーケティングの社内コンサルタントに「社内転職」、2~3人しかいない部署でしたので、一度に10以上のブランドの担当を務めました
* 関わった「子供たち」は、かなり多数ですが、主なものとしては、アリエール、パンテーン、イリューム、Vidal Sassoon、SK-II、ボールド、レノア、ジョイ、Max Factorなどその他多数(どこの会社か、ばれてますね、これじゃぁ、、、)、「子だくさん」です
* 各ブランドのコミュニケーション戦略・企画のアドバイスをしながら、マーケティングや関連部署、担当代理店などの人材育成・教育・指導にもあたっていました

* 2009年夏に退社。
* マーケティングなんでも相談所「株式会社えとじや」設立。
* コンサルのかたわら、マーケティング関連のセミナー・研修などの講師をやってます
* そうそう、性別は男性、年齢は40代前半、です

* 「ブランド・マーケティングで世の中の問題を解決する」って?
* 実はブランド・マーケティングとは、有償・無償を問わず、お客さんを相手にコミュニケーションをとらないといけないすべての業種に適応できる考え方
* でも、世間では「大手の企業が金をかけてやるもの」と誤解されてしまっているのが、悲しい
* 「へぇ~、こんなこともブランド・マーケティングで解決できるんだぁ、ありがとう!」って言ってもらうのが夢です

* 趣味ですか?
* スノーボードを14年やってます。 最近5年ほどは、ニセコを中心に年間20~30日雪山で過ごしながら、ときどき軽いバックカントリーを楽しんでます
* 音楽、ロックやらブルースやら、を聴くのは大好き
* あとは、陶芸・料理・草刈り・薪割り・読書、たま~~に自転車、ですかね
* どんな人柄?
* 難しい質問ですねぇ。 自分ではよくわかりませんが、人にはよく「ひねくれもの」・「物知り」・「説教好き」と言われます。 サラリーマン時代から「サラリーマンに見えない」と言われてました、まぁ、社会人としての常識に欠けるという意味なんでしょうね、、、

twitter : etojiyaokamoto
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