なんでも聞けばいいってわけじゃない
皆さん、調査、やってはみたけれども役に立たなかった、という経験はありませんか?
実はこれ、残念ながら大変よく耳にする話で、会社によっては「調査なんて当てにならん! するな!」というところも少なくないようです。
よくあるパターンはいくつかあるのですが、これまで定性調査については書く機会がありましたので、今回から「役に立たない定量調査」と題し、
① 製品・コンセプト開発調査
② 市場実態把握のための調査(CS、定点、習慣など)
③ 代理店・調査会社おまかせの調査
について、例を挙げていきたいと思います。
今日は①から、久々登場の洗剤開発Aさんにがんばって紹介してもらいましょう。
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洗濯用洗剤を開発しているAさん、相変わらず「一本で部分洗いも兼用できるスーパー洗剤 X」を担当しています。 (Aさんの「物語」は、私の過去記事をさかのぼってください。 冒頭の似顔絵アイコンをクリックすると記事が出ます。)
コンセプトがある程度固まったので、今はパッケージデザインに従事しています。 デザインを決めないといけない時期がどんどん押し迫り、焦るAさん。 2通りのデザインの方向性を考えてみました。

デザインの方向性は来週中に決めないといけません。 そこでAさんはインターネットで調査をして、どちらがよいか、調べることにしました。
調査デザインは至ってシンプル。 100人の主婦にPとQを見てもらい、それぞれ使用意向、デザインが好きかどうか、商品イメージについての設問を尋ねました。
結果は次の通り。

これを見たAさん、それぞれ良し悪しがあるので悩みましたが、最終的には使用意向が高いPの方向に進もうと、結果をもって部長の所に報告に行きました。
Aさん: 「結果がでました。 使用意向が高いし、汚れ落ちのイメージのよいPに進もうと思います。」
部長: 「うーん、使用意向が高いと言っても大してかわらないなあ。 それよりは好きだという人がQの方が多いぞ。 最近は洗剤もかわいらしいパッケージのものが流行っているし、ピンクの方がいいんじゃないか?」
Aさん: 「なるほど、そうですね・・・。 確かにピンクのパッケージはかわいいというコメントが多かったので気にはなっていたんです・・・。 PとQのいいとこどりをしたらいいですね、きっと。 やってみます!」
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この後Aさんのパッケージはどうなるでしょうか? ・・・恐らく失敗作になります。
これ、実は本当によく見るパターンです。この調査の問題点をまとめます。
どういう結果が出たら、どちらの方向にするのか、結果を読む際の判断基準が明確でない。
Aさんは結果が出てから総合的に見て判断したら良い、と思っていたようです。 最終的には使用意向と汚れ落ちについての評価を判断基準に選びましたが、これは事前に決めておくべきものです。 新しいパッケージデザインが何を目的としているのか、それを達成しうるものなのか、それが評価の判断基準となります。
消費財の場合では、新しいものがより売れるためにデザインを作るわけですから使用もしくは購入意向はまず必ず確認するべきですし、もし、よく落ちる、というブランドイメージを強化したいならそれも基準になるはずです。
この場合の基準は次の通りです。 これは調査の企画・設計書に明記されているべきでしょう。
―使用意向が高いこと。 かつ汚れ落ちがよいというイメージを与えていること。
―その他は参照データとするが、改善ポイントを理解する助けとする。
ただし、この調査の場合、PとQで比較していますが、PもQもよくない、ということもあります。 その場合は、参考になりそうな既存品や競合品をベンチマークとして入れる必要があり、それも評価基準にはいる必要があります。
判断基準が社内で事前に共有されていない。
判断基準が事前に設定されていたとしても、それが主要関係者に共有されていないとややこしいことになります。
この例での部長さんの言葉に現れているように、データの受け取り方は人それぞれです。 10人中10人が「これだ!」と気持ちよく同意できるデータが出ればよいですが、実際にはなかなかそうはいきません。 後になって意見が割れたり、「ピンクの方がいいんじゃないか」といった"個人的な感想"が入ってくると、収拾がつきません。
それぞれの案について、どの部分が強いのか、また弱いのかという仮説がなく、調査結果から想像するしかない。
PとQのいいとこどり・・・これこそよくあるパターンです。 確かによさそうなのですが、まずPとQの何がどうしてよかったのか、また、無くしてはいけないポイントが何なのかを本当に理解できているのでしょうか。 今回は急ぐあまりに定性理解が欠けており、各デザインの"評価"しかありません。いいとこどり、はあくまでAさんが考えるいいところ、であり、それが本当によいのかは実はわかりません。
もう一つ、特にデザインについては、いいとこどりは非常に難しいです。 Aさんのケースですと、ピンクの背景に、「一本でもしっかり落ちる」という売り文句をかわいらしく書く、というようになりがちです。 が、実は青い色や力強い字体が洗浄力のイメージを強化していたりするのです。 結果、いいとこどりのはずが、元の良さが全くなくなってしまうことも少なくありません。
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製品・コンセプト開発における定量調査は、何のためにするのでしょうか。
多くはアイデアや製品の絞り込み、もしくは発売するのに十分かどうか、という評価・判断です。 その判断が明確に、速やかにできるよう、調査は設計されているべきです。 また、結果がよくとも悪くとも、なぜそのような結果になったのか、推測ではなく根拠を持って説明ができるべきです。 そうすると、調査を急いでやったのに、社内議論の方が長引いた、テストではいい結果だと思ったのに売れなかった、(やっぱり調査は役に立たない)ということが避けられるように思います。
ついで、ですが、よくメーカーの担当者さんが分析や社内プレゼン用に必要なデータをかなり時間かけて自ら加工されている姿を目にします。 仮説を作りながら試行錯誤していたり、時間がギリギリだったりと結局大変なのですよね。
仮説と判断基準、判断に必要な分析プランが事前に設定できれば、予め必要最低限のデータ集計を調査会社さんに用意してもらうこともできるはず。
定量調査に振り回されることなく、正しいビジネス判断をするためのツールとして使いこなしてくださいね!
K。
(えとじやは、とっても訪問調査が好きなんです。 加えて、先日のP&Gが取り上げられていたTV番組以来、何かと質問も多く、その中で「ホントにわざわざ消費者の家に行くんですか? それで何がわかるんですか? あれTV用ですよね?」といったお問い合わせも多いので、今回はK。に、どうして訪問調査がそんなに楽しいのか、ちょっと解説してもらいます。 お。)
今日もまた、洗濯用洗剤を担当するAさんのお話しです。 Aさんは相変わらず「汚れのよく落ちるスーパー洗剤」を何とかいいコンセプトにしようと頑張っています。
以前、主婦B子さんにインタビューをして、コンセプトを見せたときのやりとりです。
Aさん: 「汚れのよく落ちる、スーパー洗剤、どう思います?」
B子さん: 「・・・買うかどうかわかりません。」
Aさん: 「どうしてそう思われますか?」
B子さん: 「今使っている洗剤でも十分汚れは落ちていると思うので。」
Aさん: 「そうですか・・・。 汚れにはどんなものがありますか?」
B子さん: 「子供の泥汚れや食べ物の汚れ、ですね。」
Aさん: 「そういう汚れって、落ちにくくないですか?」
B子さん: 「うーん、そうですね・・・。 でも落ちてるかな。」
Aさん: 「スーパー洗剤は他の洗剤よりもっと落ちるんですけど?」
B子さん: 「・・・今のは使い慣れているし、十分落ちてるからどちらでもいいんですが・・・。」
だんだん押しつけがましくなってきたAさん、本当に汚れが多いならどうしてスーパー洗剤がいいと思わないのか、納得のいかない様子。
B子さんにしてみれば、「この人何回言ったらわかってくれるんだろう、しつこいなあ。」
2人はすれ違います。
Aさん: 「お洗濯は今どのようにされているんですか?」
B子さん: 「えっ、ふつうです。 特別なことは何も・・・。」
B子さんは洗濯物の汚れが多い主婦、という、Aさんが想定していたスーパー洗剤のターゲットです。なのにこんなにつれない返事とは。 Aさんがしつこくなるのも理解できます。
Aさんは実際のところがどうか確かめたくなり、B子さんにお願いしてご自宅を訪問し、洗濯物や洗濯の様子をみせてもらうことにしました。
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まずおうちに入ってびっくり。 家中とてもシンプルできれいに片付いています。 お子さんがいるようには見えません。 でもお子さんが描いた絵や写真が至る所に飾ってあることから家族の仲の良さが感じられます。
A: 「素敵なお宅ですね!」
B: 「そうですか? なかなかうまく片づけられなくて・・・。」
A: 「全然! ものすごくきれいですよ。 じゃあ早速なんですけど、お洗濯、見せていただけますか?」
B: 「はい。 まずは洗濯物を洗濯機の中に入れて・・・。」
A: 「ちょっと待ってください! 今、洗濯物を仕分けてらっしゃいますがどうしてですか?」
B: 「ああ、白物や特に汚れてないものから洗うんです。」
A: 「どうしてですか?」
B: 「キレイなのが汚いのとまざるのが嫌なので。 あと、白物にはタオルが多いので、柔軟剤を入れます。」
A: 「なるほど~。」
B: 「で、まわします。 その間に、少し汚れているものには部分洗いしておきます。 主人のYシャツの襟とか、ですね。 で、置いておきます。」
A: 「なるほどー。 この前おっしゃっていたお子さんの汚れ物ってのが出てきてないですが?」
B: 「ああ、それはここです(と、お風呂の洗面器を見せて)。 これは体操服なんですけど、泥汚れがひどかったので昨夜から漂白剤で漬け置きしてました。」
A: 「本当だ。 汚れはすっかり落ちてますね。」
B: 「そうなんです。 手間かけたら割とどれもそこそこ落ちますよね。」
A: 「なるほど・・・。・・・スーパー洗剤、どう思われますか?」
B: 「・・・洗剤は、どれも同じだと思うんです。 結局汚れを落としているのは部分洗い用や漂白剤なので。 洗剤は汗とか軽い汚れを落としてくれたらいいです。」
A: 「そうなんですね・・・。 じゃあ何かお困りのことはありますか?」
B: 「うーん、もう少し手軽にきれいになったら嬉しいかな。 やっぱりいろいろと使わないといけないし、ずいぶんと手間ひまかかっているなぁとは思っているので。」
このインタビューをふまえて、Aさんは「1本で部分洗いも兼用できる、スーパー洗剤」というコンセプトを考えました。
さらに、楽に汚れが落ちてすごいでしょ、ではなく、(そんなことを言ってもB子さんはきっと信じてはくれないので)B子さんのように毎日頑張っている主婦が少しでも楽になるように、という気持ちを込めたいな、と思いました。
もう一つ、B子さんのおうちに合うような、シンプルで清潔感のあるパッケージデザインにしたいなぁとも思いました。
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さて、今回は訪問調査のススメ、です。
訪問調査とは文字通り、消費者のお宅に伺い、インタビューしながらいろんなものや行動を見せてもらう(観察する)ものです。
インタビュールームでインタビューするのに比べ、ご自宅で実際洗濯しながら話を聞くことで、Aさんは何が分かったでしょうか。
・B子さんは汚れにそんなに困ってないのではないか→
やはり、汚れはあって、それをしっかりと落とす努力をしていた(実際の問題のレベル)
・洗濯の仕方は「ふつう」にやっている→
かなりの手間ひまをかけて工夫してやっている(言動 vs. 実際の行動)
・今の洗剤で十分汚れは落ちている→
汚れを落とすのは部分洗いや漂白剤で、洗剤はどれも同じだと思っている(より深い洗剤に対する態度)
・すごく家族のことを考えているお母さん(母としての人物像)
・大変な手間をかけて毎日洗濯をしている(主婦の実態の理解と、それに対する共感)
・シンプルな片付いた家で、インテリアの好みもベージュ系で落ち着いている(生活やデザインに対する好み)
実は3時間の観察・インタビューで分かったことはもっともっとあったのですが、ここに挙げたものでも十分Aさんには新発見だったようです。
皆さんは実家や親せき、友人宅以外のおうちに行ったことはありますでしょうか。
自分の周りの人は良くも悪くも「似通った」人の集まりです。 ですので、自分と周りの常識をつい「ふつう」と考えてしまいがちです。
しかし実際には100人いたら100通りの暮らしと住まいがあり、それぞれの「ふつう」の暮らしをしています。 それを口で説明してもらってもなかなかわからず時には疑問や謎が増えるだけ。実際に見る方が正しく理解できます。
また自宅は一番自然な姿が分かる場所。 女性として、主婦として、母として、妻として。 その価値観も垣間見ることができます。 インタビュールームではわからないことですよね。
百聞は一見に如かず、です。
特にモノづくりをされている皆さん、なにはともあれ、ぜひ一度ユーザーさんのお宅に行ってみてください。 まず、自分の関わったものが生活に入り込んでいるのを見るのは感動します。 そして、自分が今まで「ふつう」と思っていたこととのズレに驚かされます。 机の上で、ビルの中で、あれこれと考えるよりずっとヒントが得られます。
ところでえとじやは訪問調査が大好きで、行くとすぐ「楽しい、楽しい」とつぶやいてしまうのですが、それはなぜかと考えてみると
・どこの家にもドラマがある
・何軒行っても、なお常に新発見がある
・実際に使っている人と一緒に考えたり感じたりできる
ということでしょうか。
ホントにそんなにいいの?
どうもよくわからない、どんな時にいったらいいんだろう、どうしたら実施できるのか?
そんな疑問をお持ちの方はえとじやまでご連絡くださいね。
なんせ大好きなので喜んでお手伝いいたします!
K。
とある洗剤メーカーで洗濯用洗剤を開発しているAさん。 今日は新しい製品のアイデアを見てもらおうと、主婦に集まってもらいグループインタビューをしました。 たくさんの人にインタビューしたいと思い、6名のグループを10組設定しました。
Aさん:「みなさん、こんにちは。 今日はお洗濯についてご意見をお聞きしたいと思います。 さて、早速ですけど、皆さんのおうちではどのようにお洗濯をされていますか?」
「毎朝1回まわしています。 洗剤は香りがあるのが好きです。」
「うちは家族が多いので2回します。 男の子がいるので、泥汚れがねぇ。」
「うちは共稼ぎなので、夜洗濯して部屋干ししています。」
Aさん:「そうですか。 では次に洗濯の際に工夫していることがあったら教えてもらえますか?」
「白物とそれ以外に分けてます。 色落ちしたら嫌なので。」
「汚れがひどいものは夜つけ置きして、朝洗濯機で洗います。」
「・・・私は特にないです。」「同じです。」・・・
Aさん:「ありがとうございました。 今日は新しい洗剤のアイデアを見てもらいたいと思っています。 『どんな頑固汚れもさっと落ちる、スーパー洗剤登場!』どうでしょう?」
「あ、それいいですね。 うちの子供の汚れ、すごいので。 野球しているので、体操服や靴下が真っ黒です。 本当に落ちるか、試してみたいです。」
Aさん「なるほど。 ほかの方はどうですか?」
「・・・うちはあまり汚れ物がないので、どうかな。」
「汚れが多いっていうお友達がいるのですが、その人は買うかもしれません。」
Aさん:「では皆さんの買いたい気持ちを5段階で表すとどれになるか、選んであてはまるものに挙手をお願いします。 では必ず買うだろう、と思う方?」(10名挙手)
「多分かうだろうと思う方?」(22名挙手)
「買うかどうかわからないと思う方?」(34名挙手)
10組すべてに同じ質問をした結果、20名が「必ず・多分買うだろう」と答えました。
まとめの際にAさんは「60名の主婦に調査したところ、33%の人が買うと答え、このアイデアは十分製品化できる可能性がある」とし、製品化を進めることにしました。
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さて、このインタビュー、どう思われますか?
結論からいうと、やるだけ無駄。 このインタビューからは何もわからず、あるいはわかりきっていることが確認できただけ、次にとるべきアクションもわからずじまい、です。 でも、残念ながら似たような状況をよく見かけます。
いったい何がまずいのでしょう。
たくさん「NG」がありますが、中でもまずいのは、安易にグループインタビューを選んでいることだと思います。
まず、調査の目的がとても曖昧ですね。 アイデアの最終評価をしたいのか、それとも消費者の意見を聞いてアイデアを修正していきたいのか。 目的がはっきりしないので、とりあえずグループインタビューで聞いてみよう、的な。 せっかくのグループインタビューなのに、一問一答形式で、答えもみなバラバラ。 結果、「なぜ・どうして」を掘り下げることなく、個人の行動と表面的な反応しか聞けていませんし、グループインタビューなのに「33%の人が・・・」なんて結論まで出してしまっています。
グループインタビューで聞く購入意向5段階評価はあてにならないし、それを数値化しても意味がない、というのは、誰もが習う調査の基本中の基本。 なのに、多いですよね、これをやっちゃう人。 目的がアイデアの最終評価であれば、確かに評価を数値化していくことは行いますが、グループインタビューでしても仕方がありません。
初対面の人に囲まれ、アイデアを作ったらしい人(参加者にとってはリサーチ会社のひともメーカーのひとも区別はつきません)に「買いたいと思いますか」と聞かれて「買いたくありません」とはなかなか言えません(前のブログ参照)。 他の人がどう答えるのかな、とちょっと横目で感じつつ、自分だけが外れないように、と、まわりの影響をかなり受けるのがグループインタビューです。 実際、買いたいと思っていなくても雰囲気と場のノリで「買うかも」ということはよくありますし、買わない、と思っている人は大体「わからない」と答えます。 定量調査で行った場合にはもっと「買わないだろう」という回答が増えます。
じゃあ調査方法はどうすればよかったのか?
もし目的が最終評価で製品化するかどうか、であれば、定量調査にしましょう。 繰り返しになりますが、いくらグループインタビューでたくさんの人に(たとえ定量調査と同じ人数であっても!)聞いたところで、あてにならず、これで判断を下すのは大きなリスクです。
アイデアのもとになるようなことを知りたい、理解を深めたい、もっと個人の行動を掘り下げて、その行動に隠された深層心理を知りたい、なんて時には個人インタビューが向いています。 どのように洗濯するのか、どんな気持ちで洗濯するのか、ひいてはどんな妻・母でありたいのか、どのように家事をしたいのか、といったインサイトは個人でじっくり時間をとらないとなかなか知りえません。 そんなこと他人がたくさんいるところで話したくないですからね。
もしも反応を聞いてよりよいアイデアにしていきたいのであれば、「買いたいかどうか」よりもむしろ「どうして買いたいのか、買いたくないのか」を知るために、普段のお洗濯のニーズや行動をじっくり丁寧に聞くことが必要でしょう。 この時に選択肢になる調査方法は個人インタビュー、もしくはちゃんと設計されたグループインタビューになると思います。
先述の通り、グループインタビューではほかの参加者の影響を大きく受けます。 その参加者同士のダイナミックスを利用して、個人では生まれないアイデアや意見を出すことができるのが最大の特長です。 お互いの意見を聞いて、「そうそう、そう言われてみれば…」とか、「私もそう思う!」「こんなこともあるかも!」といった感じです。
ですから、例えば未完成のアイデアを見てもらい、「これをどんなふうに使ったらいいと思いますか」と聞いてどんどん発想を膨らませてもらうと、その会話の中にアイデアをよくするヒントが入っていたりします。
そのためにも「盛り上がるメンバー」になるように参加者を選ばないといけません。 うまく会話をリードできる人が進行役を務めないといけません。
もし私がAAさんなら?
個人インタビューをしてインサイトを知り、アイデアを改良した上で、定量調査。
グループインタビューはしないと思います。
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残念ながらAさんのように、あまり考えずに、何か調査をしなければ、じゃ、とりあえずグループインタビュー、というのをよく見ますが、どうしてなんでしょうね。 実施するのが簡単だからでしょうか。 「はい、リサーチはちゃんとやりましたよ」というアリバイ作り? でも、グループインタビュー、実はとても難しい調査です。
初対面の人たちの(そしてシャイで他人がどう思うかをやたらと気にする日本人の)グループの盛り上がりを作り、調査目的に合った結果を出す、というのは至難の業。 全員が黙ってしまうこともあれば、変に盛り上がりすぎて脱線したり、思ってもないことを雰囲気で言ったりすることもあります。 というか、初対面の他人の前で本当のことを言う、ほうが、むしろ珍しいことですよね。
私個人としてはここ数年、グループインタビューは数えるほどしかしていません。 難しさもそうですし、調査目的でどうしてもグルインでないと、というのは実際それほど多くはありません。
最近、消費者調査で有名なとある大手企業さんは、グループインタビュー原則禁止、個人インタビューや観察型の調査(これはまた後日お話します)にしている、なんて話も耳にします。
調査をしよう、じゃあグルイン、ではなく、まずは目的と知りたいことを明確にし、その目的に合った調査をぜひ設計していきたいものです。
それでもやっぱりグルイン!というときに、グループインタビューの成功のコツは
・ 調査から何が知りたいのかを、事前に詳細に確認しておくこと - 目的や知りたいことが明確でなければ掘り下げて理解ができません(これは定性調査全般に言えますが)。
・ グループインタビューの特長をどう活かすのか、グループで聞くことで逆に注意しないといけないことは何か、を確認しておく。
・ プロの経験豊かな進行役(モデレーター)にお願いすること - 場の作り方や、質問の流れはモデレーターにかかっています。
・ 同じグループに呼ぶ人はニーズやライフスタイルなど調査目的に合わせて共通点があること ― 話の盛り上がりは共通点から生まれます。
そして人数を数値化したり、やたらたくさんグループを設定したりしても意味がないことはどうかお忘れなく。
今日は目的に合った調査をしましょう、よく使われるグルインですが実はなかなか難しいんですよ、というお話でした。
K。
製品開発者Aさんのプロジェクトに最近インド人のBさんが加わりました。 とても優秀な技術者で、すっかりチームの中心的存在になっています。
さてある日、Aさんは自身の企画する洗濯用洗剤の新製品のコンセプトを消費者に見てもらい、感想を聞くインタビューを行いました。 チームメンバーも一緒です。
Aさん: 「これは新しく開発された洗剤の説明文なのですが、読んでどう思われるか、教えていただけますか。」
消費者C子さん: 「…(ちょっと考えて)いいと思います。 私の友達のD美さんはこれを欲しがると思います。」
Aさん: 「なるほど…。 どうしてそう思われますか。」
C子さん: 「D美さんはよくこんな汚れに困ってるって言ってましたから・・・。」
Aさん: 「C子さんご自身はどうですか。」
C子さん: 「……今はあまり困っていないんですけど、いいって誰かに聞いたら買うかも知れません。」
うーん、これは前にご紹介した、「よくないコンセプトへの反応」のパターンですね。 (詳しくは前の記事をみてください。)
終了後、このインタビューのまとめをチームでしました。 Aさんがこう切り出しました。
Aさん: 「あまりよい反応ではなかったですね。 C子さんにとってどうやらこの新製品はあまり必要ではなさそうですね。」
するとインド人技術者のBさんが、不思議そうな顔: 「いいと思います、って言ってましたよね。」
Aさん: 「いや、ああは言っていたけど、C子さんは自分が買いたいとは思ってないですよね。」
Bさん: 「え? D美さんは買うだろう、って言ってたし、C子さんも買うかもしれないって言ってましたよね。 これは売れるなと思いましたが。」
さて大変です。 日本人にはホンネとタテマエがあって…なんて、文化の話にまでなってしまいました。
結局、Bさんに同調する人も出て、チームの結論は先送りになりました。
Bさんは文化背景も違いますし、いわゆる行間を読むのは難しいことかもしれません。 でも行間の読みとりかたは同じ日本人同士であっても違いがあり、人によって全く異なった結論を持つこともあるのです。 これはインタビュー調査の難しさでもあります。
ではそんな理解のズレを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
まず、本当にこれはいいって思っている時にどういうかを知っていると、反応がよかったのかどうかわかります。
こんな質問をC子さんにしてみましょう。
私: 「C子さん、最近買ったもので、これはよかった!ってものありますか?」
C子さん: 「野菜の皮をむく手袋! これすごいんですよ・・・。 ごぼうとか手でこするだけでむけちゃうんですよ~。 とっても楽で手放せません。 それでね・・・・・。」
C子さんはちょっと興奮気味にその手袋がどのくらい役立つものか、説明してくれました。 話はなかなか尽きません。
誰でもそうだと思いますが、これはいい!と思ったものには強い理由や気持ち、感情が伴います。 そして、いいと思ったものについて話すときにはその気持ちが自然とでてくるものです。 その話し方をぜひ見てみてください。 それと同じ、とまではいかなくても同じような表情や話し方をしているでしょうか。
次にいつも使っているものと比べてもらう方法です。
私: 「C子さん、今お洗濯の時にはXXブランドをお使いとおっしゃっていましたよね。 この新製品とXXが売っていたらどちらを買うと思われますか?」
C子さん: 「・・・やっぱりXXかな。 使い慣れてるし、香りが好きなんです。」
(出ました、無敵の「香りが好き」、こちらの記事もどうぞ。)
もう一つ、実際に買ったとしたらいつどこでどう使い、どんな風に自分の生活はよくなると思うか聞く、というのもアリです。 どう使ってどんないいことがあると思うか、具体的にイメージされていたら「本当に買いたい」証拠です。
私: 「もしこの新製品を買われたとしたら、どんな風に使いますか?」
C子さん: 「いつもの洗剤の代わりに洗濯機に入れて普通に使います。」
私: 「この新製品に変えたら何かいいことはありそうですか?」
C子さん: 「うーん。 汚れは落ちるんでしょうけどね・・・。 今までと変わらないと思います。」
例えば服を買うときには、「あのシャツと合わせたらいいかな」とか「今度の旅行に着ていけるなあ」など、実際に着た時のイメージを持ちますよね。 本当に買いたいな、と思ったものは、無意識のうちに自分の生活の中に当てはめてみて、それでいいと思ったものであるはずです。 逆にそんなにピンと来ないものは、自分の生活に入るイメージができなかったり、できたとしても今と変わらなかったりするものです。 もしC子さんのお友達、D美さんが本当に欲しいと思う商品であれば、こんな感じで答えてくれたと思います。
D美さん: 「うちの息子、すごく靴下を汚してきて、真っ黒なんですよ。 今、つけ置きして洗ってるんですけど、やっぱり落ちなくて。 この新しい洗剤だとそれが落ちるのか、見てみたいです。 もし落ちたら絶対買います!」
今日はインタビューを聴く人が「買いたい」本音を聞き分ける、ちょっとしたヒントでした。
K。
先日、教育熱心ママ友達Aさんがこんな雑誌を見せてくれました。
――特集「朝ごはんを食べる子は学力が高い」――
どうやら学力点数と生活習慣の関連を調べた調査結果が紹介されているようです。
で、「だから朝ごはんは大事です。 きちんと食べましょう」と、推奨メニューまで載っています。
Aさん:「やっぱり朝ごはんは大事だよね~、つい手を抜いちゃうんだけど。」
私:「ほんと、ほんと。」
Aさん:「本当は和食がいいっていうもんね。 魚とか食べたほうがいいんだろうね。」
一緒に居合わせたテキトーママBさん:「ふーん、そうなんだ。 でも私にはムリだわ・・・。 いつもパンと牛乳よ。 食べない日だってあるくらい。」
私:「わかるわ~。」
しばらく経ってまた3人で集まったときのこと。
Aさん:「実はあれからがんばって毎朝しっかり和食にしてるのよ。」
Bさん・私:「すごい!!!」
Aさん:「でも別に成績があがるってもんでもないわね。 ちょっとがんばったから期待したのに。」
私:「Aさんちはもともと勉強できるし。 ちゃんとそれを維持できるのがすごいよ。」
Bさん:「・・・実はさ、うちは逆で、最近寝坊ばかりするから朝ごはん食べない日が増えていて、そしたら先週、先生から注意されちゃったのよね。」
Aさん・私:「え? なんて?」
Bさん:「なんだかうちの子授業中ぼんやりしているみたいで。 朝ごはんをしっかり食べさせてくださいね、だって。 反省したわ。」
なるほど、「朝ごはんを食べる子は学力が高い」のココロは「朝ごはんをきちんと食べるほど学力は高い」ではなく、「学力の高い子はちゃんと朝ご飯を食べています。 食べないと学力低下を招くこともありますよ」だったんですね。 ということは、おそらく「朝ごはんを食べないと集中力がなくなって授業中ぼんやりしていたりすることがあるので、学力低下につながることがあるということなのかも知れない」ということですね。
データが表す結果(事実)はあくまで結果に過ぎず、実はその裏にあるココロ(真実・インサイト)をきちんと理解することが重要です。 それを見誤ると、全く違った解釈になりかねません。
朝ごはんを食べさせると学力が上がる、そんなわけはないのは少し考えればわかることですが、データが示してくれるのは、「学力が高い」グループには「学力が低い」グループより「朝ごはんを食べている子がたくさんいた」、あるいは、「学力が低い」グループは「朝ごはんを食べない子がたくさんいた」、という事実同士の関連のみで、「どうしてそうなのか」は教えてくれません。
もう一つ、マーケティングリサーチでの例を挙げてみましょう。
新製品のコンセプト調査で、30代、40代の女性がほかの年代よりも多く、この新製品を買いたいと答えたことが分かりました。
製品開発担当者のCさん:「そうか! じゃあ30代・40代の女性が共感するようなCMを作ろう!」
調査担当者のDさん:「でもどうしてこの商品は30-40代の女性が受け入れてくれるのでしょう?」
Cさん:「うーん、よくわからないけどこの世代がいいって言っていることが分かれば十分だよ。」
Dさん:「少し気になるので、ちょっと調べさせてください。」
結局詳しく調べた結果、開発者が考えていなかった、小中学生の男の子のいる家庭でこの製品が役立つ場面が多くあり、お母さんたちが高く評価していることが分かりました。 なので、30-40代の女性が多かったんですね。
30-40代の女性が共感するCMと、小中学生の男の子のお母さんが共感するCM、なんだかずいぶん違いそうですよね。
本来であれば、コンセプトテストをする前にどんな人がどんな理由で買ってくれるはずだ、という仮説があるべきですが、仮説外の結果が出た場合、このように理由を探っていくと、数字の結果だけからはわからないことが出てきたりします。
というわけで、今日は、事実(ファクト)の裏にある真実(インサイト)、調査結果の裏にあるインサイトを理解しましょう、というお話でした。
K。
