シリーズ記事のくせにつづきが10カ月ぶりって・・・すいません。
間が空きすぎていて、何それ?だと思いますが、10カ月前に「センスを良くするにはどうしたらいいのか」について、練習方法として、ともかく考える前に「好き・嫌い」を決める練習をしましょう、という記事を書きました。(こちらの記事です。)
まず、それが一番大事な「千本ノック」です。
で、それができた、たくさんやったという前提で、次に何をするのか、に、進みます。
難しいことを言い始めると、終わらなくなるので、その「極意」とでもいうべきものに絞って書きますね。
それは、「幽体離脱をしてください」ということです。
幽体離脱をして、自分自身を見るようにしてください、ということ。
デザインとか広告の評価(特に完成前・制作前のもの)って、とても難しいんです。
マーケティングの仕事の現場では、評価する側が、その道(美術・デザイン・造形・映像・撮影など)のプロではないことがほとんどなので、なおさらです。 かくいう私も、美術の素養は全くござりませんし。
例えば、あなたの目の前のパッケージや広告、どれでもいいので、ひとつ選んで、3つ以上文句をつけてください、とお願いすれば、おそらく軽く3つ以上出ると思います。 それがたとえ自分が好きなモノや気に入っているモノであっても。
字が小さい、色がくすんでいる、手触りが良くない、余分な模様や形がある、タレントがかわいくない、音楽がうるさい、変なところで邪魔なスーパーが入る・・・・。
つまり、そういう目で見て「分析」それば、欠点を見つけたり、改善点を探し出したり、けなすのは簡単なんです。
しかし、それらを「直す」と、とても素敵なものになりますか?
これが、ならないんですよ・・・・。
つまり何が言いたいかというと、対象となるデザインや広告を、直接分析の対象にしてはいけない、ということです。
分析というのは、「理屈」の仕事で、それは、センス(感覚)→感情の次、最後に来る働きで、センスから最も遠いところにあるもの。
それを磨いても、センスを磨くことにはつながらないんです。
そこで、おススメなのが「幽体離脱してあなた自身を見る」ことです。
「えとじや紳士服」の広告が、その写真やそもそも素材として使われている洋服やメガネが、フォントや音楽が、いかに古臭いかを分析するのではなく、「えとじや紳士服」の広告を見て、「あ、なんだがステキだなぁ、かっこいいなぁ」と感じているあなた自身を分析するのです。
(つまりこの「構造」(図)では、誰も広告そのものを分析していない、ということです。)
・私はなぜこの広告を好きだと感じているのだろう?
・なぜ、かっこいいなぁと思ってしまっているのだろう?
・それは、この人の好みや人生・生活に根ざすものなのだろうか?
・洋服や生活スタイル、生き方のスタイルに近いのだろうか、それとも遠いのだろうか?
・何か関連するもの・無関係に思えるものを連想・妄想しているのだろうか?
・広告を構成する諸要素のうち、何が私を動かしているのか?
・それは、ストーリーなのか、伝えられている内容なのか、
・もしかしたら、音や音楽や文字、色や風合いだったりするんだろうか、
・それらの組み合わせが何かを形作っていて、それに反応しているんじゃないだろうか?
などなど、を、幽体離脱したあなたが、ぼんやり「センスだけで」反応している本来のあなたを観察~分析するわけです。
この作業を、自主練1で見つけてきた、「好き・いいね」と感じたものたちに、そう感じている「あなた」を幽体離脱して観察する、「嫌いだ・やだなぁ・つまんないな」と感じたものたちを見ている「あなた」を分析する、という具合に繰り返していきます。
そうすると、あなたは、あなたのセンスを見通せるようになってきます。
つまり、あなたの感覚や感情に対して、素直に対応できるようになる、それを語ることに躊躇しなくなる、それを他人にわかるように説明できるようになるわけです。
やればやるほど、です。
もし、あなたが担当している商品やサービスが、あなたをターゲットとしたものでない場合(私のような50過ぎのおっさんが、若い女性向けの化粧品を担当する、みたいな)、十分に上の作業に慣れてからですが、自主練1の対象物を、担当商品・サービスのターゲットが見るもの・使うものにしていけばいいんです。
そして、あなたが好き、で、ターゲットも好きなもの、に、あなたはどう反応しているのか?
あなたは嫌いだけど、ターゲットが好きなものには?
あなたが好きで、ターゲットに受けないものについては?
この練習を繰り返すうちに、あなたに「ターゲット」が憑依してきます。
大丈夫です。 年齢や性別や人種や収入や家庭環境が違っていても、同じ人間ですから。
なんだか、面倒かつ時間のかかる作業ですね。
しかし、あきらめてください。 仕方ありません。 最初に申し上げたように、たくさん実戦で打席に立つか、たくさん練習するしか方法はないので。 (「センスが無い」と言われているひとほど、そうです・・・。)
んが、やれば必ず良くなりますので、そこはご心配なく。
そして、やがてあなたは、
「これさ、ここの文字、小さくて読めないよ、大きくしておいてね」
などというセンスのかけらもないコメントで苦笑・失笑されることが少なくなり、かわりに、
「文字を読んでももらう前に、まず感動させないと話にならないでしょ。 読みたくなったら読める大きさでいい、もっと読みたくなるようにしてほしい」
って言えるようになるわけです。
たぶん。
お。