中小零細企業をお手伝いしながら気が付いたことをつぶやいていく「診断士的考察」シリーズの2回目です。

マーケティングの難しい理論・理屈は抜きにして、コンサルティングを通して、“あれ?”っと思ったことや“なるほど”と感じたことを深堀りしています。 

社内プロジェクトなどにも当てはまることですので、中小企業や個人事業主さんだけでなく、大きな会社勤めの方にも読んでいただけたらと思います。

 

前回は、「売れている理由を知ること」は売れない理由を知ることと同じくらい大事、というお話でした(売れている理由を知ること ~診断士的考察① 参照)。  

今回は、「自分の時間は会社のリソース(資産)」というテーマで書いてみたいと思います。

 

 

最近、個人で商品を制作・販売している方の相談を受けているのですが、そこで感じたこと。 

それは、“自分が頑張ればなんとかなる”というのが身にしみついて、無理をするのが当たり前になっているなぁ・・・ということです。 そして、おそらく、こういう経営者さんは多いのではないか、ということです。

帰る時間が遅くなったり、一日中仕事のことばかり考えていたりと、個人のワークアンドライフバランスが健全ではないのはもちろんですが、ビジネスにとってもよい状態とは言えない。

なぜなら、いずれそのやり方には限界が来るからです。 (もしかすると、そのやり方にはとっくに限界がきてしまっているのかも知れません。)

 

個人事業や中小企業の場合、ビジネスが軌道に乗るまでは、決まった給料を設定せずにやっておられる経営者さんも多いと思います。

“自分の会社なんだから自分が何とかしないと!”、“自分のことは二の次、会社の成功のため・社員のために頑張らないと!”と、(もしくは、ビジネスがうまくいくのが楽しくて、“もっといいものをもっとたくさん提供したい!”という気持ちがそうさせるのかもしれませんが)、会社と個人の線引き・取引があいまいになりがち。

 

だからでしょう、「自分の時間に対しての労働生産性」という感覚が薄い気がします。

 

 

スイレン趣味でやっている分にはよいのですが、事業を持続可能にするという意味では、「自分の時間は会社のリソース」という意識は大事なのではないかと思います。

経営者自身は会社の(おそらく最も大事な)資産のひとつだということです。 

100万円の予算でいくらの利益が出せるか、社員を一人雇うことでどれだけの利益が上がるか、というのと同じように、自分の時間を1時間使うことが利益にどれだけ寄与するか、という風に考えられるかということです。

他の資産と同じように自分の時間も、上手に使わなければ利益に結びつかないし、工夫しなければいつか成長が頭打ちしてしまいます。

 

いったん「自分の時間は会社の資産である」と思い始めると、行動が変わります。

生産性を上げる工夫せざるをえなくなる。 特に経営者なら、いかに時間をかけないか・同じ時間で利益を上げるか、と考え始めるでしょう。

材料費や光熱費などは、工夫して1円でも抑えようと努力しているのに、自分の時間の生産性を考えないのは、利益を考えずに高い材料を使っているようなものなので。

しかも、時間は平等に有限。 是非、選択と集中で大事に使ってほしいと思います。

 

 

個人経営者を例にとってお話してきましたが、似たような考え方が生産性の弊害になっている事例はどこにでもあるのではないでしょうか。

たとえば、「自分が頑張ればなんとかなる」と言って、周りに助けを求めないプロジェクトリーダー。 チーム全体の生産性を考えると決して良いとはいえません。

もしくは、だらだらと残業するのが習慣化している人。 自分の時間は自分のものだと思っているのかもしれませんね。 少なくとも勤務時間は会社のもので、生産性を高める努力も仕事のうちと思えば、そうそう残業はできないハズ。

残業続きで疲れてしまって、自分の能力がしっかり発揮できない状態になっているとすれば、それはすでに「会社の資産を無駄遣いしている」ことに他なりません。 

 

今回のクライアントさんにも、ビジネスを伸ばす策を考える前に、まずは経営者ご自身の生産性を検証することをおススメしました(そうしないと、さらに売り上げが上がったときに問題が起きそうだったので)。

はじめに手を付けたのが、何にどのくらいの時間を使っているかを客観的に見てみること。 

次に、制作している商品ごとに、1時間あたりに生み出す利益を計算して、費やす時間と販売価格やサービス内容などが見合っているのかを見直してみました。

商品の価格表に、材料費などの原価、それに加えて、そこに費やしている(自分自身の)時間を加えて、みかけの粗利や利益率だけではなく、生産性の指標を入れて、全体を見渡す。

これから売り上げが上がりそうなもの、上げるべきものが上がっていったときに、自分の首を絞めてしまっていないかも見えてきます。

とりあえず売り上げが上がるから、上げたいから、の「とりあえず」を「今見直す」作業です。

 

簡単なワークシートでざっくりと見てみただけですが、結果はとても興味深いものでした。

こういう視点は初めてだったので、クライアントさんにとってもいろいろな気づきがあったようです。

その結果、商品ラインナップや値段を見直したり、制作の方法を工夫したり、外注を考えたりと、生産性アップを図っています。

そしてなによりも、「もっとがんばる」ではなく、経営者にとって一番大切な「考える時間」を確保できたのが、良かったのではないかと思っています。

(もう少し具体的に話せるとよいのですが・・・。 それはまた、いつかの機会に。)

 

 

今回は、「自分の時間は会社のリソース(資産)」というテーマで話を進めてきました。 

本来は、最初からそういう意識で、生産性を考慮に入れつつ商品開発や値段設定ができればベストなのですが、遅すぎるということはありません。

気になった方は、一度見直してみてはいかがでしょうか。

 

 

最後に。

もちろん、ビジネスは生産性の指標だけでは片づけられません。

“生産性だけ”を追求すると、他のお店と代わり映えしないつまらないお店やブランドになってしまいかねません。 生産性と同じくらい、お客様から見て魅力的であるか、お店の特徴(ブランド)をちゃんと体現できているか、さらに、経営者がそのビジネスをしていて(制作や販売していて)楽しいか、というモチベーションも大切です。

楽しく仕事をすること、ぜひお忘れなく。

 

和。