引き続き、クレドのお話しです。
前回、クレドの開発について語りましたので、今回は、「クレドはできた! さ、みんなに理解して使ってもらおう!」です。
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Q: では、次に、クレドの浸透と運用についてお聞きします。
お。: はい。 開発以上に大事なところですね。
ブランドエクイティ(戦略)の場合も全く同じなんですが、考えて、まとめて、ちゃんと文書にするのも大変ですけど、それでおしまい、じゃ、意味がないわけです。 文字通りの「絵に描いた餅」になってしまわないように、それを使うひとが、ちゃんと理解し、それに沿って・そのために行動できないといけないわけです。
だから、「開発以上に大事」と言ったわけですが、ブランドエクイティよりやっかい(?)なのが、マーケティングにおける「ブランド」は、それを製品やデザインや広告などに反映すれば、それが(ほぼ)そのままお客さんに届くのに対して、接客という「ひと対ひと」のサービスの場合は、接客に携わるすべてのスタッフが「クレド」を実現できないと、接客を通してブランドが実現されないということ。
店舗数が少なくて、社長が常に全部を見渡せて、指導できればいいんでしょうが、規模が大きくなるとそうもいかないですし。
ちょっと前回のまとめという意味も含めて、簡単な図にしてみました。 普遍的に正しい図ということではなく、今回のケースをわかりやすくしたものとして見てください。
お客さんに、ちゃんとブランドを体験していただくためには、そのすべての接点でブランドらしさを実現しないといけない。 クレドは、その最も重要な場面=FMOTにおけるブランド体験の役割を担っているわけです。
Q: だから、まず、スタッフ全員がクレドを理解しないと意味がない、と。
お。: そういうことです。
Q: そのために、お。さんが全国を行脚したということですか?
お。: そうです。
が、実はそれだけでは「説明を聞いた」ことにはなっても「理解できた、それに沿って行動できるようになった、接客が変化・向上した」にはならないんですよね。
Q: では、何が必要なんでしょうか?
お。: 結論を言ってしまうと、関係するひとたちが、まず理解し、それを使って考え、行動し、結果を出し、評価してもらえる仕組み、と、それに必要な時間・期間、ということなんですが。
Q: なんか、聞く前に感想を言うのも変ですが、大掛かりな感じですね。
お。: そうですよ。
インターナルブランディングとかいう言葉を最近耳にすることが多い気がしますが、言葉は軽そうですが、大変なことなんですよ。
言うなれば「文化」を作る・作り変える作業ですから。
流行ってるからとか、あんまり軽い気持ちでやらないほうが身のためです。
Q: 「軽い気持ち」ってことはないんでしょうが、うまくいかない、ありがちなパターンというのはありそうですね。
お。: 今回の仕事に先立って、私自身もいろいろと探ってみたんですが、そういうのはありますね。
まず、「クレド開発チームを作って、いいクレドはできた。 で、そのまま会社の壁に貼って時々読んでます」という悲しいパターン。 案外、少なくないです。
あと、よくあるパターンは、「いいクレドができて、各部署・地域にクレド担当の人がいる。 が、通常の業務に活かす仕組みができてなくて、クレドはクレド担当者だけの仕事になってしまっている」というやつ。 ちゃんと担当者を置くところまではいいんですが、浸透と運用が、担当者の力量と努力のみにゆだねられてしまうので、例えば月に1回、クレドの会議のときだけ考えるけど、それ以外の場面では忘れてしまう、ということが起きてしまいます。
Q: では、どうすればいいんでしょうか?
お。: これが正解、というわけではないんですが、実務において、クレドをどのように活かすことができるのかを考え、それを業務の仕組みに組み込んでいくということでしょうか。
あくまで一例ですが、今やっていること・これからやろうとしていることを挙げてみます。
全員が説明を聞いて、ガイドブックを読む、というのは当然として、その後、
・毎日、その日自分がクレドに沿ってどう行動するか、クレドを活かしてどのような接客をするのかを書いて、一日の終わりにそれができたか、何を学んだかを書いて、それに対して上長がコメントを書く。 それをみんなが見られるところに数日張り出しておく。 その後ファイルして、ときどき見返す。
・月に1回、お店単位でその店の接客の課題などをテーマとして取り上げ、クレドと結びつけて考え、次の月の課題を話し合う会議を行い、その内容を上長を通じて全社に報告する。
・社内SNSを用意し、そこに各自自由に接客の成功例や失敗例や疑問などを上げていって、他のひとが「いいね!」したりコメントしたりする。
・上記の中で特に優れたものを、3か月に1回、社内で表彰し、内容を共有する。
というのをやっています。
ホントに大変な作業ですが、こうしないと、日常の業務や行動をクレドに結びつけて考えるという「思考~行動パターン」は醸成されませんから。
さらに、数か月に1回、自分と店長さんのクレドの運用について、店のスタッフの方に無記名のアンケートを実施しています。 それによって、クレドがどの程度(頻度と深度)運用されているか把握し、改善策などを実施しています。
Q: これを全部、全社でやっているわけですか? すごいですね。
お。: はい、全店舗ですね。 ホントに大変なことですが、しっかりやっていただいているようです。 素晴らしいコミットメントだと思います。
私たちはそれらをスムーズに運用でき、さらに良くなるように、さまざまなテンプレートを用意したり、店長さん向けのトレーニングを実施したり、うまく運用できている店の様子を共有したりしています。
そして、今後、
・クレドを人材育成のためのツール、および育成の進捗を測る指標にしていく
・顧客満足度を測る指標と連動させていく
計画です。
これができるようになると、ホントに「クレドの実現によって、接客が向上し、お客様の満足度が上がる」ということにつながっていくはずで、そうなってようやく「接客を通じてブランドを実現し、強化していく」という目的に近づいていけるんだと思っています。
Q: 何年がかりですか?
ざっと3~4年ですかね。 開発し理解してもらうのに1年、使ってみて慣れてみて実感してもらうのに1年、運用によって接客の質と人材の質が向上していくのに1~2年以上、って感じで考えています。
それがブランド(会社)の「文化」として根付く、というところまでは、さらに数年を要するかもしれません。
Q: 「軽い気持ちでやらないほうがいい」と言っていた意味がわかる気がします。
お。: でも、普通、ブランド作りってそういうもんですからね。 結果が出るのに3~5年かかるものだし。
ただクレドというか接客の場合、「それに全スタッフがついてきてくれる」という、高くて長期にわたるコミットメントが必要で、こればっかりはコンサルが用意できるものではなく、経営陣とスタッフの仕事です。
Q: 最後に、「クレドを作ったけど・クレドはあるけど、もうひとつうまくいかない」と困ってる方にアドバイスを。
お。: 私に相談してください。
というのは置いておいて、そうですね、「内容が良くないので書き直そう」と考える前に、どう運用すべきか、どう運営すると結果につながるか(売り上げが上がる、など)、を経営陣と話し合って、「運用し尽くす」というコミットメントをもらうことですかね。 せっかく作ったんですから。
お。