hana前回に続いて、えとじやブログではちょっと珍しい”定量分析”についてお話しします。

定量分析といっても統計などの難しい話ではなく、大量のデータを目の前にするとついうっかり陥ってしまう“落とし穴”の話です。 「あるある~」と、自分の経験(もしくは、しょっちゅう穴に落ちている同僚、部下、先輩?)を思い出しながら読んでいただき、頭の片隅に置いて次回の分析に臨んでいただければ、と思います。


前回“その①”では、「木ばかり見て森を見ない」というパターンを紹介しました(詳しくは→ http://blog.etojiya.com/archives/8978187.html)。

細かいところに気をとられて全体像を見失ってしまう、という落とし穴です。 他にもっと大事なことがあるにもかかわらず、たいして重要でもない細かい点に固執してしまいます。 結果として、判断を誤ったり遅らせてしまったりすることがあるので、気を付けなければいけません。 周りにもいると思います、「どこ見てるの~、そこじゃないよ~。」と言いたくなる人。


前回はデータの見方に関してでしたが、今回は、データを見た後の解釈で起こる“あるある“をひとつ。



よくあるパターン② 「“どこかで聞いたことがあるような理由”でまとめてしまう」


“業績が振るわないのは、少子化の影響で・・・”という分析結果、よく耳にしませんか? 

少子化だけではありません。 “デジタル化が進んで・・・”、“消費者の〇〇離れが深刻で・・・(ちなみに、酒、車、活字、テレビと、いろんなものから離れているそうですが)”、“増税の影響で・・・”、“競合の値下げのため・・・”などなど、この部類はたくさんあります。

これらのフレーズを聞いた時、または、自分の分析をこれらで理由づけしようとしたときには、ひと呼吸おいて考えてみてください、「本当に理由はそれだけなのか?」と。 おそらく、「それだけではない」ことのほうが多いんじゃないかと思います。 (あるいは、「本当にそれが理由か??」と。)

もし、担当ブランドの売上が5%以上落ち続けていていたら、要注意です。 世の中の中長期的なトレンドだけで、そんなに売上が落ちることは滅多にありません。 他に何か理由があるがはずです。 5%減が3年続けば、もとから15%くらい落ちたことになります。 いくら少子化でも○○離れでも、ターゲット人口がそんなに減ることはないハズです(本当にそうなら、急いでターゲットを見直すか、むしろ新しいビジネスに乗り換えたほうがよさそうです)。

「いや~、デジタル化が進んでしまって。うちの商品が売れないわけだ」と思っている人も、もう一度シェアを見直してください。 売上だけでなくシェアも落ちているなら、これも要注意です。 デジタル化という市場の動きだけではシェアは落ちません!

新聞の見出しに出てくるような「大きな」結論は、なんだかそれっぽくまとまって見えてしまうからか、よく目にしますね。 なんとなく「立派な分析をした」気になれる? でも、たいていのビジネスはそうしたマクロな影響よりも、ミクロな要因で動かされているものです。


これらのフレーズを安易に使うことが危険なのは、誰もが「あ~、なるほど」とすぐに納得して、それ以上考えなくなるからです。 本質が隠れてしまいます。 「少子化だから仕方がないな」「世の中の流れだからどうしようもない」と言っている間に、ブランドの弱体化が始まっていたりするのです。

そういう意味では、パターン①よりもちょっとだけたちが悪いな・・・と思います。 ①の落とし穴はわかりやすいので、誰かが「そっちじゃないよ」と言ってあげられるのですが、この場合は、一見もっともらしく聞こえるし、間違っているわけではないだけに突っ込みにくいんです。


私が以前担当した商品でも、このフレーズがまん延したときがありました。

その商品を担当するにあたり、資料を見ると、過去数年に渡って売上がじわじわ落ちているのは明らかでした。

理由を聞くと、みんな口をそろえて、競合が積極的に値下げをしたからだ言います。 うちもなんとか値段を下げないと太刀打ちできない、と。 どのレポートを見ても価格のことばかり。 でも、これだけコンスタントに落ち続けているのは何か他に理由があるのではないかと思って聞いてみても、「いや~、値段がね」という答えしか返ってきません。 どの部署も「いくらまで下げられるか」「どうやって販促費を捻出するか」の議論に大忙しでした。

もちろん競合の値下げによってユーザーをとられていたことは間違いないのですが、実は、よくよく見てみるとブランド力が数年に渡り着実に落ちていたのです。 競争力のある価格をつけることにかかりっきりになっていて、ブランドを維持するのを怠ってしまっていたわけです。 商品のイメージや特徴がはっきりしない中で、消費者は価格以外に何を基準に選べばよいかわからなくなってしまっていたようです。

結果的に、値下げを仕掛けた相手の土俵で相撲を取ってしまっていました。 

ちなみに、「売上減は競合の値下げのせい」「価格さえ何とかなれば元通りになる」と信じているチームに、違う側面を受け入れてもらうのは結構大変でした。 自分たちのブランド力に問題があるということをわかってもらうのに、手を替え、品を替えて説得し・・・、随分と時間がかかりました。



わかりやすくて、否定できない、しかも、誰のせいでもない(マーケのせいでも営業のせいでも、製品開発のせいでもない)ので耳障りがよい。

だから、誰かが言い出すと、あっという間に広がって、盲目的に信じる人が増えてしまうのもこれらのフレーズの特徴です。

でも、誰のせいでもない、ということは、それを知ったところで誰も根本的な改善ができないということ。 市場や競合の動きに反応するしかありません。

もし、最近こういった言葉を多用しているかも、よく耳にするかも・・・と思ったら、売上低迷の本当の理由が見えるまで、ねばって分析してみてください。 “実は自分たちのせいだった”という点が見つかるかもしれません。

それを認めるのは多少辛いかもしれませんが、打つ手が残っているということはラッキーなことです。


ともかく、新聞の見出しや株主総会のスピーチみたいな結論を書いてしまいたくなったり、見かけたら要注意。 たぶん、本当の理由を発見できていないか、隠れているか、隠しちゃってるか、です。


和。