弊社がお仕事の打診をいただいて、結局、前に進まないパターンのひとつに、「そもそもあなたの担当商品を廃盤にするか、社内の別のブランドの一部にしてしまったほうが会社にとってずっと効率がいいし、長期的には正解ですよ」というのがあります。
当然のことながら、その商品を担当する方が声をかけてくださっているわけで、「なんとかしたい。 きっとブランド化することでもっと売れるに違いない。」と思われたからこそ、こんな零細コンサルに連絡をくれたんですよね。 なのに、そんな・・・。
しかし、残念ながら、こういうケースは少なくないんです。
相手にそうした決断をする権限と勇気があると、前に進むこともあるんでしょうが、たいていの場合、
「売れないから売れるようにしてくれ、って頼んでるのに、『売るのをやめればいい』とは何事だ! けしからん!」
となるわけです。
そりゃそうですね・・・。 すいません。
でも、なぜそういう「ひとりで生きていくには小さすぎる弱小製品(群)」が、かくも多いのでしょうか。
まず、みなさん、新商品を出すのがお好きです。 しかも、出した結果、売れなくても、そのままおいておくの、ホントにお好きですよね。 カタログに載ってるだけ、育てるわけでもなく「飼い殺し」が、実に多い。
そして、また春が来て、君は、新製品をどっと出す。
みなさん、特に日本企業のみなさん、「XXの総合メーカー」になるの、お好きです。 「総合」に見えるように、と、わざわざ利益の出ないサブカテゴリに新製品出したり、No.1でもないくせに確実に縮小傾向に市場にしがみついたり、自社に有利な条件や資産がないにも関わらず、飽和状態にある近所のカテゴリに進出したり。
私は「百貨店症候群」とも呼んでるんですが、ともかくカタログや本社の受付横のショーケースが充実しているとすごい会社になった気になれる、というメンタリティ、なんでしょうか。
もしかすると、数が多い・仕事が多い・忙しいことがいいことだと思ってる? そんなわけはないですよね・・・。
さらに、もうひとつ、たぶん日本企業、もしかしたら日本の文化の特徴(?)だと思ったりもするんですが、「(良いところ・得意なところ・重要なところを伸ばすより)悪いところ・苦手なところ・足りないところを直すほうが好き」というのも働いています。
これは、もう確信に近いですね、発想がそこにあることがとても多い。
どこの企業におじゃましても感じるんですが、みなさん「悪いところを直して平均的に良いものにする」のが、大好きです。 癖というか、ほぼ無意識に、そう考えてしまうようです。 でも、それって、わざわざ特徴のない「普通のひと」になるためにがんばってるわけですよ。 「算数はそこそこできるから、苦手な国語を克服しよう」って感じなのかしら? 算数、がんばればいいのに。
で、出来の悪いかわいい製品やサービスが生かされ続ける。
結果、とても多くの会社が、売れない・動きの遅いSKUを大量に抱えて、あらゆるところに非効率を発生させてしまうわけです。
そして、それは、生産や管理上の無駄だけじゃなく、マーケティングにおいても同じ。
商品の数・種類が多ければ、担当者の人数や時間も必要だし、販促費用などの目に見える無駄だけでなく、やむを得ないときのパッケージの変更などの手間もかかる。 そして、何か施策を打とうにも、スケールが小さすぎて「担当者しか知らないマーケティングプラン」がひっそりと実施される。 (例えば、鳴かず飛ばずのTwitterアカウントとか、個人の晩ご飯の写真より「いいね!」が少なそうなFBページとか、サイバースペースの片隅、窓からろうそくの灯のような明かりを放つホームページとか、ターゲットが絶対に見ないケーブルテレビで大声をあげるTV宣伝とか、ようけありまっせ。)
そもそも冒頭の例のように、やめてしまったほうがいい商品に優秀な担当者が就いて、日々頭を悩まし、挙句の果てにコンサルまで雇う羽目にもなる。
同じお金を遣うのなら、大きな、あるいは、重要なビジネスに投資したほうがいい。
同じ働くのなら、その人も、重要な、あるいはインパクトの大きいブランド・ビジネス・プロジェクトを担当したほうがいいと思うんです。
「リストラ」ということばは、ほぼ「人員削減=首切り」という意味でつかわれますが、本来は、Re-structure、すなわち「構造や仕組みを再構成・再構築する」という意味のはず。
会社に非効率と不採算が積み重なって、ひとが(あなたが)リストラされてしまう前に、自社の製品群をすっきりと再構成・再構築して、動きの遅いSKUや弱小商品・弱小ブランドをがんがんリストラしてみる=廃盤にする・他の商品ラインナップの一部に吸収合併する・いくつかのブランドをまとめて大きなブランドにする・いっそ他社に売る、のがいいんじゃないでしょうかね。
え? いち担当者の仕事じゃないって? そんなことないと思いますよ。
そういうのを、管理部門発想でやったり、手遅れになって企業再生のメスが入るまで待つより、マーケティング発想でやることで、「切り捨て」や「スケールメリット」だけじゃなく、ブランド資産の強化という効果を出せるんじゃないかな、と思ってみたりするわけです。
「部長、私の愛する商品、実はリストラすると、会社の効率が上がって、利益が出るだけでなく、こっちのブランドがこんなに強くなります。 これがそのシミュレーションです!」というのは、かなり立派な「マーケティングの仕事」だと思います。
お。