ちょっと軽い記事を。 なんならFacebookでつぶやけば済むような。 でも、そういえば、しばらくCMに関する記事を上げてなかったので、いいかな、と。


最近よく目にする大好きなCMというか、キャンペーンがありまして。


ごきげん

シリーズのCMはたくさんあって、全部、こちらのHPで見られますので、YouTubeリンクだけでなく、HPリンクを貼っておきます。  「ゴキゲン♪ワーゲン」HP
 


いやぁ、よくできてる。 あったかい気持ちになれます。 (私自身が、ちょっと前までワーゲンオーナーだったし、そのあと、ホントはあんまり好きじゃないAudiに乗り換えたことも影響してるのかもな。 やっぱ、ワーゲンにしときゃよかったかな、と?)


私は、クルマのマーケティングについてはよくわからないし、TVCMなどがどの程度売り上げに貢献するものなのかも知りません。 なので、この広告がビジネスを伸ばすのか、実はよくわかりません。

単に大好きなだけです。

そもそも、広告なんかより、実際に走ってるのを見ることこそが最大のマーケティングコミュニケーションですよね、たぶん。

広告するとしても、きっと「値引きするから・ただでナビつけてあげるから今すぐ販売店に来い」って言ったほうが、(結果につながるかはともかく)会社としては安心なんだろうし、新しいモデルをかっこよく、あるいは、おもしろおかしく見せたり、技術のすごさを誇ったほうが、担当者たちは自己満足に浸れるんだろうとは思います。 すごい企業だぞ、うちは、と自慢したほうが社長はうれしいんだろうし。

クルマのCMって、そんなのばっかりですよね。 なので、クルマそのものはわりと好きですが、クルマのCM、好きなのが少ないです。

ましてやブランド広告ともなると、難しい。 たいていは、自慢、自己満足、または説教臭いモノにしかならない。

例えば、とよたうん、でしたっけ。 見たくもないですし、実写版どらえもんのとか、吐き気がします。 ああいう単なる「金持ちの道楽」に、私の時間が奪われるのが腹立たしい。 ので、とよたのCMが流れたらトイレに行ったり、ビールを取りにいったり、他のチャンネルを見たりする時間に充ててます。


おっと、いつのまにか、とよたの話になってしまってました。 話を戻して。


Volkswagenのブランドエクイティというかブランドらしさ、それを好きなユーザーさんたちのクルマ(ワーゲン)のある生活に対する考え方・感じ方、クルマそのものへの考え方・愛着、それらがひとつの世界にまとまっていて、それを「ゴキゲン♪ワーゲン」と名付けて、ターゲットを誘う。 いやはやなんとも愉快で、痛快です。

「クルマのことは、そんなに好きなわけじゃないけど、私、ワーゲン大好き。」

「クルマにこだわってるわけじゃないけど、おいら、ワーゲンじゃなきゃね。」

という、明らかに矛盾してる「感覚・感情・(屁)理屈」が、なんだか素敵です。


なにせFolk’s Wagon=「庶民の荷車」という名前のブランドです。 高級車やスポーツカーが似合うキャラじゃない。 ともすると「安物」「貧乏人のクルマ」になってしまいがちなポジションかも知れません。

普通(いや、かつてVolkswagen自身、そうしてたこともありますね、たしか)、高級車ライン路線、あるいは、速さを誇るための機能やデザインにはしるんですよ、クルマ屋さんって。

というか、クルマに限らず、ほとんどの企業は、そっちに行っちゃうんです。 参入しているカテゴリの一番上を狙ってないと、仕事してない気になってしまう。 そのカテゴリに対するこだわりの強いユーザー(実はほとんど存在してない?)に向けた、ハイエンドのプロダクトを出したがる。 プロダクトやサービスが実現できる夢、っていろいろあるのに、作り手(技術)の夢=使い手の夢だと思い込んでしまう。

ましてや、クルマなんて、莫大な投資を伴う技術の積み重ねの上にしか成り立たない産業だったりするので、CMともなれば、「うちのってすごい性能でしょ?」と、ちゃんと自慢しないと怒られる(誰に??)。


そこを、見事に、スパっと乗り越えてる。

もちろん、Audiブランドがあるからできることだ、といえば、その通りなんですよ。 でも、それはそれで、見事なポートフォリオ戦略じゃないですか。


Volkswagenといえば、ビートル。 ワーゲンバス。 そして、ゴルフ。

つまり「かわいいクルマ」のブランド。 (安いクルマのブランドではなく!)

クルマなのに、花を飾って、無理やりサーフボード載せて、ばたばたばたばた、と、絶対に速くないに違いない音を響かせながら、がたがた走る。 エアコンが似合わない。 それより窓を全開にして、助手席の窓から女の子の足が出てるのが似合う。 カブリオレが似合う。 軽やかな曲を大音量で鳴らして、友達と大声で(歌詞は無茶苦茶で)歌いながら飛ばすのが似合う。 ホットドッグ屋や弁当屋が似合う。

そういうことをちゃんとわかってて、それを「誇り」としてユーザーと共有し、ターゲットに語り掛ける。

「君もこっちに来たらいいよ」


クルマって、性能・機能も大切ですが、同時に「私はどういうひとなのか」を表現するものでもあって。 (「クルマなんて興味ない。 走ればいい」って言うひとも、実は、まさにその「興味ないよ」を宣言するためのクルマを選んでいると思います。)

でも、大きな買い物ですし、常に「一番欲しいクルマ」を選べるわけではないので、みなさん、たくさん「言い訳」をしますよね。 金額とか、燃費とか、子どもがいるからとか、奥さん(旦那)がね、とか、ガレージのサイズがとか。

結果、クルマの広告って、「言い訳インサイト」の直接的表現に偏りがちだったりします。


「ゴキゲン♪ワーゲン」は、そういうのにはまってしまわず、いろんな言い訳を、くるりっと、ポジティヴなマニフェストに転換してのけている。


お見事~!


お。