とあるクライアント(?)の方からお手紙(レポート)をいただきました。
全文をそのまま紹介させていただこうと思います。
弊社の仕事の中で、根幹となるのが、ブランド(製品やサービス)のターゲットとエクイティーを決めるお手伝いをすることなんですが、なにせそれらは必ず「社外秘」だし、どこの企業・ブランドかを明かせないことが多いので、なかなか具体的な体験談みたいのをお知らせするチャンスがない。 これはそういう意味では貴重なレポートなので、かなり「自慢記事」っぽくて照れますが、えいっ!と。
解説を加えたり、長いレポートなのでいくつかに分割したり、前後関係や、えとじやが具体的にどういうプロセスでお手伝いしたかを書き加えたり、など、実際やってみたのですが、結局、元の文章の良さを削ぐだけにしかならないことがわかり。
そのまま出しちゃえ!
少しだけ、文脈を整理しておきます。
起業以来お世話になっているM川さん、実は本業は旦那さんとふたりで大学進学塾をされています。 そのM川さんが、「どんな塾なのか説明して、と言われるといつもうまく答えられない」、「これからどうしていったらいいのか迷うことがある」とおっしゃっていたので、おしかけ・押し売りでターゲットとエクイティーを策定しました。
Y川塾頭、M川さん、卒塾生、卒塾生の親御さんなどにインタビューをし、また、授業を見学させていただいて、あとは、Y川・M川夫妻と議論しながら書きあげました。 (在塾生へのインタビューは受験生なので控えました。 無事受験を終えたら、聞きに行こうかな、と思ってます。)
では、Y川・M川ご夫妻からいただいたレポートです。
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私たちは、2010年6月に小さな塾を立ち上げました。
最初にやったことは、6万枚のチラシを自分たちの手で配ることでした。 芦屋、西宮、武庫之荘、夙川、宝塚、小林を2周しました。
でも、電話は一本もかかってきませんでした。一本も。
まあでも、これはこれで満足して、なんていうか「頑張ったねー」っていう感じでした。
まあ、最初は生徒もいませんでしたし、毎日チラシを折って、車で出かけていって、ポスティングするということしか、本当にやることがなかったのです。
最初の生徒は口コミでした。 塾頭の昔の教え子が連れて来てくれました。 すごくうれしくて、最初にいただいたお月謝は今も神棚に供えてあります。
しかしそうなると、朝から晩までのやっていたポスティングはできなくなりました。 じゃあ新聞織り込みでもするかというと、なんか違うなという話になりました。 なにせ、6万枚配布して一本も電話がありませんでしたから。 チラシのメッセージが悪かったのかな?とは思いましたが、何が悪いのか、どうしたらいいのかは分からない。
そうこうするうちに何となく生徒が増え、忙しくなりました。
結局その「どうしたら??」は解決したわけではなく、気にはなるけどちょっと置いておく、という状態になりました。
そうしていたら、その問題がある日、再度勃発しました。
塾は、年度末に一気に生徒が減ります。 私たちの塾もちょうどその時、生徒がなかなか増えない状態が続いていて、もしかしたらこのまま駄目になるんじゃないか…、と思ったくらいでした。
そして…自分たちの方針に合わない生徒をとってしまったのです。 これは後々まで、禍根を残すことになりました。 お互い、ハッピーじゃない状態で契約を結んでしまったので。
商売をしていて本当に思うのは、いい加減に判断した事、ほっておいた事の「ツケ」は必ず後で払わされるということです。 商売の神様は甘くないけど愛情深いなと思います。 ほら、だめだったでしょ?と言われている感じがします。 「あれ、おかしいな?いいのかな?」と感じたとしたら、その感覚は正しいのです。
結局、その問題は一応一段落したのですが、その後には「私たちはどうするべきだったか?」という想いが残りました。
サラリーマンだったときは、「やればやるほどいい」と思っていました。
やるべきことをやるべきときにやる、というのは、施策をたくさんあげてそれを片端しからやるということだと思っていたところがあったし、とにかくお客さんが1人でも多ければいい、1円でも多く儲かればいいっていう考え方が強かったと思います(自分では、当時から仕事は量より質だと思ってはいましたが、本質的なところではあまり分かっていなかったと思います)。
でもこの出来事で、それは違うな、と実感しました。 自分たちが納得しないでやったことには、不必要なコストがかかってしまう。 何よりも、やらなければ良かったという後悔が残り、自分たちのやり方はこれでいいのだろうかという迷いや不安が残ってしまう。 それがその後の私たちの感度を鈍らせ、行動を迷わせることになってしまう。
やらないほうがいいときもあるのだ、と。
じゃあ、その判断基準はどこにあるのか?…そこにいつも思考を至らしめようとするのですが、こたえがするっと逃げてしまうのです。 自分たちだけではそこには辿り着けない。 そういう感覚がずっとしていました。
私の場合は、夫(塾頭)と一緒に仕事をやっているのですが、今思うと塾頭は「くどくど説明しなくてもわかるでしょ」というモードだったんですよね。 これは、夫婦で仕事をやっている人だけの悩みではなく、しごとの中心人物が職人気質だったりすると結構あることなのではないか、と思います。
別に本人も悪気があってそういうことをしているのではなく、言葉を尽くして説明すればするほど大事なことが伝わらない、という想いがあるのではないかと思います。 つまり、言葉にならないことも大事だという感覚が強いんですよね。 私もそういうところは理解できるので、難しいなと思うところがありました。
本当にやりたいことは、人の心の奥底にあって、まわりの人からは見えにくい。 もしくは、人と人の間にあって、ふわふわしていて掴みにくい。 そんな感じでしょうか。 必死になると余計に見えなくなるのです。
えとじやさんには、その見えにくいもの、ふわふわしたものを、きゅっと掴んでじりじりっと引き出していただきました。
えとじやさんから「私たちがやったことを言語化してね(つまりこのレポートを書いてね)」と随分前に言われていたのですが、この時期になってしまいました。 断じて言いますが(!)、ずっとほったらかしにしていたわけではないんです。 ちょっと離れて見てみたかったのです。 そうすると、もっとはっきり分かると思ったのでした。 自分たちでしごとをするようになって感じたのですが、後々に影響があるような大事なことというのは、そのときはとてもさりげないことであったり、とても言語化しにくいことであったりします。 でも、それがあるから今があるということは、後になってよりはっきりと、強烈に分かります。
えとじやさんのやって下さったことは、そういうことだったと思います。
塾頭は、えとじやさんには、内部の目と外部の目があると言います。 話を聞いてくれる時の立ち位置は、自分たちに寄り添ってくれている。 一方で、何かを言ってくれるときは客観的で、外から見たときにどう見えるかということを伝えてくれる。 その両方を絶妙なバランスで持っているプロだ…と思ったそうです。
確かに、(エクイティーとターゲットを言語化して)おかげさまで、何をやるべきか、何をやらないべきか、が明確になりました。
例えば今は自信をもって、チラシはうたないと決めることができています。 私たちにとって、ブログが唯一の宣伝媒体です。 ブログでこそ、やるべきことが伝わると思うようになりました。 今まではそれでも、「チラシ、うったほうがいいのかなぁ」とか思ったことも多々ありましたが、今は「うたなくていいんだ」と思うようになりました。 まあ、チラシはあくまでもやり方なので、何か私たちの想いをのせられる紙媒体があるならやると思いますが。
えとじやさんが具体的に何をどうやって掴み出してくれたかというのは、正直に言って、私たちにもよく分からないところです。 それがプロの仕事なのだと思います。
でも、エクイティーを決めることでできるようになったことは沢山あります。
お客さんが塾を見学に来たときに、まずはじっくりとお話を「聞く」ことができるようになりました。
今までは、これを伝えなきゃ、あれを伝えなきゃと思っていたのですが、そういった焦りがなくなりました。 これとこれだけ伝えることができたら、あとは大丈夫、というゆったり感が出ました。 これは、生徒や保護者にとっても大事なことだと思います。
今までは、合う生徒、合わない生徒が分かりませんでした。
判断基準がなかったのですね。 結果、とにかく一度入塾してもらわないと分からない、となっていました。 それがリスクに繋がっていたのですが、そういうことがなくなりました。 これはちょっとうちの塾には合わないだろうなという生徒や保護者には、「もう一度考えていただいたほうがいいと思います」と、はっきりお伝えすることができるようになりました。 これは、私たちにとってとても大事なことです。 方針に合わない生徒は、後でクレームになったり、関係がこじれたりします。 それが逆口コミになると死活問題です。 また、私たちの時間がとられるのは何よりも在塾生にとって大きなマイナスです。
授業の質も格段に上がったと思います。
えとじやさんが「学び尽くす」というコンセプトを引っ張りだしてくださったのですが、これは、特に私の指導方法を大きく変えました。 塾頭がやっている授業内容と、私が担当している授業の内容について、生徒が違和感を感じることは少なくなったと思います。 つまり、私がスキルアップしたのです!! 塾頭は生徒の偏差値を10も15も、さらっと伸ばすのですが、一方で本当に職人肌なので、自分で自分の授業を「当たり前のことをやっているだけ」と言うのみでした。 私も何度も(というかもう何年も)塾頭の授業を見ているのですが、何がどうなって生徒を伸ばすのかがあまり分かりませんでした。 それが、えとじやさんの一言で納得できたのです。 たった一言で人のスキルを大幅に伸ばすなんて・・・脱帽です。
今は、保護者の方との定期的なつながりを、意識して持つようにしています。
卒塾生の保護者の方とは、お茶会をしています。 在塾生の保護者の方には、季節ごとに塾生の様子を一言書いたはがきを送り、定期的に電話をするようになりました。 それによって、それぞれの保護者と良い距離感が保てるようになり、保護者の皆さんが非常に協力的になりました。 こういった取り組みは、今までもアイデア自体はありましたが、方針として統一されているのかどうかという不安があり、なかなか出来なかったのですが、今は自分たちの中で整理できた上でできているので、企画する私たちも、何より保護者の方にとっても、「気持ちのよい」ものになっていると思います。
そうやって考えると、今までは、さぐりさぐりで物事にあたっていたのが、今は、ああ、これってこういうことだよね、と立ち戻れる場所ができたという感じです。
複数の人たちでしごとを営んでいくときにそれはとても大事なことだと思います。 どれだけ長い時間コミュニケーションをとっていても、見えていないところ、分かりあえていないところがあって当然だと思います。 それを解決するということを自分たちだけでやるのは、ちょっと無理だっただろうな、と思います。
とは言っても、私たちのしごとはまだ世の中に出たばかり。 えとじやさんにいただいた多くのヒントをもとに、しっかり育てたいと思います。 厚かましいですが、今後ともよろしくお願い致します。
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エクイティーステートメント、なんて、大きな会社の大きなブランドがマスマーケティングをやるために使うツール、っていう印象が強いですが、実はそうではなく、ビジネスの大小やマーケティングの規模に関わらず、「ブランド」=一貫したこだわりを持って(企業)活動を行うところなら、どこでも役に立つものだということです。 しかも、こういう風にきっちり理解し、実践に活かしていただけると、コンサル冥利に尽きるってもんです。
野暮とは知りながら、解説を加えてしまうと、
Ø おもい・こだわり・信念なども含めて、言語化することの重要さ
Ø 戦略を決める、というのは、やらないことを決めること
Ø ブランドとは、作り手のおもいと使っている人のおもいのあいだに構築されるもの
Ø エクイティーを決めたら、それにしたがって行動していくこと
Ø えとじやさんの素晴らしさ
がよくわかりますね~。
・・・・失礼しました。
M川さん、ありがとうございました。 また、しばらく経ったら、エクイティーのレビュー、しましょう。
お。