~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

えとじや、お。です。

ここのところブログの更新が滞ってしまって、

(少しはいらっしゃるであろう)楽しみにしていただいている方には

たいへん申し訳なく思っています。

さて、本日は、そのあたりも含めて、お知らせ。

このたび、えとじやブログにライターを迎えました。

れ。(渡辺 さりな)です。

salena_prof3R 

大学でマーケティングの研究をするかたわら、

えとじやブログに記事を書いてもらうことになりました。

ちょっとひねくれすぎ、と、評判の(?)私の記事や、

リサーチの分野に突っ込みがちなK。の記事にはない、

わかりやすくて、なるほどな内容・トピックを提供できれば、と思っています。

ということで、おそらくシリーズになるであろう「今さら聞けない」シリーズ第1弾は、

ど~~んとブランドってそもそも何? からスタートです。

お楽しみくださいませ。

株式会社えとじや お。(岡本 晋介)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


れブランドエクイティブランド、ブランディング、ブランドイメージ、ブランド価値、ブランド資産…。

巷にはブランドについての用語がたくさんありますが、ここではえとじやの観点で「ブランド」やそれにまつわることばたちについて整理してみます。


まず「ブランド」とは?

辞書的な意味で言えば、製造者やギルドを示すためにつけられた刻印、商標。 ただしそれは19世紀のヨーロッパの話。

マーケティングの重要な手法としてのブランドとは、企業の「売りたい」きもちとお客さんの「買いたい」きもちを触発してつなげるもの、媒介といえます。

蛇口をひねれば出てくる水を、どうして100円で買いたいと思わせられるか? 「売りたい」きもちが結晶していろはすになり、いろはすが「買いたい」きもちを喚起してはじめて、いろはすはお客さんにとっても企業にとってもブランドとなります。

つまりブランドは、企業側が一方的にブランドだと決めつけてもお客さんに受け入れられなければブランドにはならない。 有形な存在ではなく、ブランドはお客さんの知覚上に存在する無形のものなのです。


ブランドを構築するための企業活動を「ブランドマネジメント」といいます。 どんなブランドをお客さんの知覚に構築したいかの意思決定は、ブランドマネジメントにおいて不可欠なステップです。

企業の活動がブランドマネジメントを軸に、ヴァリューチェーンを横断的に組織されている場合は、それを指して「ブランドマネジメント制」と言います。 (ブランドマネジメントをしている、ということと、ブランドマネジメント制の組織になっている、ということは、実はイコールではない、と、これも話すと長くなるのでまたいつか。)

その際に、企業側で管理するためのブランドという意味でブランドのことをブランドエクイティとかブランドアイデンティティとか呼んだりします。 それらの言葉の定義とかを話し始めるとややこしいし、企業や学者によって名前が違ったりもするので、えとじやでは、まとめて「ブランドエクイティ」と呼んでいます。


では、なぜブランドに「エクイティ(資産)」という言葉を付け加えるのか?

お客さんの知覚上に構築された「ブランド」は一定期間記憶に残りますし、追加的にブランドに付随する情報・要素を蓄積してもらうこともできます。 つまり、ブランドの、企業とお客さんの関係を取り持つ媒介となり利益を生むものという性格を考えると、企業にとっては資産といえるわけです。 利益を生むために社員を働かせる場所のための不動産資産、利益を出す商品を製造するための設備資産とおなじように、ブランドも企業にとって資産だという観点から、ブランドエクイティと名づけられました。 ということで、ブランド資産はブランドエクイティの後ろだけを日本語訳した用語となり、意味することは同じなわけです。


つぎに、「ブランドエクイティ」にはなにが含まれているのか、ですが、ブランドの顧客に対してそのブランドがどんな価値を提供できるのか(ブランド価値)が言葉で書かれています。 優れたブランドエクイティは、お客さんのきもちの琴線に触れるブランド価値を含んでいます。 「買いたい」・「信頼している」どころか「そのブランドがないと自分の生活じゃないみたい」・「無人島にもそのブランドだけはもっていく」・「愛している」とまでお客さんに思わせることができれば、マーケターにとっては涙が出るほどうれしいわけですね。



と、ここでよく聞かれる質問。

「ブランドエクイティは、お客さんに見せたり知らせたり、リサーチで評価してもらったりするんですよね?」

この質問に対する答えに、ブランドエクイティとは何なのか、の重要なヒントが隠されていると思うので、最後にこのお話しをします。


実は、せっかく苦労して作ったブランドエクイティを、そのまま商品コンセプトや商品紹介に掲載することは少ないんです。 あくまで、企業・マーケターが、長期にわたって築かれてきた・築いていきたい戦略的な意図・要素をまとめたビジネス文書なんです。

でも、スローガンのようなものとしてブランドエクイティを提示した方がより興味を持ってもらえるのではないか、そしてそれに共感して、お客さんに商品を買ってもらって使ってもらって感動を与えることができたなら、その商品がお客さんの中で、唯一無二のブランドとして信頼関係が築けるのではないか、というご質問をいただきます。

答えは、「そうすることが最適であれば、そうしてもいいが、あまりそういうことはしない」です。


ブランドエクイティについてもっとよく理解するために、なぜ、ブランドエクイティを直接お客さんに伝えないのかについて考えてみましょう。


その理由はおおきく二つあります。ちなみに、ふたつめの理由のほうがブランドエクイティの本質的な性格を突いているのではないかと思っています。


1) お客さんがお金を払って買うのはあくまでも商品・ベネフィット

たとえブランドエクイティが強い商品であっても、お客さんの立場に立って考えれば、お金を払って買うのは商品とそれによって得られる具体的な価値(ベネフィット)であり、漠然としたブランドに対してのみ身銭を切っているとは“思いたくない”ものです。

それなのに会社からのコミュニケーションがブランドに関するものばかりで商品の説明よりも多いと、商品そのものの魅力が伝わってこないのではないでしょうか。 最終的には、商品に対して魅力を感じて代金を支払うので、ブランドはあくまでも商品の魅力をより際立させるための脇役、とするのが効果的です。

たとえば、ルイヴィトンのバッグを売るときに、職人がひとつひとつ手作りで、最高級の羊革を使って仕上げたバッグです、という説明はどうでしょう? ルイヴィトンのバッグがなぜあんなに値段が高いのか、ほとんどの人は原価よりもブランドにお金を払っているとわかっていても、バッグに関しての上の説明のようなことを聞きたいのではないでしょうか。 ルイヴィトンは旅行鞄から始まった、伝統あるフランスの高級ブランドです、というブランドエクイティの説明は、「職人がひとつひとつ・・・バッグです」というバッグの説明があってこそ、より品質に納得感を与えるメッセージになります。


2) お客さんの立場に立つと、必ずしもブランドエクイティを言われて買いたいとおもわない。

ブランドエクイティの内容によっては、お客さんがそれを聞いても喜んでもらえない場合もあります。

たとえばブランドエクイティの教科書には頻出する、ロレックスのブランドエクイティですが、その一部に「お互いが上流社会の一員と認め合う」という表現があります。 それを用いて、ロレックスのカタログに「ロレックスとお客様は、上流社会の一員と認め合う信頼の絆で結ばれます」といったような表現があったらどうでしょうか。

ブランドエクイティは、ターゲット消費者の価値観にまで踏み込んだブランドの本質を表すものです。 本音を突いているブランドエクイティこそ良いブランドエクイティなので、お客さんの心の琴線を揺さぶるときも多い反面、表立って言われると認めたくないコンプレックスや自尊心を刺激することもあります。 (本音、ってそういうことですよね。 自分で言うのは許せるけど、他人に言われるとむっとする。)

 

えとじや店主によるセミナーでは、男性用・女性用問わず、シャンプーや化粧品、かみそり製品といったビューティケア製品について話すことがありますが、「なぜ人はキレイになりたいのか?」という本質的な問いと向き合うことがビューティケアブランドの宿命です。 そこには、異性にモテたいから(しかも不特定多数であればサイコー)、自分が常に主役でいたい(見た目がいいだけで絶対得する)、鏡の前ですっぴんになった私が本当の私(いたわってあげれば必ず応えてくれる、肌だけは裏切らない)といった、一切キレイ事を取り払った生身の人間が映し出されます。 そんな弱さや喜怒哀楽のまざった人の本音に、ブランドが向き合えていればいるほど、そんな「ひとの大切な気持ち」を簡単には外に言えないと思いませんか?


れ。