You get what you deserve to get.”

「あなたはあなたの身の丈に合ったものしか手に入れることはできない」

外部に仕事を頼んでもいいものがなかなか出てこないのは、ほとんどの場合、頼んでいる自分の指示や期待がはっきりしていなかったことが最大の原因である。

では、それを避けるために何をすればいいのか。

第1回の記事では、そもそもなぜ他人に頼むのかを考えてみては、と、頼む前に依頼者が整理して決めておくべきこと、のふたつを書きました。

第2回は、相手に発注するときに相手に明確な方向と「やる気」を与えるようにしましょう、について書きました。

実は、これで、ほぼ終了で、最後のひとつは、多くのみなさんにとって、ちょっと過激すぎるか、あるいは

「そりゃわかるけど、自分ではどうしようもないよ」かも知れません。

それでも、そこには何らかの示唆なりインサイトなりがあると思いますので、書いてみます。

「ふ~ん」くらいのつもりで読んでください。


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コンペ4.コンペなんてやめてしまえ~。

(私はコンペが嫌いです。 百害あって一利くらいしかない、と思ってます。 弊社はコンペのお仕事をお断りしています。 そんな人が、なぜどのようにコンペが嫌いかを書いているので、とっても偏った意見です。 ご注意ください。

その百害について語ろうとすると、またしても長~い記事になってしまうし、このシリーズの主旨からも外れるので、ここでは、「クライアントが受注者にいい提案を出してもらう」ことに関連する範囲で書きます。)

まず、第1に・・・。

あなたがそうであるように、相手も、失敗から多くを学びます。 広告会社のクリエーターも、あなたの会社のマーケティングの担当者も、Webの会社のデザイナーも、あなたの会社の宣伝メディア担当も、チラシのコピーライターも。

しかし、コンペをやると、その多くを学べるはずの失敗の経験が積み重ならなくなります。

失敗を目の当たりにした受注者は、次の仕事が来なくなるであろうことを予測しているので、「対処」はしようとしますが、「次のために深く学ぼう」という動機が高くなりません。

失敗という、最大の学びのチャンスを、みすみす逃してしまうわけです。

しかも、発注者も、真の原因を探るよりも受注者のせいにしたほうが、早いし気楽なので、そのチャンスを逃します。

これは、ブランド作りのマーケティングのように、じっくりと時間をかけてやらなければならないものの場合、致命的なロスになります。 だいたい、ブランドやそのお客さんについて、深い理解と洞察を有するなんてのは、半年一年でできるものではないですし。

「なんか、ぱっとしなかったね。 あそこは、だめだ。 次! 次の方、どうぞ~。」

そうして、またあなたは、「一緒に失敗し、それを身にしみて感じ、ともに考えてくれるパートナー」を失うわけです。

また、そもそも、受注できなかった会社にとっては、「失敗」=「失注」であって、マーケットでの結果ではないわけです。

これが、次のポイントに関係してきます。

コンペに勝つ、ということは、「発注の担当者・決定権者に気に入ってもらえる」ことと同義です。

あなたが、課題と戦略の整理が完ぺきで、それを誤解無く伝えることができていて、判断の際の基準もその課題と戦略のみに立脚して行うことができるひとなら大丈夫です。

が、なかなかそんなひと、いないですよね。 少なくとも、私は会ったことはありません。

えてして、発注者は、自分のビジネスの課題なので、視野が狭くなってしまっていたり、熱意という名の思いこみに縛られていたりします。 (おかげで、弊社はビジネスをさせていただける!)

そんなとき、課題への取り組みの中で、受注側が、当面の課題や問題のうしろにある、より大きな課題を見つけることは、実はよくあることです。

また、当然、受発注どちらも、最終のお客様を見ながら仕事しないといけないわけです。

ところが、コンペになると、不思議なくらい、「そういうのは、クライアントも耳が痛いからね~。 わざわざケンカ売って嫌われても仕方ないから、やめておこう。 見なかったことにしよう。」となるわけです。

(市場で売れるかどうか、知ったこっちゃない。 ともかく、コンペで目立って、気に入ってもらって、採用されてなんぼだから。)

いつも、みんながそうだ、ということではないのですが、そういう気持ちが常に働いている、というのは、知っておいていいでしょう。

そうして、あなたは、「お客さんが本当に欲しがっているものは、実はこれかも知れません。 ぜひ、一緒に失敗してみましょう!」という気概のあるイノベーターと出会うチャンスを逸しているのです。

最後のポイントは、ちょっと笑ってしまうようなことなんですが、事実なので。

コンペのオリエンに行ってきた担当者が会社に戻ってきて、メンバーを集めて会議をします。 そういうのに参加するチャンスが何度もあるのですが、いつも同じ会話になります。

この指示の意図はなんですか? これとこれの優先順位は? 実はこれが本来の課題じゃないんですか? 前回の成功・失敗の要因を、クライアントは何だと考えているんですか? このプロジェクトの次にはどんな手を打つ予定があるんですが?

というような質問をするわけですが、その答えはいつも「さ~、わかりません。」です。

では、(次からは)その質問をしてきてください、と依頼すると、

「そんな、競合会社が一緒にいるところで聞いたら、相手に聞かれてしまうから、相手に有益な情報を与えてしまう。」

「そんな、競合会社が一緒にいるところで聞いて、しょうもない質問だったら笑われる。」

「そんな、オリエンで質問したら、クライアントに、生意気とか、ばかとか思われる。」

「あとで質問しても、クライアントに、競合会社間で情報が公平にならないので、質問には答えられない、と言われる。」

なんだ? おまえら、高校生がクイズ番組のオーディションかなんかに出てるのか? と思いつつ、しかし、確かに心理としてはわかります。

(で、ちなみに、「優秀な営業」さんは、「じゃ、今度、聞いてみるよ、それとなく。」と、「さぐり」を入れにいくわけです・・・、わざわざ、こっそり。)

さて、どうですか? たいして質問も出てこない大きなオリエンを仕切っている、発注者のあなた、自分が裸の王様みたいな気がしてきませんか?

少なくとも、第3者が、当事者でないからこそ気が付くポイントを突いてくれることで、さらに議論を深めるチャンスを逃しているのは、確実です。

それでも、きっとコンペはやめられないんでしょうね~、多くの場合。 (ダイエットとか麻薬とかと一緒だな。)

でも、上に書いたようなことが、コンペの陰で起こっていることを知っているだけで、あなたの発注方法はかなり良くなると思いますよ。


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結局、3回にもわたって長々と書いてしまいました。

おつきあいいただいた方、すいません、ありがとうございました。


世の中の多くの仕事は、(社内であっても)、受発注の関係の中でできあがっていくものです。

そこには、きっと同じようなインサイトがあるんだろうし、また、同じように、情報と指示と判断の明確さが要求されているんだと思います。 さらには、「自分ひとりで考えているより、他人の意見を聞いた方が、いい解決策にたどりつける」はずです。

ならば、ちょっとでも、「うまく他人にものを頼めるひと」=「よりより結果を手にするに値するひと」になれるように努力してみる、ってことですね。
You get what you deserve to get.”

お。