"You get what you deserve to get."
「なんで、うちの代理店は、いいアイディアを持って来ないのだろう?」
「どうも、ここのデザイン会社は、言われたこともわかってないのか、見当違いのものが多いね。」
「仕方ない、また、コンペだな、こりゃ。 あそこは、だめだ。」
もし、あなたがそんな風に思うことがあるとすれば、それはたいていあなたのせいですよ。
と、偉そうに書きだしてしまった前回の記事の続きです。
1. そもそも、なぜ、他人に頼むのか。
2. 丸投げしない=あなたは、あなたの役割を果たす。
3. (オリエン、ではなく)ブリーフ。 その役目。
4. コンペなんてやめてしまえ~。
どうすればいいのか、についての、私なりのヒントを、前回は、1・2について、書きましたので、今回は3から始めましょう。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3. (オリエン、ではなく)ブリーフ。 その役目。
あなたの役割=「課題をはっきりさせる」が終わったら、いよいよ広告会社やデザイン会社、あるいはプロモーション会社など受注側の担当の方に来てもらって、解決策の開発の発注をする段階に入ります。
この時、どのような情報をどのように伝えると、相手が全力でいいものを出そうとしてくれるのか。
すごく簡単に言ってしまうと、基準はふたつしかありません。
明確・簡潔さとインスピレーションです。
そして、順番も決まってて、まず簡潔・明確であること。 そのうえ、インスピレーションを与えていれば素晴らしい。 明確さが必須条件。
明確さ・簡潔さは、実は2の項目=課題の明確さのことなので、それができていれば、あとはそれをわかりやすく誤解のないように伝えるだけです。
注意すべき点があるとすれば、課題が複数ある場合、それぞれの優先順位がはっきりしているか、ですね。 「どっちも大事・全部大切」はだめです。
(クリエーターは、ひとつに絞ってくれ、といいますが、それは正直言って理想論、あるいは、かなりの上級編です。 やけどしますので、無理しないように。)
実際には、解決しないといけない問題が複数あったり、伝えないといけないことが複数あるのは、仕方ないと思います。 でも、クライアントが明確にしておくべきは、課題が多すぎないか、と、その優先順位です。 それがはっきりしていれば、受注者は、「解決の糸口」をどこに求めればいいかがわかるからです。
ときどき耳にするのが、「そんなことを言うと、彼らは、優先事項だけを解決するアイディアを持ってきて、他のを無視・軽視するかもしれないから心配だ」という言葉。
しかし、ちょっと考えてみてください。 それって、相手を信用してない、ってことですよね? 意地悪な見方をすれば、相手を「ちゃんと理解できない、バカで、無責任なひと」だと思っているともとれません? その気持ち、たぶん、伝わっちゃってますよ。
相手はプロだし、ビジネスパートナーなので、「無視」なんかするわけないじゃないですか。
「でも、実際に・・・・」と思っているあなた、もしかすると、それは以前から「相手を信用していない」ことが伝わってしまっていて、たとえば相手が「あのクライアントは、あれもこれもって言うから、最初は穴だらけのものを持っていって、一杯しゃべらせようか」と思っていたりするのかも知れませんよ。
まさに、「You get what you deserve to get.」です。
さて、簡潔で明確、それができたら、80点。 それで前に進んでもいいですが、欲張りなあなたは、さらに「インスピレーションを与える」をトライしてみてもいいでしょう。
インスピレーションを与える=クリエーターをやる気にさせ、発想の手助けをする、ということですが、そもそも彼らの発想を具体的に手伝うのはあなたの仕事ではなく、それは先方の社内の方々の仕事ですので、無理しなくていいんです。
あなたがやるべきことは、究極的には「この課題、なんとかしてあげたい」とか「このひとの夢を実現してあげたい」とか「これを通じて、世の中にインパクトを与えたい=人々の考えや行動を変えさせてみたい」と思ってもらうことです。
あなたしか知らない、でも、受注者が知りたい情報を、「だから、あなたの助けが必要なんです」というメッセージとともに伝えるということ。
プロジェクトに関する、あなたの夢を語ってあげてください。
この場合の「夢」は、DreamというよりはVisionでしょうか。
(あなたが出世したい、とか、¥XX億もうけたい、とかじゃなくて、)課題が解決されることによってもたらされる将来像や社会や会社に対するインパクトについて、しっかり語りましょう。 受注側の「やる気」を左右するのは、金額の大きさや課題の簡単さや、目立つかどうか、だけではないんです。 特にクリエーターは。
夢が常に壮大でなければならないわけでもありません。 ましてや嘘をつく必要もありません。
現実的な、しかし、達成したいことと、その結果。
あるいは、あなたが本当に困っていることでいいんです。
それを正直に話すことです。
「この結果とすて、いままでのXXXに対する思いこみを変えさせるきっかけを作りたい。」
「1年後、街を歩く多くのXXXがこれを持って歩いているところを目にしたい。」
「このままだと競合にやられっぱなしだけど、製品改良は2年先まで来ない。 なんとかここで2年間ビジネスをもちこたえたいので助けて欲しい。」
この他にも、「あなたしか知らない、でも、受注者が知りたい情報」はあるんですが、今回の「ヒント」はここまでにして、そのかわり、「これはやめたほうがいいよ」について、少し書いてみましょう。
最初に、「(オリエン、ではなく)ブリーフ」と書きました。
別にオリエンをしてはいけないとか、オリエンという言葉を使ってはいけないという意味ではないんです。 つまらないオリエンをするな、と言いたかっただけです。
私の勝手なイメージなんでしょうが、オリエンと聞かされて想像するのは、自社の自慢話やスペックや機能の説明がだらだらと続くものや、「そこまで決まってるんなら、自社で作ればいいんじゃない?」というような細か~~~い指示が書いてあるものや、プロジェクトが自社にとってどれほど重要なものかが綿々とつづられている、稟議書のコピーみたいなものや、どうでもいい競合や市場の状況がだらだらと分析されていたり・・・みたいのなんですよね。
わかるんですよ、気持ちは。 悪気があってそうしているわけではないことも。
きっと、「わからないといけないだろうから、詳しく経緯と背景と歴史と苦労を解説しなきゃ」って思っちゃうんですね。
でも、8割方「余計な情報」です。
大丈夫、あなたが苦労していることは、相手もわかってくれてますって。 すごく綿密に計画されていることも、理解してくれてますって。 あるいは、やむを得ない手だということすら。
あんまりだらだら説明すると、
(このひと、つまらなそうな人だなぁ~)とか
(おもしろいアイディア、わかってくれなさそうだなぁ~)とか
(重箱の隅をつつくタイプなのかな、プレゼンの資料は細かくしなきゃなぁ~)とか
(このひと、失敗しても自分のせいじゃないって、言いたいのかなぁ~)とか思われてしまいます。
「じゃ、無難なものを出しておこう」
「細部の辻褄があってればそれでいいよね、きっと」
「前につくったものをコピーしておこう」
「(他のクライアントの案件のほうがおもしろそうだから、そっちに時間使お!)」
やれやれ、またしてもいいものが出てこなくなるわけですね。
"You get what you deserve to get."
外資では、オリエンと言わないことが多いです。 オリエンシートのことを「ブリーフ」と呼び、オリエンのことを「ブリーフィング」と呼ぶことが多いと思います。
別に外資の言葉を使えばいい、というわけではないし、外資のオリエン=ブリーフィングが優れているわけでもない(同じように、ひどい?)。
ただ単に、「ブリーフ」という単語には「簡潔な」という意味があるので、そのほうが好きなだけです。
あるいは、オリエンテーションという言葉には「知らないひと・初心者に、注意事項をしっかり教える」みたいなニュアンスがあるような気がして。
さて、最後に少し違った角度の項目が残りました。
「4.コンペなんてやめてしまえ~。」です。
これも、私は何度か書いているし、あちこちでしゃべっていることですが、それを「いい解決策を手にするために」という観点から、たぶん、誰もまともにとりあってくれなさそうですが、書いてみますので、次回をお楽しみに。
お。