2ヶ月も更新をさぼってしまった言い訳はいろいろありますが、「戦略」について語ってみます、と大風呂敷広げてしまったのが、停滞の原因のひとつだったのは間違いありません。
申し訳ありませんでした。
その後もいろいろ考えさせられ、あんなこともこんなことも書きたい、はあるんですが、結果うまくまとめられず、今もまとまってないんですが、書いてしまうことにします。
2か月前、ゴールを決めずに走ることの無謀さ、あるいは、ビジネスやマーケティングで夢・ビジョン・ゴールを決めることの重要さについて書きました。 今日はその続き、戦略を立てることの重要性、というか、選ぶことの重要性について書いてみます。
戦略という言葉は、とても大きな言葉で、かつ、様々な局面や次元で使われるし、間違った使い方も多い。 それを包括的に語ることは私の身に余るので、あくまでマーケティングがらみ、で。
弊社は原則としてコンペを前提としたビジネスには参加しないことにしているんですが、それでもときどきお声を掛けていただいたり(断りますが)、あるいは、取引先がコンペに参加するので、その提案づくりのお手伝いをさせていただいたりします。 広告などのコミュニケーション系だったり、Webマーケティングの企画だったり、店頭施策のアイディア出しだったり、いろいろと。
そんなときに、一番驚かされるのが(納期の信じられない短さとともに - そんな時間で何しろっていうのよ?みたいな)、発注内容に戦略が無いことが多いことです。
いまいちの戦略が書かれているのならともかく、「無い」。
「弊社XXビジネスを飛躍的に伸ばすプロモーション施策を2週間後にプレゼンしてください。」
以上。
きっと他の場所に書いてあるだろうよ、いくらなんでも、と思って、資料をひっくり返してみると、ビジネスの状況がちょこっと書いてあって、予算の規模が書いてあって、プレゼン資料の納品形態と期限が書いてあって、出されたアイディアをどのように選ぶかが書いてあって・・・・。
(やっぱり、無いんだ・・・。)
あるいは、ビジネスのご相談を受けていても、多くの方がひとしきり問題(ビジネスが思ったように伸びない)について語ったあと、「で、何をしたらいいですか?」と。
では、長期的なゴールやビジョンは?と聞いても出てこない話は前回しましたが、「では、誰に何を買ってもらいたいんですか?」とお聞きすると、異口同音に、
「なるべく多くのお客様に、弊社の製品を愛していただきたいと思います」と。
「で、私に何をしろと?」
「なるべく早く、飛躍的にビジネスを伸ばすプランをください。」
(やれやれ・・・。)
セミナーなどでおうかがいする場合も、「ぜひ、うちの社員にマーケティングを教えていただきたい!」と依頼を受けるわけですが、セミナーの会場で、「では、御社のブランドの戦略を教えてください」と問いかけると、
「一日でも早く、より多くの新規顧客を獲得しながら、既存顧客の購入頻度を上げ、1回あたりの購入価格を引き上げるよう努力することです。」
(お金持ちなんですね、せいぜいがんばってください。)
もちろんちょっと誇張しているところもありますが、どうやら、「予算とプラン」という概念は存在していても、「ビジョンと戦略」という考え方は一般的ではない、ということのようですね。 困ってらっしゃるから、うちにいらっしゃるわけなので、なんとかして差し上げたいのですが、ときどき「それは、ちょっと無理・・・」ということがあって、そういうのは大抵の場合、このケースです。
(ちなみに、「正しいビジョンと、実現可能な優れた戦略を作ってほしい」という依頼は、問題ないんですよ、お受けします。)
誰に買ってもらうのか。 すなわち、誰には買ってもらわなくていいのか、という選択。 これは、マーケティングをやっていく上で避けて通れない戦略項目です。 これに対して、「ともかくひとりでも多くのお客様に」という答えのなんと多いことか・・・。 あるいは、ターゲットを絞る議論をすると、十中八九出てくる「もう少し広いターゲットにアピールすべきではないか?」という根拠とセンスのない不安のなんと多いことか。
何を買ってもらうのか。 すなわち、買ってもらう理由を選択すること。 これも、マーケティングのいろはだと思うのですが、ここでも、「様々なニーズにお応えできるということを伝えましょう」という発想のなんと多いことか。 あるいは、「競合がこうすると言っているので、同じことをしましょう」という主体性とセンスのない議論。
どのように買ってもらうのか。 すなわち、初めて買ってもらうのか、すでに買ったことのあるお客さんに買い続けてもらうのか、など。 別に難しいマーケティングの理論なんかの力を借りなくても、生活レベルの感覚で理解できる選択肢だと思うのですが、「全部」という子供じみた発想、あるいは「どれでもいいよ」という無責任。
こういう発注を業界用語で「丸投げ」といいます。
考える=選ぶことを放棄して、ともかく誰かに考えさせよう、何かいいものが出てくるかも知れないし、出てこなかったら会社には「出てこなかった」って言えばいいんだから。
選ぶことが怖いんでしょうね。 選択する、ということは、やることを決めること、すなわち、やらないことを決めることなので、勇気が必要です。 そして、それはダイレクトにビジネスの結果を決定するので、ビジネスの主体=クライアント・発注者のリスクに他ならず、よって、クライアントが決めるべきことなんです。 それを丸投げしちゃいかんのですね。
逆に言えば、戦略を決める=選択する、戦略を策定する=中長期的に努力すべき方向・エリアを発想する、というのは、マーケティングの醍醐味であり、創造力を発揮すべき一番楽しいところです。 ぜひ、他人にやらせるのではなく、自分でやりましょう。 もったいないですよ。
「ともかく何でもいいから走れ」と言われても、誰もまじめに走りはしない。
42.195kmを走ろう。
こう決めることで、がむしゃらに全速力でダッシュするのではなく、42.195km走り抜ける走法を選ぶことができる。 そうすれば、自分をどのように鍛えれば、それが可能になるのか、考えることができ、実践に移すことができる。 少しがんばれば3時間で走ることも可能だろう、では、それを目標にトレーニングしよう。 ゴールを設定することの大切さです。
いや、実は1時間ちょっとで走れるかも知れません。
設定されたゴールに対して、どのようなリソースと方法を当てはめればいいかを考えればいいわけですから、422人の短距離選手を集めてリレーすれば、おそらく1時間10分ほどで走破できるはずです。 もちろん、こちらの戦略にはお金やリソース、ネットワークなどが必要です。 自分で走らない、お金をかける、などの選択をすれば、達成可能です。 もちろん、それがルールを破っていないか、ビジネスとして意味のある投資かどうかを確認しないといけませんが、これもゴールを設定することで生まれる戦略のひとつであることは確かです。
ともかく全力で走れるだけ走れ、では生まれない発想です。
次回は(って、今度はすぐ書きますよ)、課題を見つけることについて書いてこのシリーズを終えますね。
お。