だいまつここにきて急に見なくなりました? あの「だいまつみらう~す」のコマーシャル。 終わったんだとすれば、ほっとしますが。

予定の放映分が終わったのか、あるいは、あまりの苦情にストップしたのか。

(そんなわけはないか。)

でも、私はすごく嫌いです。 うるさいし、意味がよくわからないし、しかも、テレビをつけていると見ないでは済まされない量が流れてるし、まさにAnnoyingというやつで。

と、Twitterとfacebookでつぶやいたら、「どうしてああいうことになっちゃうんでしょう?」という質問をいただきました。

もちろん私は内実を全く知らないので、「企業の意気込み・気合いと、莫大な予算と、それに群がる広告業界がそろうと、よくああいうことが起こります」とだけ答えておきました。

壮大な気合いの空回り。

当たらずとも遠からずだと思いますが。

規模はあんなに大きくありませんが、私自身も似たような経験は多々あります。 売り手の気合いの空回り。 「あ~あ、やっちゃた・・・」って。

ターゲットの設定(または設定していないこと)から、製品・サービスが何をしてくれるものなのかの明確化、マーケティング上でのねらい、広告のアイディア、広告表現の手法、などなど、「あらあら」と思わざるを得ないことが盛りだくさんなんですが、それらをひとつひとつあげつらってみても仕方ないので、今日はその中からひとつだけ、マーケッターが、そのクリエイティビティーを発揮しなければならなかったのに、しなかった、できなかった、あるいは、してたのに経営陣などに無視された、ことについて少し考えてみましょう。

クリエイティビティー。 特に今、ジョブスさんの言葉や考えなどがあちこちで話題になっていて、彼の、いろいろな刺激や示唆に富んだ話を聞いていると、「あ~、でも、私は天才じゃぁないんでね・・・」とため息も出たりしますが、「そうか、そういうことでいいんだ」と勇気づけられることもあり。

マーケティングの一連の流れの中で、広告やデザイン、あるいは製品の開発などに携わる人にとってのクリエイティビティーというのは、見えたり聞こえたり、形があるものが多いので、イメージしやすいのかも知れませんが、マーケッターにとってのクリエイティビティーは少し見えづらいものがあります。

なので(か、どうかはわかりませんが)、すっ飛ばしてしまったり、忘れられてしまったり、さぼってしまったりするんじゃないでしょうか。

マーケッターがクリエイティビティーを発揮すべき場所、とは、戦略を立てること、です。

クリエイティブな戦略。

世にブルーオーシャンとか呼ばれているものは、その典型的なものでしょうね。

そこまでいかなくても、「へ~、なるほどねぇ、そういう風に考えたことはなかったけど、言われてみればその通りだよね」と、ターゲットの人たちが合点がいき、納得し、あるいは感動する戦略・コンセプト・考え方・見方を開発することこそが、マーケッターと呼ばれる、その人自身は何も生産しない、会社にとって無駄とも思われる人たちがすべき大切な仕事です。

言い換えれば、それにつながるインサイトを開発すること。

そのためには、ブランドやモノに関わるあらゆることを知っていなくてはならないでしょうが、中でも大切なもの。 それはターゲットのひとたちの生活や考え方・感じ方を熟知し、そこから「発見を紡ぎ出すこと」、変な日本語ですが、これがマーケッターの洞察力=想像力と創造力(いやん、ダジャレね)です。

「第3のエコカー=考えてみれば、電池なんか積んでなくたって、電池と燃料を積んでいる車と同じくらいの燃費を、ガソリンで達成してしまえば、それはちゃんとエコカーだよね」という発想は、それ自身、とてもクリエイティブな概念だと思います。 もしかすると、複雑な機械を満載している大きな車を作るために排出してしまう二酸化炭素の総量も含めて比較すると、少なくとも短期的には、電池と燃料、あるいは、電池だけの車たちよりエコかも知れない。

会社として、あるいは、技術者として、あるいは、社会的価値において、これは、とてもクリエイティブですよね。 そりゃあ、会社は盛り上がるわけですよ。 「私たち、すごいよね!」って。

しかし、マーケティングに関わる人は、そこで止まってしまってはいけない。

でないと、「よし、あとは、有名人使って、がんがん名前を連呼すれば、社会が買ってくれる」みたいなことになってしまうわけです。

誰に買ってもらわないといけないんだっけ? 国民? まさか・・・。

もっともっと限定された、でも、十分に大きなグループのはずです。

それが誰なのか、どんな人たちなのか、何を考え、感じて生活している人なのか、そこからどんな発見を紡ぎ出せるのか=どんなインサイトを作りだすことができるのか、そして、その人たちに「ほ~~~、そうか、そうだね」と言ってもらえる戦略・コンセプトは何なのか。

これをやっておけば、あとは周りの人たちがうまくやってくれます。

そんなことはわかってるよ、そうはいかないことがあるんだよ。 という関係者のつぶやきが聞こえてきそうですね。

きっと、このプロジェクトの、あまりの大きさ=会社の期待、の中で、例えば、よくわかってない重役がしゃしゃり出てきたり、あるいは、「もしかして、これはやっぱり『国民』が買ってくれるんじゃないの? ターゲットなんか限定したらだめだよ」というような下心が噴出したり、とか、その辺も全部ちゃんと作ってオリエンしたのに無視された、とか、いろいろあったんでしょう。 「だいまつみらう~す」以外の広告も、どれもひどいものばかりですもんね、「第3のエコカー」は。

あの会社、他の車種のコンセプトやデザイン、あるいは広告は、良くできているものが多いので、きっとちゃんとやればちゃんとできるはずですから、無関係な私がごちゃごちゃいうことではないですね、はい。

ただ、マーケティングに携わる人にとって、とてもいいレッスンだと思ったもので、つい。

失礼しました。

お。