ダル1「ついこの間まで、6カ月先の仕事をするのが当たり前、9カ月先の仕事をすると褒められてたもんですよね。」
とは、先日、ランチをご一緒していただいた際に、元の同僚T裏さんが言ったひとこと。 私とほぼ同時期に退職した、いわば同期退職のT裏さんは、すでに新しい会社で6カ月。 ひたすらのんびり専業主夫をしていた私とは違って、すでにがんがんお仕事されているようですから、もう少し聞いてみましょう。
「日ハムが日本シリーズに出る、ダルビッシュは故障で日本シリーズに出られないかもしれない、じゃぁ、応援しよう、ということになって、何かやれ、と。 でも、1週間ですよ、1週間で企画から実現まで。」
なるほど、そういうことですか、それは大変です。

結局NIKEは、直径1.8mのボールを作って、トラックに乗せて、東京から札幌まで運んで、そのボールにファンのメッセージを書き込んでもらって、札幌ドームに持っていこう、ということになったそうです。 ダル2(加えて、原宿に建設中の新しいショップの壁にもダルビッシュの写真を展開する、というのもやっているようです。) まだ、シリーズは終わっていませんが、とりあえず応援メッセージボールは無事札幌に到着、応援メッセージをぎっしり乗っけてドーム2戦目、ダルビッシュの先発に間に合ったみたいですね。
そして、応援の甲斐あって、我が巨人軍は敗北を喫してしまいました。 まぁ、明日からは再び快進撃、の予定ですが。

でも、どうして。
(どうしてジャイアンツが負けたのか、ではなく)どうして、そんなに「あわてて」イベントをやらなければならなかったのか。

それは、スポーツが「その瞬間を目撃すること」の興奮を得るためのエンターテイメントだからです。
スポーツ(観戦)の興奮が、最高潮に達するのは、まさにその瞬間であり、それを、できればライブで、少なくとも生中継で見る・聞くことが一番なんです。
そして、その「瞬間」が終わった途端、その「興奮」はものすごいスピードでその鮮度を失っていきます。
その日の夜のスポーツニュースを(たとえ結果がわかっていても)ファンは見ます。 そして、興奮を思い出したり、生で見られなかったことを悔やみながら「すごかったんだろうなぁ」とうれしがります。 鮮度は低くても、まだ興奮を味わうことができる、賞味期限。
興奮がぎりぎり保たれるのは翌朝のスポーツ紙までです。 昨日はすごかったんだよねぇ、と、友人たちと興奮を分かち合う、鮮度は落ちていても、ファンには楽しい時間ですから。 (ゲームの直後、飲み屋で話すのが一番なんですが、まぁ、毎回そうもいきませんし。)
お昼ごはんのころには、もうすっかり賞味期限切れ。
その後、プレーヤーの裏での苦労などがドキュメンタリー風にTVや雑誌で語られることがあったとしても、それは「鮮度ゆえの興奮」とは違った次元のものになってしまいます。

だから、スポーツに関わる商品やサービスをマーケティングするとき、この「瞬間を目撃する興奮」に間に合わないと効果は激減してしまうわけです。
「ダルビッシュは投げられないかもしれない、でも、投げるかもしれない、投げてほしい」
ということになったら、たとえそれがわずか1週間前でも、そこには投資しなければいけないんですね。
そういえば、かつてNIKEは、ワールドシリーズに久しぶりに出場することになったメジャーリーグチームに「おめでとう」という広告を、試合が終わったその日のうちに仕上げて夜のスポーツニュースで流した、ということを聞いたこともあります。

T裏さんに教えてもらったんですが、こういうのを「スポーツモーメント」というんだそうです。 これを逃さないのが、スポーツマーケティングの効果を飛躍的に上げる鉄則なんですね。 かつて私たちが働いていたカテゴリとは、別世界のダイナミクスです。

でも、スポーツほど極端ではないかもしれませんが、それぞれの商品・サービスのカテゴリに、特有の「モーメント」ってあるんでしょうね。 それをつかむことに成功したブランドは、ユーザーの心をつかむことに成功するんじゃないでしょうか。
あなたの商品・サービスの「XXモーメント」、探してみても面白いかもしれませんね。

さて、明日からは東京ドーム。 3連勝で、またもう一度ダルビッシュが出てくる前に、原さんを胴上げしてしまいましょう。

お。