ブランド3先週は、宣伝会議さんでやらせていただいている「ブランドマネージャー育成講座」でした。 2日間の講座で、8月と2月、年に2回やらせていただいているのですが、今回は受講者が多く、一度では入りきらなかったので、8月に2回開催しました。

受講者のみなさん、とても熱心で、がんがん質問などもしていただき、いつものことながら、私もたくさん学ばせていただきました。 みなさん、お疲れさまでした。

さて、そこでも「ブランドとは何か」、「ブランドを作り、育てていくということはどういうことなのか」について、たっぷりと語らせていただき、おそらく多くの方に、「なるほど、そういうことか、早く仕事に戻って、試してみよう!」と思っていただけたと思うのですが、講義の最後に「ほ~~~~、なるほど。 う~~~む。」という質問もいただきました。

先週は、講義が終了してから、受講生の方に、

「会社に戻って、で、結局ブランドとは何なの、って聞かれたとき、ひとことで説明するとしたら、なんて言えばいいんですか?」

というご質問をいただきました。

が~~~ん。 いやはや、これじゃぁ、講師失格ですね? だって、それを学びに2日間も来られてるんですよね、みなさん。

「で、ブランドって、ブランドマーケティングって、何なんだろう?」

結局、この質問に、私はまだちゃんと答えられていないのですね。

難しい定義とかは、きっと学者の方々に任せればいいのだろうし、もちろん、すでにちゃんとした答えがたくさんあるのですが、私がやるべきは、それを実感レベルでわかりやすく理解し、使える知識と技術に置き換えることだと思うので、その意味ではまだまだということです。 反省・・・。

私なりの答えがないわけではないんです。 ただ、実際、「ひとことで」と言われると、私もちゃんとした答えにたどりついていないのですよ。

ブランドには、ふたつの欠かせない本質的な特徴があって、それぞれに説明は用意できているんですが、それをうまくあらわす「ひとつのかたまり」にできていないんです。

ひとつは、「ブランドとは老舗である」ということ。

ブランドとは、お客様の心と頭の中にできあがっているイメージや連想や知識の総体で、その評判や信頼・愛着といったものを醸成していくことで作りだされるものなんですよね。 そのために、あらゆるマーケティング活動を通じて、継続的に、かつ、一貫したメッセージと中味を提供し続けなければならない。 で、ようやくブランドができあがる。 それって、江戸時代、あるいはそれ以前から、商売人たちがやってきたことと、本質的には同じことなんですね。

西洋の(古い響きだなぁ)理論に思ってしまいがちなブランドという概念ですが、ブランドにエクイティーとかアイデンティティーとか、戦略的構成要素とかが存在し、ブランドをあらわすシンボルやイメージがあるように、老舗にはそのこだわりや、創業者のことばや物語、家訓があり、老舗を象徴するのれんや看板や評判が存在するわけです。

ブランドとは老舗のことであり、ブランドマーケティングと言うのは老舗を3代100年かけずに作る手法のことだと考えれば、なんとなく私たちが語ることば(日本語)の実感レベルで理解できるのではないかな、と。

もうひとつの、ブランドを特徴づける概念で欠かせないのが、「ブランドは人格を持っている」ということです。

マーケティングの用語にブランドキャラクターというのがあって、似てるんですが、実際の運用を見ていると、これはそれより少し大きな概念かも知れません。

ともかく、一度名前を付けられて世の中に出てしまったら、もうそれはひとつの人格で、勝手に人格を変えることはできないんです。 (いや、できなくはないけど、難しいし莫大なお金がかかる、あるいは、誰も知らないマーケットに引っ越していちからやりなおしたりしないといけない。)

たとえ、親(開発者や売り主)であっても、人格を持っているものである以上、何をするにもその「ひと」と対話しなきゃいけないし、その「ひととなり」に合ったものしか似合わない=売れない、ということです。 親にできることは、すくすくと育っていくことを手助けすることであって、人格形成の邪魔をしたり、人格をゆがめたりすることは無理なわけです。 下手なことや無理をしても、「イメチェン」(えとじやマーケティング用語: キャラに合わないことをして、お客様に「い~たい」と思われてしまうこと)にしかならない。 イメチェンなら笑って済ませられますが、ぐれたり、家出したり、人格崩壊したら、ねぇ。

逆に、とてもとてもとてもよくある間違いなのですが、世の中には、ブランド化とは、きれいなデザインを施すことだと勘違いしているひとが、それはもうびっくりするくらいわんさかいて、それは魂のない人形にきれいな服を着せて「踊れ!」って言ってるようなもんなわけです。

それはともかく、ブランドには人格があって、ブランドマーケティングとは、その人格を尊重し、さらに成長させる手助けをすることかな、と。



このふたつを、ひとつにできるものを見つけられれば、質問いただいた「ブランドとはひとことで言うと何ですか?」の、えとじやらしい答えをご提供できるのですが・・・。

なかなか、いいのが見つからないんですよ。

「ブランドとは、老舗であり、人格を持ったものである。」

う~~ん、いまいち。

「ブランドとは、人格を持った老舗である。」

余計に、わけわからん。

まだまだ修行だな、これは。


当分、「ブランドとは老舗である」&「ブランドには人格がある」の2本立てでいきます。

(ちなみに、この話題に関しては今までも何度も書いてまして、こちらをクリックしていただくと、わらわら過去の記事が出てきます。 「夢を売らないブランドは売れない」)

お。