今日は軽~いお話し。


たぶん、半年以上前に流れていたCMだと思います。 最初に見たのは、秋ごろ、渋谷の駅前でした。

AKBの何人かが(誰って? そんな、私みたいなおっさんに、名前なんかわかるわけないでしょ!)出てきて、顔にニキビがぽちっとできて、「B」って出て、ってやつです。 タレントさんのくせにちゃんと今でもYouTubeのってますね、えらいえらい。 こちらです。 (埋め込みで再生できないうようなので、クリックしてYouTubeに飛んでください。)

これ、好きなんですよ。

いいCMだなぁ、と。

常日頃、TVに、特にCMの、「よしもと・あきもと・じゃにーずキャンセラー」が付いてればいいのに、と思っていますが、このCMは許す。

チョコラBBとハイチオールCとQPコーワゴールドと共に生きてきた私の世代にとって、「ハイチオールB」というのは、「なぜ必要なの? チョコラBBよりいいの?」って薬ですが、でも、このCM見た時は、あらら、同じような薬ならこっちだな、と思ってしまったり。 あるいは、私が10~20代だったら、こっちですね、間違いなく。


さて、薬は治したいものがあるから買います。

何を当たり前のことを、とお思いでしょう。

さらにわかりやすく言うと、「何が治るかわからない薬を買うか?」

買わないですよね。

なので、薬は、「何の、どの程度の症状を治すのか」を伝えないと売れないわけです。

しかし、この業界のコミュニケーションはかなり難しいんですね。 何より法的な規制やそれに準ずる規制が多い。 働く・効く、とは言えるけど、治るとは言えない。 登録した効能以外の効果があっても、それは言えない。

よそのブランドより効果が高いとしても、比較なんてやったら即呼び出しくらいますし、もちろん呼び出しだけでは済まない。 他の商品のこととかも、痛くない腹まで探られて、いじめられまくりますから、みなさん、とても気を遣います。

登録されている効能が「症状の緩和」だったりすることが多いので、完治するかのような表現はできません。 たとえ、完治する場合でも。

(さらに、伝えないといけない決まりも多く、「使用上の注意をよく読み、・・・」とか、あるわけです。)

以前記事にしたように、そもそも薬は「積極的に売ってはいけない」ことになっているわけで、そんなこんなで、各社、大変ご苦労をされています。

ところが、治したい症状があるから買うんだし、なんとかして、他の製品より効きそうだということを伝えたい、ということで、ことさらに症状が重そうな表現をすると、今度は見ている人に「なんかものすごくきつい薬みたいで、副作用がひどそう」とか思われたり、ひどい場合は「なんだか怖そうだから使いたくない」という非論理的な反応をされたりもします。

ニキビなどのように、それほどシリアスでない症状に対応する薬などの場合、あまりシリアスな表現をすると、逆効果の怖さがさらに強くなりますね。

(お医者さんで治しましょう、が、随分流行っていますが、いいですけど、それほど困っていない人は10割負担でお願いしますよ。 私たちの医療保険とか税金とかであなたのニキビを治すのは、ちょっと・・・。)

ということで、売り上げが、戦略的な差別化要素以上に、ネーミングや広告などのコミュニケーションといった表現的な要素(や、どれだけ大量にCMを流すかという力勝負)に大きく左右されたりします。

冒頭のハイチオールBは、ちゃんと治したい症状を伝え、それがそれほどシリアスなものでないことを(でも、できちゃった人には十分いやな問題であることを)伝え、それが解消される(方向に働く)ことを伝え、なんというブランドかを伝えることにまんまと成功しているいい例だと思います。

顔が売り物のタレントさんの顔に、たとえそれが上から描いたものとはいえ、堂々とニキビをのっけさせた事務所も代理店さんもあっぱれですね。

大好きです。

問題は、ニキビのように、わかりやすい症状の表現ができない薬の場合ですね。

この場合は、CGやアニメーションを使った表現をしたり、状況・シチュエーションで伝えたりしないといけないので、コミュニケーションが複雑になったり、時間がかかったりします。 ましてや、他より効く、と言えないので、表現の優劣による当たり外れがさらに大きくなる。 さらにマーケッター泣かせですね。 (余談ですが、こういうときによく使う手が、症状に名前を付ける、というやつです。 すでに30年くらい使われていますが、今でも健在、「エヘン虫」がその例です。 医薬品ではありませんが、「歯周病」ていうのもそうですね。)

いずれにせよ、結局は、薬である限り、「治したいものがあるから買う」の呪縛から逃れることはできないわけです。 しかも、あんまりサボってると、他のカテゴリ、機能食品だけでなく清涼飲料水に売り上げを持っていかれたりします。 (以前上げたウコンの力の記事はこちら。)

冒頭で褒めまくったハイチオールですが、こっちは見事な空振りです。

(追記: いつものことですが、あっという間にCMがYouTubeから消されてしまいました。 ハイチオールCのCMで、長澤まさみさんが泣いているCMです。 ご覧になったことありますよね? 見たことない場合はYouTubeで検索してみてください。 おそらく複数上がっていると思うので。)

いまどき、化粧品が薬かのように効能を伝えているのに、薬がこれじゃぁ話になりませんね。

薬を飲むと涙が止まるんですかね。

(意図するところはわからなくないんですが。 無理っす。)

とっても残念です。 お金もかかってるだろうに。

てことで、今度からBはハイチオール、Cはチョコラを買おうかしら、と思ったり。

お。