(えとじやは、とっても訪問調査が好きなんです。 加えて、先日のP&Gが取り上げられていたTV番組以来、何かと質問も多く、その中で「ホントにわざわざ消費者の家に行くんですか? それで何がわかるんですか? あれTV用ですよね?」といったお問い合わせも多いので、今回はK。に、どうして訪問調査がそんなに楽しいのか、ちょっと解説してもらいます。 お。)
今日もまた、洗濯用洗剤を担当するAさんのお話しです。 Aさんは相変わらず「汚れのよく落ちるスーパー洗剤」を何とかいいコンセプトにしようと頑張っています。
以前、主婦B子さんにインタビューをして、コンセプトを見せたときのやりとりです。
Aさん: 「汚れのよく落ちる、スーパー洗剤、どう思います?」
B子さん: 「・・・買うかどうかわかりません。」
Aさん: 「どうしてそう思われますか?」
B子さん: 「今使っている洗剤でも十分汚れは落ちていると思うので。」
Aさん: 「そうですか・・・。 汚れにはどんなものがありますか?」
B子さん: 「子供の泥汚れや食べ物の汚れ、ですね。」
Aさん: 「そういう汚れって、落ちにくくないですか?」
B子さん: 「うーん、そうですね・・・。 でも落ちてるかな。」
Aさん: 「スーパー洗剤は他の洗剤よりもっと落ちるんですけど?」
B子さん: 「・・・今のは使い慣れているし、十分落ちてるからどちらでもいいんですが・・・。」
だんだん押しつけがましくなってきたAさん、本当に汚れが多いならどうしてスーパー洗剤がいいと思わないのか、納得のいかない様子。
B子さんにしてみれば、「この人何回言ったらわかってくれるんだろう、しつこいなあ。」
2人はすれ違います。
Aさん: 「お洗濯は今どのようにされているんですか?」
B子さん: 「えっ、ふつうです。 特別なことは何も・・・。」
B子さんは洗濯物の汚れが多い主婦、という、Aさんが想定していたスーパー洗剤のターゲットです。なのにこんなにつれない返事とは。 Aさんがしつこくなるのも理解できます。
Aさんは実際のところがどうか確かめたくなり、B子さんにお願いしてご自宅を訪問し、洗濯物や洗濯の様子をみせてもらうことにしました。
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まずおうちに入ってびっくり。 家中とてもシンプルできれいに片付いています。 お子さんがいるようには見えません。 でもお子さんが描いた絵や写真が至る所に飾ってあることから家族の仲の良さが感じられます。
A: 「素敵なお宅ですね!」
B: 「そうですか? なかなかうまく片づけられなくて・・・。」
A: 「全然! ものすごくきれいですよ。 じゃあ早速なんですけど、お洗濯、見せていただけますか?」
B: 「はい。 まずは洗濯物を洗濯機の中に入れて・・・。」
A: 「ちょっと待ってください! 今、洗濯物を仕分けてらっしゃいますがどうしてですか?」
B: 「ああ、白物や特に汚れてないものから洗うんです。」
A: 「どうしてですか?」
B: 「キレイなのが汚いのとまざるのが嫌なので。 あと、白物にはタオルが多いので、柔軟剤を入れます。」
A: 「なるほど~。」
B: 「で、まわします。 その間に、少し汚れているものには部分洗いしておきます。 主人のYシャツの襟とか、ですね。 で、置いておきます。」
A: 「なるほどー。 この前おっしゃっていたお子さんの汚れ物ってのが出てきてないですが?」
B: 「ああ、それはここです(と、お風呂の洗面器を見せて)。 これは体操服なんですけど、泥汚れがひどかったので昨夜から漂白剤で漬け置きしてました。」
A: 「本当だ。 汚れはすっかり落ちてますね。」
B: 「そうなんです。 手間かけたら割とどれもそこそこ落ちますよね。」
A: 「なるほど・・・。・・・スーパー洗剤、どう思われますか?」
B: 「・・・洗剤は、どれも同じだと思うんです。 結局汚れを落としているのは部分洗い用や漂白剤なので。 洗剤は汗とか軽い汚れを落としてくれたらいいです。」
A: 「そうなんですね・・・。 じゃあ何かお困りのことはありますか?」
B: 「うーん、もう少し手軽にきれいになったら嬉しいかな。 やっぱりいろいろと使わないといけないし、ずいぶんと手間ひまかかっているなぁとは思っているので。」
このインタビューをふまえて、Aさんは「1本で部分洗いも兼用できる、スーパー洗剤」というコンセプトを考えました。
さらに、楽に汚れが落ちてすごいでしょ、ではなく、(そんなことを言ってもB子さんはきっと信じてはくれないので)B子さんのように毎日頑張っている主婦が少しでも楽になるように、という気持ちを込めたいな、と思いました。
もう一つ、B子さんのおうちに合うような、シンプルで清潔感のあるパッケージデザインにしたいなぁとも思いました。
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さて、今回は訪問調査のススメ、です。
訪問調査とは文字通り、消費者のお宅に伺い、インタビューしながらいろんなものや行動を見せてもらう(観察する)ものです。
インタビュールームでインタビューするのに比べ、ご自宅で実際洗濯しながら話を聞くことで、Aさんは何が分かったでしょうか。
・B子さんは汚れにそんなに困ってないのではないか→
やはり、汚れはあって、それをしっかりと落とす努力をしていた(実際の問題のレベル)
・洗濯の仕方は「ふつう」にやっている→
かなりの手間ひまをかけて工夫してやっている(言動 vs. 実際の行動)
・今の洗剤で十分汚れは落ちている→
汚れを落とすのは部分洗いや漂白剤で、洗剤はどれも同じだと思っている(より深い洗剤に対する態度)
・すごく家族のことを考えているお母さん(母としての人物像)
・大変な手間をかけて毎日洗濯をしている(主婦の実態の理解と、それに対する共感)
・シンプルな片付いた家で、インテリアの好みもベージュ系で落ち着いている(生活やデザインに対する好み)
実は3時間の観察・インタビューで分かったことはもっともっとあったのですが、ここに挙げたものでも十分Aさんには新発見だったようです。
皆さんは実家や親せき、友人宅以外のおうちに行ったことはありますでしょうか。
自分の周りの人は良くも悪くも「似通った」人の集まりです。 ですので、自分と周りの常識をつい「ふつう」と考えてしまいがちです。
しかし実際には100人いたら100通りの暮らしと住まいがあり、それぞれの「ふつう」の暮らしをしています。 それを口で説明してもらってもなかなかわからず時には疑問や謎が増えるだけ。実際に見る方が正しく理解できます。
また自宅は一番自然な姿が分かる場所。 女性として、主婦として、母として、妻として。 その価値観も垣間見ることができます。 インタビュールームではわからないことですよね。
百聞は一見に如かず、です。
特にモノづくりをされている皆さん、なにはともあれ、ぜひ一度ユーザーさんのお宅に行ってみてください。 まず、自分の関わったものが生活に入り込んでいるのを見るのは感動します。 そして、自分が今まで「ふつう」と思っていたこととのズレに驚かされます。 机の上で、ビルの中で、あれこれと考えるよりずっとヒントが得られます。
ところでえとじやは訪問調査が大好きで、行くとすぐ「楽しい、楽しい」とつぶやいてしまうのですが、それはなぜかと考えてみると
・どこの家にもドラマがある
・何軒行っても、なお常に新発見がある
・実際に使っている人と一緒に考えたり感じたりできる
ということでしょうか。
ホントにそんなにいいの?
どうもよくわからない、どんな時にいったらいいんだろう、どうしたら実施できるのか?
そんな疑問をお持ちの方はえとじやまでご連絡くださいね。
なんせ大好きなので喜んでお手伝いいたします!
K。