私のような左脳人間にとって、広告を作る上で苦労することのひとつは、映像、アートディレクションの、できあがりを想像することです。 言葉・文字は読めばわかる部分が大きいので、なんとかなる(と思っている)し、また、ストーリーやレイアウトもなんとか論理的に追うことは不可能ではありません。
映像・画像も、最近は(って、もうかなり以前からそうですね)、手描きの絵ではなく、かなり完成度の高いものを最初から見せてもらえることが多く、随分想像しやすくなりましたが、それでも最終的には「できあがるまでわからない」ことが多い。 あるいは、できあがりがうまくいったときの驚きが本当に大きい。 「あぁ、クリエイティヴや制作の人たちは、このことを言ってたんだ。 やっとわかったよ、すごい!」ってなります。
ということは、逆もあって、「何これ? こんなんだったの? 金返せ!」というのも。 いやいや、何本もスクラップしましたよ、実際。 高い授業料ってやつです。
お金かけて作っちゃったら、もう引き返せない・取り返しがつかないことがあるわけで、もちろん、みなさん、そういうことがないように、しっかり説明してくれるし、参考になる画像や映像の資料も出してくれるし。 そのうえで、目的やねらいみたいなことも話し合うし、それに合わせたスタッフも選ぶわけです。 でも、避けられないことがある。
そして、逆に、予想をはるかに上回る、鳥肌が立つようなものが手に入ることもある。 (だからおもしろい。)
で、とりあえず、以下のような「あがき」をしてみるように心がけていました。
1.ともかく、参考になるものをたくさん見せてもらう。
2.クリエイティヴの、あるいは監督の、ねらい、映像の目的について、語ってもらう。 こちらもそこをしっかり理解する(わかったふりをしない)。
3.見ている人に、何を伝えたいかだけではなく、どんな気持ちにさせたいか、を教えてもらい、それについて議論する。
4.それと、これが案外落とし穴なんですが、参考映像と同じようなもの・効果を再現することができるのかを確認する。 それは時に予算だったり、スタッフだったり、演技だったり、時間だったり、技術だったり、あるいは、見ている人の環境だったりします。 参考映像が映画や長尺のCMやアート作品だったりする場合、それが15~30秒のTV広告で再現できるのか、案外難しいんですね。
5.最後はスタッフのみなさんを信じるしかないわけですが、クライアントとしては、「万一思い通りにいかなかったときに、あとで救う=作りかえることはできるか」も考えます。
6.そうそう、もうひとつ、「経験豊かな第3者に聞く」という手があります。 こういうときに、利害関係のないアドバイザーを持っていると、大変助かります。 私も何人か社内外の先輩にアドバイスを求めたりしていました。
およそ、こういうことしながら、リスクだとか理解のギャップだとかを減らしていく。
面倒な作業ですが、かけるお金も小さくないし、なによりも最後には、それが広告を見るお客さんたちに評価していただけるか、という一番大事な関門が待ち構えていますからね。 うちわだけ感動してても仕方ないし、別に100年後に評価されたい芸術作品を作っているわけでもないので。
「そうですねぇ、テーマは『赤の躍動』とでもいいましょうか。 ブランドのテーマカラーでもあるイタリアンレッド、今回の製品の特徴、そしてその優雅でありながら時に野性的ともいえる走り、それらがあいまったときに生まれる『赤の躍動』を、ライブペイントの・・・・」
とか、説明したんですかねぇ?
しかし、とても残念な結果です。
そもそもこのブランドをTVCMで売ろうとすることに無理を感じますし、盛り上がりも盛り下がりもないコピーとストーリー、結局何を言いたいのかさっぱりわからないし、残念なこと山盛りなんですが、中でも映像の「???」具合が私をなんとも切ない気持にさせます。
最初TVで見たときは、びっくりしました。 うちのブラウン管ハイビジョンという、化石みたいなTV、ついに壊れたのか、と。 画像は汚いし、音もなんだかしょぼいし(モノラル?)。 YouTubeのせいではなく、オンエアでもざらざらの映像にミニカーの写真みたいな車、でした。
「ああ、きっとこれはアジアのどこかの国で流しているCMをそのまんま流用してるな。」
次にはそう思って、検索してみると、どうもそうではないらしい。 ちゃんと日本でイベントとかもやってるし、神田サオリさんっていうんですか、中東の方でお生まれだそうですが、日本で活躍されているアーチストさんのようです。 (有名なんですかね、私は全く知りませんが。)
兵庫県東部(東神戸・芦屋・西宮エリア)に住んでいると、ともかくたくさんアルファロメオを見かけます。 たいてい赤ですね、たまに黒も見ますが。 昔からこの地域でよく売れているブランドだそうです。 1980年代の女性誌を見ると、すでに「芦屋のお嬢さん御用達」みたいに取り上げられていますね。
かっこいいし、エンジン音が心地いいし、かわいいし。 いい車です。 いつか乗ってみたいと思っています。 もちろん、赤。
それだけに、この「ちゃっちい」CMにはがっかりさせられました。
なんなんでしょう、この安っぽさ、ちゃっちさ、気持ちが入り込めないださい作りは。
どうすればこういうことが避けられるのか。 まぁ、最近、TVの広告に関わるような仕事もないので、悩んでみても仕方ないのですが、きっと数千万円のお金をかけたんだろうなぁ、と思うと、ついつい考え込んでしまいます。
お。
ALfaって「感性と機能の絶妙な共存」が売りだと思うんですが、このCMは真逆で、計算してもここまで不協和を作り出せない気がします。ナレーターの声とか絶妙すぎます(何故リバーブかける?)
なんというか、作り手が感性も、機能もまったく理解してない感じ??車好きとして何か言わずにはおれない出来ですね(苦笑)。
作り手側としては「ブリーフも酷かったんだろうな」と。
ぼんやりクライアントサイドにも責任を押し付けてみたり・・・。