「ブランドマーケティングのコンサル」という看板あげて仕事しているといくつかの悲しい誤解に出くわします。 (まぁ、ブランドも、マーケティングも、コンサルも、誤解にまみれた言葉ですからね。 あやしいことこの上ないのは当然ですが。)
「うちはTVCMなんかやらないから、いらない」と門前払い、というのも多いですが、結構多いのが「素敵なパッケージとかお店のデザインをしてくれるんですよね、お願いします」というやつ。
そんなものがブランド作りなわけないだろうと思うのですが。
遅い時間にチェックインしたら、ホテルの方が「スイートルームが空いていますので、こちらでお休みください」って言ってくれて、大喜び(? 深夜にチェックインして、翌日は朝から出かけて会議なんで、ほとんど意味ないんですが)。 ゆっくりシャワーを浴びて、さて、髪を洗おう。 おや、随分とおしゃれなボトルに入ったシャンプーとコンディショナーだなぁ。
んん?
出てこない。
コンディショナーが出てこない。 ボトルから。
粘度が高いから振っても振ってもびくともしないし、そのおしゃれなボトルは口が小さくて指を突っ込むわけにもいかず、ボトルはプラスチックなのですが堅くて圧せない。 シャワールームで腕を振り回して、それでも出てこない。 腕を壁にぶつけるは、やっと出てきた少量のコンディショナーは床にこぼれるは・・・。
なんとかシャワーを終えて出てきたら、バスタオルは遠くの棚に・・・。 やれやれ。
さて、寝るかと、電気を消そうと思ったら、スイッチが部屋のそこらじゅうに分散していて、しかもメゾネットだし、上がったり降りたり、うろうろ。
高度経済成長のころにはにぎやかだったであろう、さびれた温泉街にある旅館、リノベーションをしたのでしょう、随分とおしゃれな外装・内装で、いい感じです。 確かにエレベータや大浴場など、設備も作りも古臭い感じではありますが、精一杯のリノベーションは成功していて、そこそこ落ち着く感じで許せます。
夕食の時間が6時から8時の30分刻みのスタートしか選べないのは、まぁ、仕方ないですね、旅館ですから。 「6時か6時半です(きっぱり)」って言われるよりいいし。 夕食をいただくスペースも、ゆったりしていて、かつ、しっかり仕切られていてプライベートな空間。 悪くない。
と、待てど暮らせど、仲居さんが来ない。 出ているものを食べてもいいんですが、まずは温泉上がりの乾いた身体にビールを注入しないわけにもいかない。
仕方なく配膳室みたいなところまで行って、「すいませ~~~ん」と大声を張り上げると、「あら? もういらっしゃってたんですか、すいませんねぇ、担当の仲居がまだ来てないんですよ。」 どうやら15分ほど早く来てしまった私のせいみたいです。
ようやく、ちゃかちゃかと別の仲居さんが現れ、すさまじい勢いで料理の説明をしてくれます。 「へぇ~。」とか「これはXXなんですか?」とかあいの手を入れていたんですが、ガン無視。
しかし、料理はおいしそうなので、我慢。 ともかくおいしい料理をゆっくり愉しもう、と思っていたら、仲居さんたら、3つもあるコンロすべてに火を点けちゃって、「すぐできますからね、湯気が出てきたらふたを取って食べてください。 はい、失礼しま~す。」と、爆弾を落とし終えた爆撃機並みの勢いで帰っていきます。
もちろん、数分後には、私はすごい勢いで全部の料理を食べないといけないわけですから、先付けも刺身も後回しです。 お酒をたくさん飲まずに済みました。
入れ物だけきれいにしても仕方ないんですよね。
むしろ逆効果なこともあるわけです。
どちらの例も、サービス業の基本ができていない、というか、まぁ、単に経営者と従業員の頭が悪いだけだという気もしますが、加えて、お客様にどんな経験とか価値とか気持ちとかを提供したいと思っているのかを考え、決める作業が、すっぽり抜け落ちているということだと思います。
それ決めてから入れ物を考えたほうがいいと思うんですけどね。
件の旅館の夕食、一番楽しかったのは、最後のデザート。 本来の担当の仲居さんが、アイスクリームを持ってきて、
「栗をふんだんに使ったアイスクリームです。 これ、甘さを控えたオトナ向けなんですって。 私も食べましたけど、いくらなんでも、もうちょっと甘くないとおいしくないと思うんですけどねぇ。」
(おいおい。)
でも、食べてみて、私は彼女に賛成。 あきらかに「甘さ控えめ」の失敗作ですね。
あぁ、やっと普通の人間に会えた、って感じでした。
おばちゃん、お茶淹れるの下手くそだけど、許す。
お。