シグナルシグナル、というのは、実はかなりあいまいな概念で、こじつけ始めるとなんでもかんでもシグナルで片付いてしまったりするんですが、こいつはうまく使うととても効果がある手法で、それゆえに世の中にはたくさんあふれています。

なんですかそれ?


はい、ざっくり定義すると、効果や効能が実感できない、あるいは、確信できないときに、それらを「予感」させる他の効果を与えることで、なんとなく納得できたり安心できたりする製品やサービスの特徴とでも言いましょうか。

典型的な例を挙げましょう。 たぶん、歯磨きが一番いいですね。

例えば、どうして歯磨きはミント系のすっきりした味(?)が好まれるのか?

歯がきれいになったかどうかなんて、実はよくわからないです。 もちろん、見るからに汚れが見えたり匂いがしたりすれば別ですが、虫歯などのトラブルはもっとミクロな、気付けない原因で起こることを教育されてますから、ひたすら磨く、うまく磨く、何度も磨く、などを習うわけですね。 しかし、それでもホントにきれいになったかなんて、結局わからないわけです。 どこまできれいにすべきなのか、について、きちっとした基準があるわけではない。 んで、適当にやってると、やがて革張りの素敵なリクライニングソファに縛り付けられて、高速回転する金属と掃除機を手にした白衣の人に責めらるはめになったりするし。

で、ミントのすっきりした味がすると、「きれいになった気がする」。 ちょと安心。

まだ、日々の汚れ・歯垢ならいいですが、歯周病とか歯石とか、長~い時間かけて起きるトラブルともなると、ますます「わからない」わけですからね。

「嘘だろ、そんなことでごまかされないぞ。」という方は、子ども用のバナナ味歯磨きで一度磨いてみましょう。 その不安感といったら・・・。 (イチゴ味でもいいよ。)

一時期流行りましたが、ちょっと塩味がすると、歯ぐきにいい気がする。 これも(ほぼ)シグナルです。 ホントに塩がいいのかなんてわかりませんが、なんとなく昔からいいと言われているし、なによりも「塩味」という実感が伴うので、安心するわけです。 (USでは、ベーキングソーダ入りの歯磨きが同じような感覚で受け取られるようです。)


メンソールは、他のところでもシグナル役をやらされていることが多いですね。

メンソールのシャンプーとか。 ガムもそうですね。

美白のための商品などに、ときどき「肌にうっすらと白い色が残る」ようにデザインされているものがありますが、これもシグナルですね。 単に色がついているだけなので、しみやくすみに効いているわけではなく、洗い落としてしまえばおしまい、なんですが、美白という、効果を実感することがほぼ不可能な世界で、苦肉の策といったところでしょうか。


身の回りを少し見渡してみると、そういう役割をしているもの、たくさんありますよ。

「効いてそうだ」とか、「使っててよかったんだろうなぁ」とか、「ちょと安心よ」とか、感じてもらうために、みなさん苦労なさっているわけです。


さて、こういったことは、主に製品開発の段階で、その製品の使用時・使用中の満足度を高めるための手法として使われてきたことが多いので、製品の使用を前提としたシグナルがほとんどなのですが、実は、シグナルの重要性が最も高いのは、購入時なんですね。

テスターなどを置いて、1回使っただけではわからなくても、ともかく使用感を味わってもらおう、というのもそれですが、これはまだ「製品使用段階のシグナル」の派生です。

多くの、セルフで選ぶ商品は、なかなかそこまでできませんし、ネット販売や通販にはまたそれなりの障害があります。 すべてに、お試しのチャンスや、デモ映像をつけられればいいんですがね。

シャンプーなどの商品を、店頭でふたを開けてニオイをかいでみる、というのは、みなさん経験がおありだと思います。 香りで選んでいるわけではない場合でも、やってしまいますね。 あれは、「何らかのシグナルを求めている=ちょっとでもいいから安心したい」気持ちのあらわれであることが多いようです。

他に、手触りを確かめたり、振ってみたり、音を聞いたり、中味をすかしてみたり(見える場合は)、圧してみたり、容器の形状でイメージを膨らませたり、いろんなことをしてますよね、観察していると。 (桃などを指で圧すのはやめてくださいね、ちなみに。)

しかし、パッケージは中味を保護しないといけないし、直接触られたら売りものにならないことも多いし、透明にしたくてもできないことも多い。 言いたいこともたくさんあるし、デザインを格好良くしたいだろうし、そもそも目立ちたいしで、他にやることたくさんあるんですよね。 結果、実はかなり買い物する側にとっては不親切な状態になっていたりします。

お客さんは、なんらかのシグナルを、買う前に探していて、それで「予感」、わくわく感や安心感につながる予感を、求めているわけです。
店頭で、安心して・わくわくしながら選んでもらうためのシグナルを送っているか?
そういう見方でご自身の商品を見てみてはいかがでしょう。


なんか、今日は悪口のない記事になったなぁ、珍し。

お。