料理知人の家に招かれて、奥様の手料理をいただいた時の話。 どうやら奥様はお料理修行中。 たくさん頑張って作ってくれるとのこと、楽しみにいったのですが困ったことに・・・。


初めに出されたのはポタージュスープ。 一口食べてみると、

(うっ、甘っ。 なにこれ?!)

すると、奥さん「お味はどうです?お口に合いますか?」と心配そうな顔。

私「うちの子連れて来たらよかったです。 すごく好きそうな味です。 (私はちょっと苦手ですが)」

奥さん「そうですか ?じゃあ今度ぜひ!」


次に出てきたのがサラダ。 おおっ、彩りあざやか、とってもキレイです。 おいしそう!

と思ったら今度は味がしない・・・。 ドレッシングかけ忘れか? でも何かかけてあるよな~。

奥さん「サラダはどうですか? いろんなお野菜入れてみたんですぅ。」

私「すごくキレイですよね。 盛り付け参考になります~。 (でも味が・・・。)」

奥さん「本当ですか~。」


そしてパスタ。 トマトソースがこってりとした艶をだしているのに、なんと、これまた塩気が無く、味がしない・・・。 ああ、また感想を聞かれるのかな。 どうしよう・・・。

奥さん「これはどうですか? トマトソース作ったの、初めてで。」

私「おいしいです~。 (えぇい、もう言っとこう!)」

奥さん「よかった! 何でそう思われます?」

私「(えっ)・・・え~っと、私トマトソース、好きなんですよね。」

奥さん「そうなんですね!」


(ふう、何とか乗り切った?)


皆さんだったらどう答えますか?

「私の作った料理はどうですか」と切実な顔で聞かれて「まずい」と答えるのはなかなかの度胸がいります。

ここでの「私」の言動を振り返ると、

Ø  何でもいいから、味以外でほめるところを探す

Ø  自分はダメでもほかの人にはおいしいかもしれない、と思う

Ø  何度も聞かれると、おいしい、と言わないといけない気がしてつい言ってしまう

Ø  おいしいと思っていないのに「どこがおいしい?」と聞かれて困って、答えに詰まってしまう

といったことが見受けられます。


実はこんな何とも言えないやりとりが、実際に消費者リサーチでされることがあるのです。


例えば新製品のコンセプトを見せて消費者に評価してもらうインタビュー調査。

いくつものコンセプトを用意しても、まったく消費者に魅力的でないことがあります。 しかも見せるインタビュアーが明らかに製品開発者だったりすると、インタビューされる消費者さんは困ったことに。

「この人の前で否定できないよな~。」と、一生懸命ほめようとしてくれます。


よくあるコメントは「xxな人にはいいと思います(=自分はいらない)」、とか、「この文章のこの部分が好きです(=製品便益に関係なし)」。

そして数あるコンセプトを見せたときは、だいたい3~4つ目くらいには、「買ってもいいです。」と言ってくれます。

そこで「どうしてですか?」と聞くと長~い沈黙。

そりゃあそうです。 理由があって「買ってもいい」と言ったわけではないですから。


もちろん消費者を困らせるようなコンセプトしか見せられないことが残念なのですが、もっと問題なのがこの答えをそのまま受け取ってしまう製品開発者。

くれぐれも「おお、そうか、このコンセプトなら行けるんだ!」なんて喜ばないでくださいね。 あげく量的調査にかけてうまくいかず、「質的調査で受けがよかったのに。 だから質的は信じられないんだー。」なんてことになっちゃいます。

じゃあどうやって消費者の本音とタテマエを聞き分けるのか?
そんな「聴くチカラ」についてはまた後日。


K。