昔からテレビ広告には、見てもらう・目立つための「3B」というのがありまして、Beauty、Beast、Babyの3Bなのだそうですが、もう少しわかりやすく言うと、セクシーな女性または男性、犬猫など動物、赤ちゃんあるいは子供の、どれか、または組み合わせを出すと、見てもらえるというわけです。 (組み合わせってのも、なんですが・・・。 セクシーな赤ちゃん、じゃないですよ。 子犬とか、あるいは、子猫と戯れる女性みたいな。)

これが、広告の伝えたいことなどに関わりが深ければ、良いのですが、時として、「なんでここでそれ?」というのを見かけますね。 (エリマキトカゲとか、古典中の古典ですね。) そういうのを「Borrowed Interest」と言ったりします。 「興味を外から借りてくる」みたいな意味ですね。


それはさておき、ここ最近、CMを見ていて感じていることなんですが、なんか、パワーのない子どもCMが目立ちません? そんなことないですかね。 私の気のせいでしょうか。

しかも、何となく思うのは、「これ、ひと昔前だったら評判になったりするパターンなんだよなぁ。」ということ。 あの子どもの様子がおもしろい、とか、かわいい、とか。 それが、どうもすべってるのが多い気がします。

(もちろん、今でも子どもはCMの世界で大活躍。 アメリカみたいな変な規制や団体からの抗議とか少ない日本では、結構、出し放題・見放題です。 中には、ものすごく評判になるのもあって、例えば「子ども店長」とか、人気の理由はCMよりドラマだったとはいえ、まぁまぁ、よくできてます。)


すべっている例としては、例えば、あくまで例えばですが、次の2作。

 
Glicoの2段熟カレーのCMは、母親役(と思しき)室井滋と子ども役(らしい)子役さん(石井萌々果さんっていうんですね)が、カレーのこくの深さを演歌のこぶしをきかせたような歌い方でうたう、という、子どもは出るは、歌はうたうは、という、まあまさに古典的な広告です。

カレーと言えば子どもが大好き、ということで、必然性を感じなくもないですが、そこそこちゃんと作られている割に、妙に寒~~い感じがします。 昭和の香り、とでもいうんでしょうか。

こまっしゃくれた演技が鼻につきますね。


もうひとつは、森永のココアのCM。 55歳を迎えた元気なおじさん、郷ひろみさんと、同じ金のコスチュームの男の子が、どうやらモンドセレクション3年連続金賞受賞という(プレミアムモルツの柳の下を狙ったような)おめでたいニュースを伝えたいのでしょう、金色の舞台で踊って歌うというもの。 最後は「ココアはやっぱり森永」というお決まりのジングルで。

こちらもココアですから、子どもが出てくることにうっすらとした必然性はあるものの、2段熟カレーと同じく、なんか昭和な肌触り。 すべるというより、完全に見逃してしまいますね。 (という私は見逃さなかったわけですが、それは、最近、こういうCMがすべっていることを気にしていたからです。)

「あの、世界の郷ひろみが、ココアの歌をうたって、子どもと踊るって、すごいでしょ?」

「いえ、すごくないです、いまさら。 (世界のっていえば、なべあつですし、それも古い?)。」


こういうの、まだまだたくさんあります。 例をあげているとキリが無いので、このふたつにしておきますが。

いったい何なのでしょう? この現象は。


おそらく、あくまでかなり勝手な憶測ですが、古来このパターンの広告はそこそこ人気で、同じことをやれば同じような効果が期待できると踏んでいたのではないでしょうか? 少なくとも、大きな間違いにはならない、と。


しかし、結果は寒い感じの広告。 むしろ、ブランドを古臭く見せてしまっています。

最近の日本人が広告に対して、もっと洗練されたストーリーを求めるようになったからでしょうか?

なかなか、そうも思えないのですが。

あるいは、単に内容が悪いだけ?

子どもが出てくる必然性が、売っているものの消費者だということ以外に何もない、というのは言えますね。 そこにアイディアがない、あるいは、アイディアに子どもが関係ない。

そんな難しい話じゃなくて、有名タレントと子役のおもしろ(いつもりの)広告そのものが、もうダメなのか?

でも、世の中30~40年でそんなに進歩するはずもなく、やはり使い方のような気がしますね。

言葉や音楽、演技・編集など、広告の「つくり」みたいなものが古臭い、というのは、確かにこの2本はその通りです。

それにしても、最近目につきます、こういう、できの悪い子どもCM。


いやいや、とりとめのない話になってしまいました。

私自身に確固とした結論とか提言とかがあるわけではないので。 すいません。 純粋に「疑問」だったのですよ。


一方、そのあまりの割り切りと「脅迫」ぶりに、恐ろしくなりつつも、「ああ、これは子どもにやられたら動かざるを得ないよなぁ。」と、半ばいやな気分になりながらも、感心してしまったCMを。


これは、なんか「ぞっ」としますが、いい広告です。

「おじいちゃん、おばあちゃん、孫のランドセルはあなたたちが買いなさいよ、ただし、子どもがいやがるようなものを勝手に買わずに、お盆に帰るまでちゃんと買い物は待ちなさい!」

という、脅迫メッセージを、この子は将来どんな「悪魔」になるのだろうと他人事ながら心配してしまうような演技っぷりで、どアップで、「どうだ、わたしのおねだりには逆らえまい!」と媚を売る。

しかし、よくできた広告です。 おじいちゃん・おばあちゃんは、ちゃんとイトーヨーカドーに下見に行き、ちょっとついでに無駄な買い物をし、ランドセルは見るだけ。 夏休みに孫が来たら、再びイトーヨーカドーへ。 ランドセルのみならず、ついでにあれこれ買わされて、いろいろ食べさせて。 気持ちよ~~~く散財です。

お見事!


お。