「個人の感想です。」
TVショッピングのようなものから、大手広告主のタレント広告まで、いろんなところに。
あれのお話し。
最近、何人かの人が
「あれがあると説得力が増す」
みたいなことを言っているのを聞きました。 そういえば、最近そういうTweetを見た気もします。
「へ~~~~、そういう風に考えるんだぁ!」
でした、私にとっては。 そして、おそらく化粧品・ヘアケア・スキンケア・健康食品などを扱うマーケティングに携わる多くの方が私と同じように思うのではないでしょうか。
あれ、実は、そもそも法的な理由のために付けられていたんですよ。
つまり、説得力を増す、のとは逆の理由で。
解説します。 ただし、法律や省令・条例などの専門家ではないので、厳密な意味で正しいか、は、わかりませんよ。
厚生労働省の管轄になる商品群にあてはまる規定だと思うのですが、おおざっぱに言うと、「そもそも薬はやたらと売ってはならんよ!」というところから始まります。 「ええっ?」と言う方のために、もう少しお話しすると、「薬は、濫用につながるおそれがあるので、販売を(やたらと)促進するようなことをやってはいけませんよ」ということです。 納得。
(でも、この時点でかなり「有名無実」ですね。 世の中薬の広告だらけですよね。 果ては、「お医者さんに相談だぁ!」とか言ってます、最近。)
さて、それはともかく、化粧品などのカテゴリーは、厚生労働省管轄で、この「薬はがんばって売ってはいけない、なぜならば」の考えが、薬ほどうるさくないにせよ、あてはめられるわけです。
なので、販売者でもなく、消費者でもない、第3者、つまり有名人や専門家、あるいは使ったことがある人による推奨は、かなり微妙になってきます。 原則として、NGなんですね。
(これも、かなり有名無実です? ですよね。 でも、よぉく見ると、うまいことできてるわけです、どの広告も。 あ、ちなみに、洗剤や車はこれには関係ありませんよ。 好きなだけやっちゃってください。)
原則NGだけど、広告ですから、なんとかして、やらないわけにはいかない。 広告の手法として、証言広告(テスティモニアル)というのがあるくらいで、かなり古くから使われている、広告の王道ですし、そもそも、お客様が、「(メーカーが言うことじゃなくて)使ったことのある人の意見を聞きたい」とおっしゃるわけですから、やらないわけにいかない。
そこに、公序良俗に反するような悪意は全くないわけですし。
そこで、編み出されたのが
「あくまで個人の感想ですので、その効能・効果を保証するものではありません。」
という文言なんですね。
もともとは「余計な説得力を持たせないように作られたモノ」なのです。
やがて、時は過ぎ、化粧品やヘアケアなどの商品でも、あっちこっちで「使ったことのある人がその感想を話す」広告はどんどん増えていきました。 TVショッピングや通信販売の世界でも、そういった商品がたくさん売られるようになり、「使ったことのある人が出てきて(ちょっとわざとらしいのが多いけど)、よかったわ~~、助かりましたぁ~~、って言う」がさらに一般化します。
そして、きっと「あくまで個人の感想ですので、その効能・効果を保証するものではありません。」なんて、長々と(小さ~~~い字で)言わなくても、「個人の感想です。」でいいんじゃないの? ということにでもなったんでしょうね。 最近では、多くがこの「個人の感想です。」です。
さて、皮肉なことに、この「個人の感想です。」が、一部の人にとっては、
「なぁるほど、この人が個人的に使ってみて感想を言ってるんだ、メーカーに言わされてるんじゃなくて、ちゃんと本人の感想なんだ。 それは、とても説得力があるなぁ!」
と感じられることがあるわけなんですね。 もちろん、すべての人がそう思うわけではないと思いますが。
「個人の感想」だから、説得力が増す。
確かに考えてみればそうですよね。
私も最近まで気付きませんでした。
ずっと、考えずに付けてました。
いつも、「お客様目線」とか言いながら、だめですね、いまごろ気付いてるようじゃ。
反省。
(ちなみに、どうやら、「その文章をいれたところで、法的なリスクの高低には無関係ですよ」と、厚生労働省さんはおっしゃってるらしく、まぁ、「お守り」みたいなもんなんですね、今や。)
お。
私は以前化粧品の書き物の仕事をしていたので、「~に働きかけます。」「期待できます。」「アプローチします。」とかそんな表現ばかり使っていました。