室戸25先日、とあるお仕事で、社長と社員の方々あわせて7名ほどインタビューする機会がありました。 純粋な意味での調査ではありませんが、1~2時間、ひとりずつひたすらお話しを聞く、というのは、かなり久しぶりで、どっと疲れましたが、楽しかったです。

「若いころ」は、毎日は言い過ぎとしても、少なくとも月に4~5回消費者インタビューをこなしていました。 実際、週に10グループ以上ということもありましたね。 その後、会社が「すべての人は消費者調査に立ち会うべき」との、なんともばかばかしいお触れを出したので、それ以後、調査の立ち会いは人に任せることにしましたが。

 


もちろん、私は調査の専門家ではありませんので、「聞く」ことについて正しく、あるいは、詳しく話す知識も経験もありませんが、社会人2年目に教えてもらったテクニックだけは、いまだに忘れず使っています。 調査に限らず、会議などでも。

ものすごぉく、当たり前のことなんですが、それは、

「何を言っているかを聞くんじゃなくて、なぜそれをそういう風に話しているのかを考えろ」

という「教え」でした。

そのためには、言葉を聞いてメモをとっているだけではだめで、その人がどんな表情で話しているかも、あるいはどんな口調で話しているのかを見ないといけない、と。

常に、「この人は、どうして、今、この前後の脈絡の中で、こういう表情で、こういう口調で、そういうことを言うんだろう?」と思いながら聞く・見る、ということですね。

 


これが、インサイトを発見したり作りだしたりするために必須のテクニックであり、考え方だと知ったのはずっと後のことでしたが、この見方・聞き方のおかげで、随分いろいろなことを学ぶことができたように思います。

実は定量調査では、無意識にやっていたことなんで、変な話ですが。 数字を見ると、どうしてその数字になったのか、結構真剣に悩みますよね。 なのに、インタビュー調査に行った途端、「どうして?」を考えるのを忘れて、「聞きたい答えを言ってくれるか?」になってしまう。 不思議な話ではあります。

 


ずっと以前、「ニオイが好きだから、についての考察」と題して、似たようなことを記事にしたことがありますが、インタビュー調査のいいなりに動いて痛い目に合うというのは、マーケティングに携わる多くの人が経験すること。 そうなる頻度を下げてくれた、この「教え」には、感謝するばかりです。

TV広告を見せて、いかがですか? と聞くと、多くの方が、「はぁ、いいと思いますよ。」、「私もいいと思います」と、答えます。 なるほど、いい広告なのか、と思ってしまうとドツボなわけです。 そもそも見ないといけないのは、見せた瞬間の彼らの表情だし、聞かないといけないのは「好きな広告」の話をさせているときの口調との違いなわけですね。

専門家でもない、一般の方が、「いい広告だと思いますか?」と聞かれても、困りますよね。 突っ込まれたり、さらに問い詰められたりする危険性を回避するには「いいんじゃないですか。」くらいが一番無難。 あるいは、「ビールのコマーシャルってどれもおいしそうに飲んでますね。」と反論できないポイントを挙げるか。

でも、人間ですので、その口調や前後関係、そして何よりその表情を見れば、わかります。

(あぁ、この人はかなり困ってるな。 聞かれても困るくらい、理解できなかったし、そもそも響いてないんだ。)と。

一方、TV画面をみて、目が輝いてて、そのあと、どうですか?と聞かれて、「あ、音楽が印象に残りました! リップが濡れてるみたいにとかって、言ってたような気がしますが、音楽が好きで聞いてませんでした、ごめんなさい。」

(へぇ、この人、かなり好きなんだ、この広告。 よく見てるし、しっかり聞いてるね。)

と、感心していると、「音楽が邪魔でコピーが聞こえないと、言っていたので音楽を変えよう・やめよう」とおっしゃる方が・・・。 おい、どこ見て、何聞いてたの?

 


この「この人は、どうして、今、この前後の脈絡の中で、こういう表情で、こういう口調で、そういうことを言うんだろう?」は、会議などでも時々使います。 そうすることで、その人がホントに欲しいものや、その人のホントの気持ちが見えてくることがありますから。

とか、そんなことをここで言ってしまうと、私が多くの会議で配布資料も見ずにだまっているときに、何を考えているのかがばれてしまいますね。 いかんいかん。 「いつも」じゃないですよ、「たまに」です。

 


それと、このテクニックの効用をもうひとつ。

私、実は集中力の持続時間が幼稚園生レベルで、15分が限界なんですよ。 それ以上になると、うろうろそわそわし始めます。

そんなときに、「この人は、どうして、今、この前後の脈絡の中で、こういう表情で、こういう口調で、そういうことを言うんだろう?」と考えると、集中力がもう少し持続します。 そうですね、30分くらいは耐えられるようになります、はい。

 


お。