先日、私の生命保険の「契約内容の確認」というのがありまして、いわゆる「保険のおばちゃん」と近所の喫茶店でお話しする機会がありました。 何度聞いても、説明や約款を読んでもさっぱりわけのわからない保険の契約内容を、簡潔に説明していただいて、「あ、そうだったんですね!」を繰り返しながら、少し契約内容の見直しをしてもらうことになりました。
ま、そんな話はどうでもいいんですが、おもしろかったのが、その前後の雑談。
「こんな子供だましのキャラクター、この歳になって胸に付けて歩けって、会社も何考えてるんだか。 ばかばかしくて、もちろん会社の中でしか付けてませんよ。」
と、ポーンとなにやら黄色いフェルトのうさぎをカバンに投げ込みます。
「どう考えれば、こんなバカなことを思いつけるんでしょう。 以前はそんなキャラクター作ったりなんてこと絶対にしなかった会社だったのにね。 相武紗季みたいなかわいい若い子がつけるのなら、まだ我慢もできるんでしょうけど。 ねぇ?」
はい、お察しの通り、明治安田生命の方です。
セレブが3人も出てくるCMですので、YouTubeにいつまで残るか不安ですが、一応、件のCM、乗っけておきます。 かた耳だけ緑のウサギが登場します。 相武紗季が制服の胸ポケットに差しているのがそのキャラクター。 保険のおばちゃんが、無造作に放り投げたのも、これと全く同じものでした。
さて、おばちゃんのポイントを要約すると以下の通り。
「たしかに、ここのところ「ネコとアヒル」にお客さんを取られているのは、確かに痛いし、なんとかしないといけないのはよくわかる。 しかし、だからといって、片方の耳が緑の黄色いうさぎなのか? 本社の偉い人たちはそれで高い給料もらっているのよね、信じられない。」
彼女は3点のブランディング、マーケティング上の課題を挙げていらっしゃるわけです。
ひとつ、いくら競合が「ネコとアヒル」で成功しているからといって、同じく動物キャラで対抗しようとすることの無意味さと安易さ。 普通に考えておかしい、というか、誰が見ても愚策です。 どうせなら虎と白鳥にでもすれば良かったのにね。 そのうえ、そこで百歩譲ったとしても、結局何を伝えたいのかさっぱり分からないCMだし。 「あんなCMなら、ないほうが、説明しやすいわ。」と、大盛り上がり。
ふたつめ、これは重要なポイントです、「そんなことをする会社じゃなかったのに」です。 彼女が、組織の末端にいながらも、明治安田生命の社員であることに誇りを持っているのは、その堅実で、でも、一般の方々にひろく愛される、まじめなキャラゆえ、なのです。 そこに、「フェルトのうさぎ」はあまりにも「裏切り」だと。 キャラに合わないことをしてもダメですよ、とおっしゃっているわけです。 100%同意。 キャラじゃないのに、こうしたことをやっても、1.一般のお客様の心に響かないし残らない、そして、2.社員が付いていかない。 またまた大盛り上がり。
3つめ。 彼女曰く「小田和正のが良かった、ホントに良かった」と。 あの広告を見るたびに「明治安田生命の一員で良かった」と思ってらしたそうです。 ここは即座に同意、というわけにはいきませんでした。 以前、「ネコとアヒル」がいかに優れたブランド作りであり、広告キャンペーンなのかを記事にした際に、少し議論しましたが、「小田和正の歌に乗せたスライドショー」CMそのものは、残念ながら、いい広告とは言い難い。 まぁ、だからこそ「ウサギ」という愚策に走ったのでしょうが。
はい、またしても出ました。 えとじやマーケティング用語でいうところの「イメチェン」ですね。
少なくとも、明治安田生命は、2番煎じの、くっだらないウサギ・キャンペーンに走る前に、自分のキャラを見つめ直すべきですね。 末端社員までが愛する、まじめなキャラを出発点にするべきです。 もちろん、そっちにはニッセイとかの競合もいるので、そのままでいいというわけではない。 しかも、「保険とは人生を、生きているということを祝福する讃美歌」というAflacのキャンペーンに負けないアイディアを出さなければならない。 困難な課題ですが、そっちにしか解決策はありません。
加えて、保険業や、宅配業、車のセールスなど、巨大な末端組織が会社そのものの窓口であり、会社を支えている業種の場合、広告が社員のやる気を左右する度合は計り知れないものがあります。 私の担当をしているおばちゃんの「がっかり」が、彼女たちの多くも共有するものだったとしたら、それは、すでに「危機」ですが?
大丈夫ですか、明治安田さん?
お。