コンサルタントという立場で仕事をしていると、提案物などに対するクライアントの「好き・嫌い」に敏感になります。
(ちょっと概念的な話になるかも、です、お付き合いください。)
どちらの感情の場合でも、それが発言として出てこないことが多く、そうした場合、その感情とその理由をクライアントと一緒になって特定していくのが、私の仕事のひとつ。
「好き」の場合は、比較的楽です。 どうやらこの人は、これが好きそうだ、と感じたら、あとは、それを「好きなんですよね?」と確認して、どこがどのように好きなのか、こちらで言葉にしてあげれば、「そうです、それが言いたかったんですよ」となります。
難しいのは「嫌い」、それも「なんとなく嫌い」というとき。 (しかも、「好き」よりこっちのほうが多い。)
これは、じっくりその人の言ってることを聞くことに加えて、表情やしぐさ、それまでの経緯、などを見ていかないと、なかなか「本音」にたどりつけません。 あるいは、「政治的に」嫌いであることをあからさまに言えない場合があったりするので、さらにややこしい。
ただし、いくつかのパターンがあるのが、経験的にわかっていて、例えばこんな風に考えてみたりします。
1.提案物や会議の結論そのものが嫌いなのではなく、手順・過程が嫌い。
実は、これが3番目くらいに多いパターンです。 政治の世界は、まさにこれが8割ですが。 亀井さんのやりかたが嫌い、国会での議論がなされてないから嫌い、みたいな。 ビジネスの世界でも多いんですよ。 そして多くの場合、そこにはメンツとかプライドとかがくっついている、口では手順が嫌いとは言わないことが多いので、さらに取扱注意ですね。
対処法? まさにケースバイケースですが、その人が決定権者でない場合は、じっくり話をきいてあげるけれども、結論は変えない。 みんなで聞いてあげたことで、メンツを立てる。 「なるほど、いいことを教えてもらいました、次からは真っ先にご相談にあがるようにします。」
決定権を持っている、あるいは、大きな影響を与える人の場合は、議論を「結果」にフォーカスするようにがんばります。 それでもだめなら、部屋の外に連れ出して話をします。 「全部やりなおしになるし、やる気も下がるし、それでも同じ結論に至る可能性が大きいですが、どうしますか?」
2.提案物や結論そのものが嫌いな場合=2番目に多いパターン。
これは、対処そのものは簡単です。 その感情が結論を変えてしまうほどの強さなら、「やり直し」ですし、それほどではないが、明らかに嫌いな場合は「対案を立てる」です。 決してうれしい結論ではありませんが、その人が決定権を持つ人であれば、仕方ありません。
私の仕事は、具体的にどこがどのように嫌いなのか、はっきりさせることに移り、チームの人たちに納得し、かつ、次に考えるときの参考にしてもらいます。
3.他にあるのは、「そもそもプロジェクトの方向や戦略が嫌い」とか、「結論は仕方ないと思っているが、その結果がもたらす状態・状況が嫌い」など。 これは、コンサルタントごときが会議で何とかできるものではないので、プロジェクトのリーダーにゆだねるしかありません。 結論は2つしかなく、「やめる・いちからやり直す」か、「無視する」。 対処法は、別の機会を設けて、プロジェクトそのものの意義をじっくり話す、しかありません。 (ていうか、ちゃんと話通しといてよ、って。)
4.ものすごい対処が困難なのが、「人が嫌い」。
まぁ、人間ですから、そういう感情は避けられないこともわかります。
これが、繰り返されている、あるいは、長期的な問題である場合は、チーム編成などを考えないといけないかもしれませんが、まず、当面は「ヒト」ではなく「モノ」の議論をするように仕向けます。
「モノ」が好き・嫌いでないことが判明すれば、Go。 人間関係は会議以外の場で対処。
「モノ」が(も)嫌い、ということがわかったら、2と同じ対応。
5.さて、実は一番多いのは、「嫌い」と言っているけれども、実は嫌いなのではなく、好きだという自信が持てない、です。
まさに、私の出番ですね。
彼・彼女の頭の中に渦巻いていることを解きほぐす感じです。
好きなところをひとつずつ確認してあげる。 やがて「嫌い」から、「どうやら結構好きなのかも」に変化していきます。
そのうえで、どこが引っ掛かっているのかを明らかにして、その人が問題だと思っているリスクとその大きさを明確にする。
すると、あとはみんなが「どうすればリスクが下げられるか」とか「どの程度のリスクなのか」、「リスクを取った場合、どういうことが起りえるのか、どう対処すればいいのか」、知恵を出し合ってくれます。
広告などの「やってみないとわからない」ものが対象の場合は、クリエーターの方々が協力してくれないと前に進みませんので、私の仕事はクリエーターの方々に納得してもらい、対処法を考えてもらうことにシフトしていきます。
もちろん、それを直すともともとのアイディアが成立しなくなる、という場合もあるので、その場合はそれを再度説明しますが、まぁ、世の中、たいていの場合はなんとかなります。
だって、実は「好き」なんですから。
具体例をあげて説明すればよかったですね。
続きの記事を考えます。
お。
ただ、人間同士の感情は複雑ですが、簡単で、対ものに関しての感情は単純ですが、難しいのかもしれない、と思いました。
それは岡本さんもおっしゃっていることなんですが、ものに対しては「なんとなく」が存在してしまうからなんですね。
無視して済むのであれば、逆に簡単で、「なんとなく」は無視でもない。先に「好き」という感情があれば、「彼のこと、どう好きなの?」という質問に「彼のこと?うーん、なんとなく好き♡」なんて会話も成り立つのですが、「どうよ、この案件?」という質問に「うーん、なんとなく好きなような嫌いなような、みたいな♡」なんて、なんだよ最後の「みたいな♡」ってばよ〜(ロケットパンチ!)。と相成る訳ですよね。
コム デ ギャルソンの川久保さんは物事の判断ががもの凄く早いと聞いたことがあります。判断の早さとはまさしくこの「好き」と「嫌い」。好みとかセンスがはっきりしているから、瞬時に判断できる訳です。
中途半端なものがなく、曖昧な感情を持たないと、時間の節約にもなるというわけですね。
ただ、男と女の場合の特に女は「嫌い!嫌い!!嫌い!!!大っ嫌い!」といいながら、「嫌いだけれど、好き」なんて感情があるから、女は始末が悪い。
が、こういう女にこそ男はころっと騙されるのである。
女性を敵に回すつもりはないのですが、こういうのってないですか?
って、マーケティングの話から、まったく逸れてしまった雑感でした。