しかも、私は民俗学なんてド素人。 「ハレとケ」にしても、雑学程度の知識で、年に数度のお祭りがハレなら、それを待つ間の農作業がケ、くらいにしかわかっていません。
それでも、何かヒントがあるような気がして、全く結論のない「備忘録」みたいな記事ですが、よかったらおつきあいください。 (できれば、ご意見、ください。)
前から気にはなっていたのですが、今回考えなおすきっかけをくれたのは、Kaoさんの柔軟剤のサンプルがホテルに置いてあったこと。
「はぁ?」
なんで、柔軟剤なんてもののサンプルが、ホテルに? しかも、長期滞在の洗濯機付きのところならともかく、そこそこ高級なリゾートっぽいホテルに?
「高級感のあるヨーロッパ風の香り」をうたう、その商品、それならばちょっと高級そうなホテルに、ってことなんでしょうか? 正直わけがわかりませんでした。 Kaoさんほどの「賢い」会社がどうしちゃったんでしょうね。
以前、メーカーでマーケティングをやっていたころ、そういえば、こういうタイプの企画をよく提案されましたね。 旅行社から、「御社のこの製品を旅先で使ってもらって、トライアルの促進を」みたいな企画。 地味な日用品を扱っていた私は、基本的にはこの手の提案はすべて即座に捨ててましたが。 なんとなく「合わない・おかしい」という理由で。
旅行って、それも観光だったり高級ホテルでのんびりしたりするのって、明らかに「ハレ」じゃないですか。 そんなときに「ケ」の商品のサンプルを渡されたって、シャンプーなど、使えるものは使いますが、記憶には残らないですよ。 たいていは「あ~、メーカーが協賛してるんだね、きっと。」と考える程度でごみ箱行きです。
と、思ったわけですよ。
仮説。 「ケ」の商品のマーケティングは「ケ」の文脈で行われる方が効率が高い?
どうなんでしょう。 以前、議論させていただいた「スポーツマーケティングのモーメント」は、確かに「ハレ」の商品を「ハレ」の瞬間に印象付ける手法ですよね。 「ケ」の商品やサービスの場合はどうなんでしょう。 疲れて帰る電車のなかで、入浴剤の広告に触れる?
仮説。 「ケ」のカテゴリーにも、ブランドによって「ハレ」っぽいのと、「ケ」っぽいのがある?
私が長くたずさわってきたヘアケアは、日用品としての「ケ」と、ビューティーケアとしての「ハレ」が混在するマーケットだったので、一概に「ケ」のカテゴリーとは言えないかもですが、しかし、やはり誰が見てもパンテーンは「ケ」のブランドですよね。 14日間、こつこつやろうよ、なんてね。 それに対して、Lux、TSUBAKIなどは「ハレ」のブランドです。
さて、そうだとして、何かの役にたつかしら?
仮説。 「ハレ」のメディア、「ケ」のメディアはあるのか? あるいは、「ハレ」のコンテンツ(番組)、「ケ」のコンテンツ(番組)なのか?
かつてTVは「ハレ」の象徴だったように思います。 非日常のわくわくや、新しい知識や視点に出会えたり。 でも、今は、印象としては「ケ」ですよね。 日常をやり過ごすためのメディア。 ときおりオリンピックのような「ハレ」のイベントのおかげで短期的に復活を見せますが。 ということは、やはりコンテンツ次第なのか? 他の媒体ではどうでしょうねぇ。
仮説。 デザインやアートディレクションに、ブランドの「ハレとケ」は影響するのか?
「する」と答えたいですね。 ブランドが極めて「ケ」なのに、晴れ着だけよそいきを着せられてもしっくりきませんから。 逆もそうで、どれほど安さが売りのビールでも、たとえ「毎日家で飲むための」ビールであっても、帰宅後の1杯は、一日の中にある小さな「ハレ」ですから、地味で質実剛健なデザインはダメな気がします。
仮説。 消費者調査に「ハレとケ」は影響するのか?
これは、かなりの確率で、影響しますね、おそらく。 調査会場に主婦を何人か集めて、洗濯や掃除の話を聞いても、誰もホントのことは言わないです。 悪気はないんでしょうが、適当な嘘をつきます。 なので、そんなリサーチはやるだけ無駄、ではなく、やらないほうがいい。 調査会社に呼ばれて、久しぶりにちゃんとした服を着て、お小遣いもらえて、帰りにデパートにでも寄りましょうか、なんて考えている「ハレ」モードの彼女に、「ケ」の話を聞いても、たぶん思い出せないはずです。 定量調査も同じですね。 ネットでの調査が増えているようですが、「ケ」の商品にはうれしい変化です、たぶん。
仮説。 「ハレ」向き・「ケ」向きなクリエーターは存在するのか?
するする。 今まで一緒に仕事したクリエーター、全員「分類」できますよ、どっちが得意か。 「ハレ」向きのクリエーターを「ケ」の商品の広告に当てると、クライアントもクリエーターもへとへとになります。 もちろん、CDくらいまで行くと、豊富な経験を通して作られた「スイッチ」をお持ちですが。
と、ホントに「備忘録」にしかなっていませんね、すいません。
なんとなく、こうしてまとめてみてわかったのは、「ハレとケ」をすべてにあてはまるマーケティングの原則にする、というのは無理ですね。 あるいは、何にでも使える分析手法や、アイディア出しの手法、というのも、たぶん無理かなぁ。
ただ、何かヒントを見つけたりするときに、ちょっと視点を変えるために使ってみてもいいツール、くらいにはなりそうな気がします。
お。
先日 Twwiter で反応させていただいた者です。
楽しく読ませていただきました。
仰られるようにすべてにあてはまるようにはいかないみたいですね。
仕事がら(ウェブデザインをしています)「ユーザーとの温度感にギャップのあるウェブサイト(ウェブサービス)はどこに原因があるのだろう」と思っていた時に、作り手側が「ハレ」と「ケ」の判断ミスをしてしまっているのが原因なのでは?と思ったことがあります。日々使っているウェブサイトが、実際に頻繁に使っているとどうもお腹いっぱいになってきてしまう。それは日常的に使うものなのに「ハレ」のデザインや機能が採用されてるからなのではないかと。
そう思っていたところへいいタイミングでツイートを見つけたものですからつい反応してしまいました。
ウェブでは Flash や Javascript など技術面を切り口として「面倒くささ」や「使いやすさ」が語られがちなのですが、作る対象が日常的なものなのか非日常的なものなのか、そういった風に視点を変えてみるのも必要なのかもしれないと感じました。
どうもありがとうございました。
これからも楽しみにしています。