懐かしいですねぇ。
そしてこうして改めて見てみても、全く古くなってません。 いい広告です。
しかし、なんでいまさらペプシマンなのか? 実は、先日メールで「あれ、好きなんですけど、どう考えれば、クライアントの頭でも、理解できて、納得できるのでしょうか?」というなんとも悩ましい相談があったからです。
クリエーターのみなさんには「はぁ? 好きなんだったらそれでいいやん。」かも知れませんが、クライアントって、「面白さを論理的に理解できて、自分はどこが・なぜ好きなのか」と説明できないと前に進めない動物なんです。 もう少しビジネス風に言うと、「自分がとっているリスクを論理的に説明する責任がある」ということなんですが。
それにしても、いい広告です。
話はそれますが、私は、つくづく大貫さんという方は天才なのだなぁ、と思います。 直接お会いしたことはないので、作品を通しての、想像ですが。 天才の証、といってはなんですが、彼はいつも最初から最高の完成度で世の中に切り込んでくる、が、結局いつも最初の1~3作が一番良くできていて、その後、だんだん完成度が下がっていく。 普通、逆ですよね。 しかし、彼の作品とその裏にある戦略・哲学は、あまりに「完成」していて、「改善」の余地がないからなんでしょうね。 あとで、クライアントに言われて足した部分が、その分だけ完成度を下げてしまうわけです、おそらく。 天才なので、「それはすでに考えたけど、だめだったよ」って思ってると思いますが。
すっかり余談でした。
本題に戻りましょう。
「好き!だけじゃだめで、どこがどうして好きなのか論理的に説明できないと前に進めない」悲しいクライアントのために、この広告を分析・解説する、でしたね。
この広告の特に優れている点は2点。
まず、「炭酸飲んでしゃきっとする」という、差別化もくそもない平板な戦略を、見事にアイディア化していること。
そして、そのアイディアを見事に具体的に表現していること。 大貫さんらしい、すごい完成度で。
「ペプシ(マン)は、ちょっとやる気がないときに必ず助けにきて、しゅわっとリフレッシュしてくれる僕らのヒーローです」とでも訳せばいいでしょうか。 戦略に真っ向から取り組んでいる、ぶれのないアイディアですね。 そのうえで、「飲めばすぐに、しゃきっとする」という機能的な便益を、「ペプシがすぐに助けに来てくれる」と置き換えているところが、見事ですね。 心に響きます。
具体的な表現においても、手を抜きません。 中でも見事なのが、僕らのヒーローペプシマンが、ずっこけヒーローキャラなところでしょうか。 ペプシという、とてもカジュアルな飲み物に、2枚目ヒーローは似合いません。 (Cokeの多くの広告がいけてないのは、Cokeを2枚目に描こうとするからなのかも知れませんね。) 呼んだらすぐ来てくれる、あるいは、呼んでもいないのに素早く助けにきてくれて、ちょっとみんなを気持ち良くして、でも、最後にちょっとこけてしまう。 憎めないキャラですね。 (45歳以上の男の子には「スペクトルマンみたい」と言えば、「そうそう!」でしょうか。 45歳以下の方にはどのヒーローがいいたとえなのか、わかりません、すいません。)
その他、外人タレントを使い、バタくさい映像を作り上げ、「いかにも!」な音楽を付け、など、いいところを挙げていくときりがありません。
しかも、キャラモノは、3~5作目に「見ている人を裏切るドラマの展開」をするとキャラの人間味とキャンペーンの広がりが出る、というのが、鉄則なんですが、それすらもやってしまっている。
おそるべし、、、、。
こうして「説明」してしまうと、興ざめですか?
しかし、冒頭にも書いたように、クライアントという動物は「好き」だけでは動けないんですよ。 なので、クリエーターのみなさんは、興ざめかも知れなくても、面白さの8割しか伝えられなくても、きっちり「説明」してあげてください。
お。