先週、3回にわたった宣伝会議大阪教室「上級コピーライター養成講座」のカリキュラム「クライアントの論理を学ぶ」を無事(?)終えました。
無事、というのは、教える側の私の感想で、さて、参加のみなさんの役に立った・ためになったのかは、わかりません。 私はコピーライターでもクリエーターでもないので、「技術」を教えることはできません。 それでも、クリエーター・クライアント・ブランド・お客様の関係と、そこで「表現」がどのような役割を担うのか、という視点は、いつか思い出してもらって、役に立つ日がくるんじゃないでしょうか。
さらなる「鼻向け」に、先日の記事「コピーライターという仕事は得意先にどう見られているのか」と、それに対する「む。」さんからのお手紙に引き続いて、もうひとつ、みなさんの先輩、BコンのコピーライターM田さんからのメールをご紹介しますね。
~~~
宣伝会議、懐かしいです、私も20代のころ通っていました。
講師の方々にも恵まれ、そこで学んだことは今でも私の背骨になっています。
またその頃は、いろいろな先輩コピーライター、大御所コピーライターの方々のお話を聞いたり本を読んだりして自分なりに修業をしていました。
そうして身につけた自分なりのコピーに対する基本的な考え方を、思いつくままに書き連ねて見ますね。
あくまで思いつくままなので、ぜんぜん体系的にまとまってはいませんが、あしからずです。
私は、コピーというのは、「商品と消費者の新しい関係の提示」だと思っています。
クライアントにとって商品は、かわいいわが子。
こんないいとこがある、あんないいとこもある、とわが子自慢をしたがります。
そしてそれを伝えることを代理店やコピーライターに求めてきます。
しかし、です。
クライアントが言いたいことと、消費者が聞きたいことは、必ずしも同じでなかったりします。
その商品が、ターゲットにとって本当に価値を持つ側面は何なのか?
それを発見するするのがコピーライターの仕事であると考えます。
商品、ターゲット、コピーライターで二等辺三角形を作ったとしたら、コピーライターはその頂点に立って商品とターゲットを俯瞰して眺め、「商品と消費者の新しい関係」を探していく、という感覚でしょうか。
そうやってコピーライターが苦心して見つけた「関係」は、もともとクライアントが言いたがっていたことではない場合もあります。 しかしコピーライターは物怖じせず、なぜこの関係のほうが商品を売るのかという説明をしていかなければなりません。 思考の道具はコトバですし、そのコトバはコピーライターの領域ですから。
そういった意味ではコピーライターは、お。さんのおっしゃるとおり「クライアントとクリエイター(代理店)の通訳」にならなければならないと思います。
そのとき同時に、「クライアントと消費者の通訳」もしなければならないわけですが。
この「関係の発見」「価値の発見」といった作業は、今で言うストラテジックプランナーの領域に足を踏み入れているのかもしれません。
しかし私は、コピーライターにもその視点は欠かせないと思っています。
一般的にコピーライターというと、”うまいコトバ考え屋”、"コトバの魔術師的仕事”と見られることがあります。
「しかし、関係の発見」「価値の発見」でいいものが見つかれば、別にコトバをあれこれいじくり回す必要はないのです。
ですから、すぐれたプランナーはすぐれたコピーライターになる素質があると思いますし、その逆もまた然りだと思っています。
ただし。
コピーライターがこの作業で気をつけなければならないのは、その「関係、価値」を具体的に考えること。
これがじつはいちばん難しいことだったりするのですが。
人間、学校に入って高等教育を受ければ受けるほどに、抽象的思考の方が得意になってしまっているんですね。
でも、抽象的な概念で考えてしまうと、「関係の発見の入り口」までしか行けないのです。
ひょっとするとこのあたりが、プランナーとコピーライターの違いなのかもしれません。
そして、お。さんのおっしゃる「概念としてしか存在していないものに、あるいは、説明しないとわからないものに、「名前」をつける。」ということにあてはまるのかもしれませんね。
Bコンコミュニケーションズ
M田
~~~
さて、講義の中でも「コピーライターという職業は早晩なくなるかも知れない」と、お話ししましたが、「コピーライティングという仕事はなくならない」ともお話ししました。
M田さんも言うように、人と人、人とモノの関係・価値を具体的な言葉で「名前を付ける」という仕事はなくならないからです。
養成講座に参加、私のつまらない講義に耳をかたむけてくださってありがとうございました。
みなさんの中から、ひとりでも多くの方が、人と人・人とモノの「関係を発見」し、「名前を付け」、「通訳」し、「語りべ」となる、プロのコピーライターになってくれることを期待しています。
お。