ひとつ前の「コピーライターという仕事は得意先にどのように見られているのか?」の記事に対して、現役のクリエイティヴ・ディレクター(コピーライター出身)の方から、メールをいただきました。 こちらにご紹介させていただきます。
コピーライターの方のみならず、マーケティングに関わる方々への刺激となれば、と。
BコンのCD「む。」さんです。
彼とは10年ほど、一緒に仕事をさせていただきました。 (Vidal Sasson、h&s、アテント、など)いくつかの仕事を通して「ブランドの言葉で語る」ことのすごさ・大切さを見せてくれた方です。 というか、私にそうしたことを教えてくれた方々のひとり、ですね。
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お。さん、
ご無沙汰しております。
コピーの考え方について、最近、なるほどと思わされた一言があります。
それは、お。さんも講師をされている宣伝会議のコピーライター養成講座の生徒募集広告に載せられた岩崎俊一さんの一言です。
「コピーはつくるな、発見せよ。」(もしかして正確ではないかもしれませんが、こんな言葉でした。)
いや、さすがです。そうなんですよ。コピーはつくってはいけないんですよ。
この言葉の正しさを証明するような、いいエピソードがあります。
それは懐かしいJ-PHONE時代の写メールネーミング開発の話。
当時、担当者たちは、この新しい機能をいつの間にか自然発生的に『写メール』と呼んでいたんですね。
ただ、彼らは、この機能にふさわしい名前が写メールだとは夢にも思わなかった。
つまり、彼らがつくった先端機能にぴったりの、かっこいい名前をまさに“つくろう”としていたんですね。
しかし、なかなかいい名前が思いつかないで困っていたとき、担当者の誰かが発見したんです。
「おい、いつの間にか、俺たち写メールっていう言葉を普通に使ってないか。」
もう一人の担当者が応えます。
「そう言えば、みんな使ってるよな。」
さらにもう一人が
「この、言葉の広がり方って、すごくないか?」
彼らは、やっと気づいたのですね。
青い鳥は、自分たちの一番そばにいたことを。
(なお、上記ドラマは、台詞の掛け合いなど一部フィクションを含みます。)
コピーライターが、いいコピーを生み出したとき、それは発見がきっかけとなっているケースが多くあります。
レストランの隣の席の女性が放った言葉だったり、
何気なくめくった雑誌の片隅にあった言葉だったり、
昔自分が空想していたことの記憶だったり。
それが与えられたお題としっくりくる瞬間があり、
その瞬間は電光石火であり、苦心してつくったというより、
一瞬で「見つけたー!」って感じに近いんですね。
また、そういうものって、理屈で筋が通っているというものより、
「なんか変かもしれないけど分かるんだよね」とか、「チャーミングだから何か記憶に残るし口に出したくなるんだよね」という言葉なんです。
お。さんのブログの中に
「概念でしかなかったものに、命が宿ったり、思いや信念を伝えるニュアンスが備わってきたり。」
という言葉がありましたが、もしかしたら、コピーライターは“そのマーケットの中で、生命力の強い言葉を見つけ出す”ことが仕事の一つなのかもしれません。
だから、クライアントさんにお願いしたいことは、
理屈が通っているかどうかや、全部言えているかどうかではなく、
「なんか変だけど分かるな」とか
「なんかイビツかもしれないけど気になるな」という言葉を、
もっとまっさらな気持ちになって選んでほしいということです。
イビツなものほど、心の襞に触れるのです。
もう一つ、コピーライターにとって大事なことは、憑依体質であるということです。
これも、お。さんのブログの内容と一致しますね。
いくら、気のなる言葉をつくれたとしてもブランドのキャラクターとあっていなければ大問題です。
だから、コピーライターはいろいろなブランドを取り憑かせることのできる憑依体質じゃないとだめなんです。
先ほど例に出したJ-PHONEの話。
担当者たちは、J-PHONEをかっこいいブランドにしたかったんでしょうね。
だから、岡靖道さんなんかにえらくトガッタ広告をつくらせていました。
でも、消費者から見れば、一番安いわけだし、一番規模が小さかったわけだし、かっこいいというより身近な存在だったわけですよね。
つまり、消費者側から受け取るブランドキャラクターには、写メールというヘンテコな名前がしっくりきたのだと解釈できます。
身近な存在のくせに、かっこいいイメージをコピーライターに憑依させて名前をつくらせていたら、こんなに広がらなかったかもです。
あ、そう言えば、もとJ-PHONEのソフトバンクは、キャメロン・ディアスやブラッド・ピットのキャンペーンより、白い犬の方が成功していますね。
ま、そういうDNAを持っていたということです。
あと、お。さんがご指摘の、クリエイターとクライアントの通訳というのも重要な役割だと思いますよ。
アート系の方は、やはり説明ベタが多いですからね。
ということで、長くなりましたが、お。さんのブログの内容は、現役コピーベースクリエーターが読んでも納得できるものだと思いました。
これからも、えとじやを楽しみにしております。
それでは失礼します。
Bコン・コミュニケーションズ
む。
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む。さん。ありがとうございました。
「憑依体質」ですか、うまいこと言いますね、さっそく使わせていただきます。
お。