いやいや「極意」というほどのことではないんです。 ただ、「私はいつもこのように考えています」というフレームワークみたいなものを、ちょこちょこ触れてはきたものの、そういえば、ちゃんとまとめて書いたことはなかったので、書いてみることにしただけです。

おもしろいのか、それはホントに正しいのか、あらゆる場面で使えるものなのか、ユニークなものなのか、などは、この際気にせず。

だって、私はこれで(立派に・・・?)やれてるんで・・・。

 

最終的には「ブランドとは『ひと』である」ということにたどり着くお話なんですが、それはもう少し先の話、で、まずは、私が(ブランド)マーケティングのもう一方の当事者、ひと(消費者・お客様・生活者)についての理解をどう整理しているか、から始めます。

(全部で何話くらいになるのか、まだ見えてませんが、いくつかに分けて書いていきます。)

 

フレームひと

 

~「ひと」を捉える・整理して理解してみる~

 

ひとというのは、やっかいな生き物です。

マーケティングにとって(も)。

だからおもしろいんですが、ともかくやっかいです。

 

「いいですね、買おうと思います」と答えても、買ってくれない。

「まぁまぁですよね」と言いながら、何年も愛用していたりする。

何年も愛用している商品の名前やメーカーを間違って覚えている。

除菌しますって言うと、「うそ~」と答えるので、すごく除菌しますと言うと、「それは身体に悪そうだ、きっときつい漂白剤とか入ってるに違いない」とおっしゃるので、漂白剤は入っていませんって言ったら、「あら、やっぱり漂白剤が入っているのね、きっと!」と・・・。

買う気満々なのに、製品とかデザインとかに、片っ端から文句つける。

CM流してないのに、買ったきっかけを聞くと、「TVCMを見たから」と答える。

流行ってたのでAを買ったひとに、今、Bが流行ってますよ、と伝えると、「流行りなんかに流されたくない!」と。

「健康にはとても気を付けている」と答えるので、お勧めしたら、「年寄り扱いするな」と怒られ、

おしゃれに見えますよとお勧めしたら、「そんなのはもっと若い人に勧めてあげたら?」といなされる。

あなたはどう思いますか?と聞いているのに、「XXXXみたいなひとにぴったりで、とてもいいんじゃないかと思う」と答えて、自分はどう思うのか言ってくれない。

・・・・・

 

少しでも対消費者マーケティングに関わったことのある方なら、みなさん経験されているはずです。

そして、これらの「矛盾」を解決してくれる万能の手法は、無い。

結局、やるべきことは、ただひたすら「なぜそう答えたのか」を「自分で考える」ことのみなのですよ。

いやぁ~、楽しいですねぇ。 皮肉ではなく、本当にそう思います。

(ときどき、「だから消費者調査なんてやめてしまえばいいだけだ」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、それは一部の天才にしかできないことだと思いますし、せっかくの武器を捨ててしまっているだけのようにも思います。 使い方と、「あなたの考える力」の問題かと。 もちろん、たくさんやればいい、というわけでもありませんが。)

 

しかし、「自分で考える」にしても、何かモデルなり、方式なりはないのか。

もちろん、世の中には、たくさんのフレームワークや分析手法や調査手法があふれているので、そういうのにヒントや解決策を求めたくなるわけですが、その場合でも、何がわかっていないのかがわからない限り、正しい手法を選ぶことはできないので、やっぱり「自分で考える」を避けて通れない。

 

そんなとき、私はどのように整理しているか、ですね。

 

 

まず、ひとは「感覚」と「こころ」と「あたま」と「たましい」からできていて、でも、外から見えるのは「ふるまい」(本人が言ってもいいと判断したことば・発言(あたまの一部)を含みます)だけ、だ、と捉えます。

(余談: 感覚だけ漢字なのがくやしい・・・誰かいい言葉あったら教えてください!)

SensesHeartMindSoulBehaviorということですね。

と書けば、(ほとんどいないであろうけれど)このブログの愛読者は、私がすでに何度も書いてきたことだと気づかれるかと思います。

Senses=五感、Heart=情緒・右脳、Mind=理屈・左脳、Soul=主義・価値観・こだわり、Behavior=行動・表現、と言い換えてもいい。

(主義・価値観、理屈とか書くと、すごいことみたいに見えますが、あくまで関連するカテゴリ・生活領域内の、です。 これで全人格を解剖してしまえるなんて思ってません。)

 

ひとは、例えば、外界からの刺激を感じ取り、それに対して何らかの感情を抱きます。 その感情に対して、頭で考え、記憶と照らし合わせて、さらには長年の積み重ねで形成されてきた自分のこだわりや基準、価値(ときに社会的な規範)と照らし合わせて、どのように対応するかを決めます。

もちろん、順番が違ったり、どれかをすっ飛ばしたりもします(赤信号で止まる、なんて、いちいちこんなことしないですからね)。 というか、日常のほとんどの行動は、すっ飛ばしてるほうが多い。

 

さて、ここでちょっと注意しないといけないことは、この5つの要素に、必ずしも論理的なつながりや明確な因果関係が存在しているとは限らない、ということでしょうか。

結構、バラバラ、です。

ホントは?と言われても、そんなこといちいち考えてないし、わかっていたとしても、そもそもホントのことを、そうそう他人に明かしはしないですしね。

だから冒頭にあげたような、一見すると矛盾するようなふるまい・言動が頻発する。

 

ここで、世の多くの、驚くほど多くのマーケターたちが撃沈してしまうのです。 なにせ、みなさん、頭が良くて、分析し、考えることが仕事=Mind中心のひとたちなので、「この5つの要素に、必ずしも論理的なつながりや明確な因果関係が存在しているとは限らない」が、腹落ちしないんですね。

だって、調査でX%のひとが、「XXXXだったら使う」って言ってたじゃん。

それ、ただの「ふるまい」の、しかも、ほんの一部で、しかもホントなのかわからないんですから。

 

ただし、完全に矛盾したまま、バラバラで無関係なままか、というと、実はそうでもなく、ゆるやかなつながり・一貫性、くせみたいなものが存在します。

特定の生活領域(広義のカテゴリ。 業種という意味ではなく、生活上の関連性という意味)であれば、これら5つの要素は、ある程度関連が見えてきます。

 

ともかく、まずは、あなたの商品・サービスの領域において、ひとは、どのように感じ、想い、考え、判断し、行動しているのか、を、把握すること、あるいは、考える、想像してみること、です。 外から見えるのは、属性と「Behavior・ふるまい」だけですから、推測したり想像したり確認してみたりしないと、たどり着けません。

つまり「深読み」です。

それらの間に矛盾があっても、それはそれで置いておきます。

むしろ、矛盾しているほうが普通で、しかも、そこにはインサイトが潜んでいる可能性も低くないので、「なんで?」があったら、喜びましょう。

「深読み」なので、間違っていることもありますが、それも含めて、いろいろ疑ってみる感じです。

 

まぁ、毎回毎回、このような図を埋めているわけではないんですけどね。 私自身は、もう2~30年これやってるんで、慣れちゃってますから。 でも、わかりやすいように、あえてまとめてみると:

 

えとじやフレームワークひと

 

例えば、「買う気満々なのに、製品とかデザインとかに、片っ端から文句つける」のは、どういうことなのか考えてみる。

これ自体は、Behavior=行動・ふるまい、ですが、「買う気がある」のは、主にHeart=こころの働きですよね。 文句つけているのは、Mind=あたまの働きです。

もしかすると、彼はその商品なりブランドのことが、大好き、愛してさえいるのかも知れませんよ。 (Apple好きのひとを思いうかべてみたりすると、わかりやすい?) すでにSoul=自身の価値観・主義のレベルでブランドを愛していて、その愛情の表現として「文句をつけている」のかも知れない。 だとすると、彼の文句は、笑って聞いてあげればいいわけです。 (もしかするといい発信者になってくれるかも。)

いや、実は、「買いたい」けど、なんらかの理由で「買えない・買うべきではない」と判断したいのかも知れません。 こころは欲しいなぁ~と言っているが、あたまが買うなと言っている状態です。 欲しい理由は、「なんとなくかっこいいから」、つまりSenses=感覚からHeart=こころに来ているものだけれど、すでに同じようなものを持っていたりして、さすがにダメだよね、と。 なので、一生懸命「買わない理由」を探しているのかも知れないわけです。 だとすれば、Mindに「買ってもいい・買うべきだ」という後押しを探してあげればいい。 例えば「今だけの限定色」とか。

どちらもあり得ます。 ので、もっと彼を観察してみよう、違う質問を投げかけてみよう、となります。

 

「あなたはどう思いますか?と聞いているのに、『XXXXみたいなひとにぴったりで、とてもいいんじゃないかと思う』と答えて、自分はどう思うのか言ってくれない」ひと、結構いますよね。 グループインタビューとかやっていると、「以前もお会いしましたよね?」くらいお会いします。

(自分の意見を聞かれているのに、他人・「みんな」の話をする、のは、ホントに日本人の悪い癖で、これが仕事仲間だったら「お前の意見を聞いてるんだ、お前に、他人や、ましてや『みんな』の話をする権利があるのか? そんなことは聞いてない!」と一喝すればいいんですが、相手が調査対象者やお客様だとそうはいかない・・・。)

さて、彼女はおそらく遠回しに「私は買いますとは言いたくない」と言ってるんですよね、きっと。 それが、「私の意見」を避けるふるまいにつながっているように思えます。

どうしてでしょう。

もっともありそうなのは、こころの中で、ホントに欲しくないと思っているが、それをそのまま言うのは相手を傷つけてしまうので、遠回しな言い方をしている、というケース。 (道徳的に正しいふるまいをしているように見せたいのかも。) たいていはこれなので、その場合はスルー。

しかし、よくよく話を聞いていると、実は、彼女、商品のこと、機能や便益をかなり理解していらっしゃるようで、あたまは「これ悪くないかも」と判断している可能性があります。

その場合、「何かが引っかかっている」か「何かの理由で響いていない」のかも知れないのですよ。

これを使っていることが他人に知られたら恥ずかしい、と思っているのかも知れない!

それがこころの作用であれば、解決可能なはず。

それが「私の主義に反する」=たましいの作用の場合は、たぶんあきらめたほうがいいでしょうが、その原因は知っておきたい。 変更可能なものかも知れないので。

いや、単純に、第一印象で「あら素敵」と感じられなかったので(Senses)、こころが動かなかったのかも知れませんね。 それは、デザインや色、手触り、形、ネーミングの響き、音楽などが原因なのかも。

または、それを使っている自分を素敵だと想像できるような、困りごとがなくなってホッとしている自分を想像できるような情報=インサイトが欠けているので、響いてないのかも?

どれだろう? もっと聞いてみよう、観察してみよう。

などなど・・・。

 

とまぁ、こういう具合に、「なぜそうなのかを自分で考える」ための、すなわちより確実な深読みにたどり着くための整理ができる。

できる? いや、私はそうしている、というお話。

 

まずは、ざっくりと「ひとを捉える」フレームワーク的なもののお話でした。

 

お。