(示し合わせたわけではないのですが、お題が先日のK。の記事とかぶってしまいました・・・ それだけ、えとじや的には「あるある」のテーマなのですが、)

 

「調査さえすれば答えが出る」と期待をして見切り発車してしまう前にやってみること。というお話です。 

今回は、主に定量に関して。(定性調査に関しては、安心して調査ができるようになった頃にアップする予定です)

K。の記事とは切り口が違う部分もあるので、よければこちらも読んでみてください。

 

 

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新規プロジェクトや商品開発で行き詰った時に、“道が開けるかもしれないし、ちょっとアンケート調査でもやってみようか。” という声をよく耳にします。 

でも、残念ながら、多くの場合それは解決法にはなりません。

“だって、アンケート調査は、インタビュー調査と違ってビシッと答えが出るんじゃないの?”と思われるかもしれません。 でも、出るのは数字であって答えではないのです。 

 

例えば、“この商品が売り出されたら買いたいですか?”と聞いて、45%が「はい」と答えた場合、これが良いのか悪いのか、

“このサービスを利用したいと思いますか?”と聞いて、75%が「はい」と答えた場合、それが何を意味するのか・・・、
これだけではわかりません。 

このような評価形式の調査は、ベンチマーク(評価の基準)とセットで初めて意味があります。 

もしも、同じ条件でとった競合のデータがある、または、過去に成功した商品のデータベースがあれば、それらをベンチマークにして成功の可能性を判断したり、商品・サービスの改善につなげたりすることは可能です。 
でも、そういったデータベースを作るのはお金も時間もかかります。 おそらく、大企業でないと難しいでしょう。 

 

ベンチマークがないのに数字だけ出てしまうと、余計に惑いますし、最悪の場合、間違った方向に進んでしまう可能性だってあります(しかも、評価形式の調査は、商品やサービスの案がある程度固まっていないと始められない)。 

だから、困ったからといって、“とりあえず、調査やってみたらいいじゃない”というのは、おすすめできません。 おそらく、期待したような「答え」は出ないと思うので。

(しかも、そう言われると現場の担当者は、“えっ!急に調査って、何をすればいいの??”とプチパニックに。 そういった相談者もたまにいらっしゃいます。)

 

 

 

じゃあ、どうすればよいか。 

クライアントさんのお話を聞いていると、困っているのは、たいてい開発の初期段階。 その段階では、思いついたアイデアをいきなり調査にかけるよりは、まずは戦略や方向性を固めていくことが先決です。 どんな人に、どんなイメージで、どんなベネフィットを提供したいのか、ポジショニングはどうするか・・・などを整理していきます。 

そのためには、「現状把握」から(これ、意外に手薄になっていませんか?)。 
関連市場や消費者、自社、競合を理解するところから始めます。 

 

青もみじ②
ラッキーなことに、そういった市場分析のための情報(いわゆる2次データ)は、わざわざ調査をしなくても手に入るものがたくさんあります。

 





例えば、

 ・関連カテゴリーの市場規模

十分なビジネスサイズがあるのか、拡大しているのか縮小気味なのか。 業種にもよりますが、政府や業界が出している統計が参考になります。 

 ・消費者の使用パターン

年間消費量や消費額、使用頻度、単価とそのトレンド。 年齢や世帯ごとに違いがあるのか、どんな人がよく使用しているのか、など。 上記の統計で見ることができます。 

使用理由や購入理由など、もう少し詳しく知りたければ、調査会社や企業が公開・販売しているデータを探してみるのもよいでしょう。 

 ・関連商品やサービス

競合しそうなもの、もしくは、お手本・ベンチマークにしたい商品やサービスの情報はインターネットを活用して収集できます。 ホームページを見ると、商品のコンセプトやスペックだけではなく、その会社の戦略も類推できます。 プレスリリースやIRもよい情報源に。

 

こういった現状把握をしながら、ポテンシャルの高い市場やターゲットを見つけていくわけですが、コツとしては、初めから対象カテゴリーや競合商品をピンポイントに絞らずに、まずは広くとらえること。 

普段目にするカテゴリー分けは、業界や企業側の都合で分けられているものがほとんど。 消費者にとって代替可能なものとは何かと考えることを忘れないように。 

視野を広くしておかないと、うっかり大事な部分を見逃してしまうかもしれません。 

 

 

そして、何よりも役に立つのが、

 ・(直販の場合、自社で持っている)販売データ

既存品の売れ行きを把握することは新規開発にも有用です。 ヒントがたくさん隠れています。 

メーカー勤務だった時は、手に入れたくても入らない、喉から手が出るほど欲しかったものなので、販売データを自由に使えるというのはうらやましい限り。 だからこそ、それを十分に使っていない会社が多いことに驚きます(本当にもったいない!!)

 

さらに、顧客カルテがあれば、自社が今どんなお客さんに支えられているかもわかります。 ロイヤルユーザーがどのくらいいるのか、それはどんな人なのか、どこにいるのか、どんな商品がお気に入りなのか。 また同時に、アプローチはできているのにリピートしてもらえなかったお客さんについてもわかります。 そうした分析から、自社の強みや得手・不得手を知ると、今後の方向性が見えてきます。

 

 

最後に、もう一つリストに加えるとすると、
 ・すでに手持ちのアンケート結果

使用者に満足度アンケートはとっているけど、集計したことがない(クレームに関わるコメント欄だけはいつも読んでいるけれど…)と言う話はよく聞きます。 まずはそれをきちんと見てみるというのも手ですね。



わざわざ新たな調査をしなくても得られる情報はたくさんあります。

せっかくヒントとなる大事な原石を握っているんですから、宝の持ち腐れにならないように、まずは磨いてみてください。 

いい石を見つける目と磨くスキル、あと、多少の忍耐は必要ですが。 どこかに答えが転がっていないかなぁ~と他所を探したり、漠然と調査をしたりするよりも確実です。 


困った時はアンケート調査、ではなく、まずは市場・消費者理解から。

「うちはやっているよ」という方も、もしかしたらもう少しできることがあるかもしれません。 通常業務が難しいこの時期だからこそ、まとまった時間で、あらためて見直してみるのも今後のための良い投資かもしれませんね。

 

 

和。