“消費者インタビューは経験がないのですが、話を聞くコツってあるんですか?”
と相談されることがあります。 
初めてそう聞かれたときは、どう答えるとインタビュー調査初心者にピンとくるのだろうかと、返答に困った覚えがあります。 


考えてみると、「本音を見抜く術」や「やってはいけないこと」など、経験者を対象とした記事はK。がたくさん書いてきましたが、“インタビュー調査初心者が気を付けるべきこと” といったものはなかったような・・・  

と、いうことで、今回はインタビュー調査の「聞き方=聞くときの姿勢と聞く(見る)べきポイント」について書いてみました。 インタビュー経験の浅い人が陥りがちな点も織り交ぜながら。 普段は無意識過ぎて、あたらためて振り返らないと気がつかないくらいのベーシックなことばかりですが。

初めてインタビュー調査に参加する、または、数回参加したけどもっと上手に聞けるようになりたいという方のヒントになればうれしいです。 プロジェクトに調査初心者がいて何かアドバイスしてあげたいという経験者の方も、是非。


さらに、「インタビュー調査の聞き方」と言いましたが、内容がベーシックであるがゆえに、調査以外の“相手を理解することが大事な場面”にも割と当てはまるのではないかと思っています(たとえば、部下との面談などは、どうでしょう?)。 
みなさんご自身のシチュエーションに当てはめて読んでみてください。




 

花①201906

まずは、
(当たり前すぎて誰もあえて言わないと思うのですが)

「対象者に興味を持つ」こと。

これから数時間頭を突き合わせて話をする人のことを “この人ってどんな人なんだろう” と興味を持つのって、やっぱり大事ですよね。 
当然に聞こえますが、自社商品を「いい」と言ってもらいたい、とか、仮説を(ガチガチに固め過ぎていてそれだけ)確認できれば満足、といったような、“言ってほしいこと”に関心が向いている人、少なくありません。
 

興味があるのは「目の前の人」ではなく、「その人の(商品やサービスに対する)評価」だけ、だなんて、せっかく時間を費やしてインタビューをしても情報の大部分を取りこぼしているようなもの。 
欲しいコメントが聞けたとしても、結局ターゲットがどんな人なのか本当のところは理解できないまま。 もったいないです。

今話をしている人がどういう人で、何を大切にしていて、どう感じ・考えていて、だから何を評価するのか・しないのか、というのをまるごと知りたいという素直な好奇心や、それを探ることを面白いと思えることがインタビュー調査のベースなんじゃないかと思います。
 
ちなみに、えとじやでは、インタビュー前に調査会社からいただく基本の属性情報を見るだけでも “この人、こんな人なんじゃないかな…” などと想像しながら盛り上がることもしばしばです。



次に挙げるとすると、

「対象者を評価しない」こと。

自分たちの商品やアイデアを理解しないから“この人はわかっていない”と切り捨てる、というのは言うまでもなくNGですが、それ以外にもたまにあるのが、

“言っていることの筋が通っていないので、この人、論理的でないよね” などと言って、それ以上理解する努力をしようとしない状況。


でも、話をしている人にはその人なりのロジックが必ずあるはず。 
筋が通っていないように感じるのは、まだそこをきちんと理解できていないから(もしくは、何らかの理由で意識的に、または無意識に本当のことを話していない可能性も)。 話す側の論理性の問題ではなく、実は、聞く側のヒアリングスキルの問題である場合が多いんです。 
 

もちろん、価値観も幸せだと感じるポイントも(面談だったら、やりがいを感じるポイントも)人それぞれ。 調査を通していろいろな人に会えば会うほど実感しますし、聞く側の基準で判断してはいけないなと感じます。 



最後は、

「対象者をよく見る」こと。


特に話している時の表情の変化を見ておくことは大事です。 そのため、私たちがインタビューをする場合、メモを取ることはほとんどありません。 その間に大事な瞬間を見逃すかもしれないからです。 
(あまりにメモらないので、“録音してるんですか?”とか、“記録なしにどうやってサマリーを書くのですか?”と心配されることもよくあります 笑)


対象者が発した言葉だけでその人を理解できるなら、テキストマイニングで十分。 でも、同じ言葉でも話し方や表情によって、解釈は違ってくると考えています。


例えば、うれしそうに話していることは、その人にとってとても大事なこと。 だから絶対に聞き逃さないように。

愛想のよい方でもそうでない方でも、12時間話しをしていると少なくとも2回くらいは、表情がパッと明るくなる瞬間があります。 愛想笑いとは違う、心から楽しそうな、ちょっとしたテンションの高まり。 見ていれば気付きます。 
それは、自分の好きなことだったり、得意なことだったり、大事な思い出だったり… その人を理解するのに絶好の糸口なので、しっかりつかみましょう。


反対に、無表情なのにやけに話が流暢な場合。 それは、自分の考えを話しているのではなく、単に聞く側の期待に応えようとしているだけかもしれないので要注意です。

“あ、知ってます、この商品。 新しい成分が入っているんですよね。 ○○に効果があるらしいですし、○○さんもおすすめしていたので最近話題になっているみたいで…” なんて、どこかのサイトに書いていたようなことを立て板に水で話すなら、こちらを慮って話しているのかも。 

もしそれが、自分が購入した商品についてなら、正しい選択をしたと自分自身に言い聞かせているだけかも・・・決して、それが気に入っているとはかぎりません。


他にも、“えぇ、やっぱり健康のためには手作りが一番だと思います。 外食だと塩分が多いですし。 みそ汁も出汁をきかせると減塩できると言いますし、出汁をとるのは大事だと思います…” といったような話を勢いよくしゃべるのに全く熱が感じられない場合は、「こうあるべき」という世間一般の模範解答を話してくれている、という可能が高いです。

この人を、“すごく健康意識が高い人なんだ”と見るか、“現実とのギャップがありそうだからもう少し探ってみよう”と思うかは雲泥の差。 ヒアリングスキルにかかっています。


 

 

花②201906ところで、対象者の人となりをより理解したい場合には、訪問調査で観察するのがおすすめです。 自宅訪問させてもらえる機会があるなら、差し支えのない範囲で生活環境を見せてもらうとよいと思います。 それが難しいなら、(テーマ次第ではありますが)日記を書いて来てもらうのもよいかもしれません。


もし、「言っていること」と「やっていること」が違う場合、そこには何か面白いインサイトが隠れていそうです。 矛盾しているからと一掃してしまうにはもったいないポイントです。

 

 


以上、インタビュー調査初心者の心得のようなものを挙げてみました。 

インタビューは「聞く」だけでは不十分。 耳にした言葉をそのまま受け取るのではなく、むしろ、言葉になっていないもの・言葉の裏にあるものを観察しながら察するのが大事だということですね。

とは言え、まずは一回やってみる!というのが一番。 
いきなりモデレーターは難しいかもしれないので、経験者の横で一緒に聞いてみる。 そして、自分の解釈と経験豊富な人との解釈を突き合わせてみるのが手始めだと思います。 
もし解釈が異なったら、なぜ、どのポイントでそう解釈したのかを話し合ってみることをお忘れなく。 それを繰り返していくと、上手にインタビューを見たり聞いたりできるようになるんじゃないかと思います。 お試しあれ。

 

和。