えとじやブログ - ひねくれマーケッターのひとりごと

ひねくれマーケッターのひとりごと

ここで、一旦、Senses/Heart/Mind/Soul/Behaviorモデルから少しだけ離れて、寄り道。

ひとにとって「カテゴリー」って何なんだろうというのを考えてみます。

寄り道、ですが、次に進むために重要な考え方であり、また、みなさんがご自身のブランド・商品・サービスのポジションを考えるのに、そしてインサイトを開発するのに、絶対いいヒントになると思いますので、こっちの道をまわっていきますね。

 

なお、いきなりここから来られた方、で、これの前、何の話してたの?という方へ:

    極意のフレームワーク~1.ひとを捉える - ひとは「感覚」と「こころ」と「あたま」と「たましい」と「ふるまい」からできていて、ひとが、どのように感じ、想い、考え、行動しているのかを把握する、考える、想像してみる=つまり「深読み」するのが大事ですよ、というお話。

    極意のフレームワーク~2.捉えられることの限界と可能性を知る - 質問して答えてもらえることは、結局、ことばというBehavior・ふるまいに過ぎない、これが「捉えることの限界」。 これに対して、「察する力=深読みする力を身に着ければ、ことばだけに頼らなくても判断できるようになる」、それが「捉えられることの可能性」というお話。

でした。

 

極意3中村


~ひとにとって、「カテゴリー」とは何なのだろう?~

 

さて、通常、マーケティング界隈において、「カテゴリー」と言うのは、売り手が自身の商品やサービスの市場を限定するときに使う用語です。 一方、消費者にとっては、つまり生活実感というレベルにおいては、せいぜい「役割」くらいの意味。 洗濯物に使う洗剤、くらいの。 言い方を変えれば、「売り場」くらいの意味合いですね。

 

ここでお話するのは、それらとは少し違うレベルの概念で、どちらかと言うと「生活領域」ということばのほうが、しっくりくるかも知れませんが、ひと(売り手ではなく、消費者・生活者)が、ある商品やサービスと関連付けて考えているもの・ことたち、その領域をカテゴリーと呼んでみます。 (ややこしくてすいません、なるべく言葉を増やさないようにしたいので、ここでは、広義のカテゴリー、またはカテゴリーと呼びます。)

ひとを理解し、広義のカテゴリーを把握すると、今まで見えてこなかったことが見えてきたり、そのひとと仲良くなる(見てもらえる、買ってもらえる)ためのヒントを見つけられたり、新たなチャンス(市場)を発見できたりする(かも)だから、の寄り道です。

 

 

モノを作ったり売ったりしているひとは、通常「カテゴリー」と聞くと、自身の商品と同じような役割を提供している競合たちとそれらが並んでいる売り場(的なもの)を思い浮かべると思います。 ネットのお買い物が増えて、売り場・買い場の概念が少し変化してきたといっても、「カテゴリー」の枠はあんまり変化していないかも知れません。 メインの競合は、シェアの様子によって変化することはありますが。

例えば、ルックの担当者さんに、カテゴリーはと聞けば、住居用洗剤と答え、競合はと尋ねればマジックリンと即答するのではないでしょうか。 BRAVIAの方は、カテゴリー=家庭用AV機器、競合=VIERAなど、と答えるでしょうね。 味の素の担当者さんは、調味料と答えるのでしょうか(化学調味料と答えてしまわないように注意してらっしゃる気がします、発酵食品ですからね)。 競合はと聞くと「無敵」と返ってきそうで、聞いてみたくなりますが、むしろ無数という答えかも知れませんねぇ。

展開する商品群が、複数の売り場や業界、業界団体や管轄官庁にまたがるケースはありますが、その場合でも、複数のカテゴリーを答えるか、それらをまとめた、何らかの名称を答えると思います。

 

では、消費者=ひとにとっては、どうなんでしょう?

実は、普通のひとの認識に、明確で、かつユニバーサルなカテゴリー分けが存在しているわけではありません。 (競合については、「競合」という言葉は使いませんが、迷った・比べた・スイッチしたモノという形で存在します。)

意識としてあるのは、「同じ売り場で売っているものたち」、または「買い替え可能な似た者同士の集まり」くらいの、おおまかな類別です。 クルマ、とか、家具とか。

 

有名な話ですが、20年ほど前になるでしょうか、チューインガムの売り上げが下がったとき、当初、各メーカーは競合が売り上げを伸ばしたからではないかと、いろいろ分析したところ、全社下がっている、キャンディーが伸びているわけでもない、どういうことだと思っていたら、iモードなどの、携帯電話の機能が急速に充実し始めたことで、「ひまつぶし」の時間がガムから離れていったのが理由だった、というのがありますよね。

これが、ひとにとってのカテゴリー、「生活領域としてのカテゴリー」です。

「通勤などのひまつぶし」という生活の領域に存在する「時間」というリソース、それまでガムが占めていたシェアを、携帯電話に奪われた、ということです。

 

あなたのモノ(商品・サービス)が、ひとの、どの生活領域に属しているのか、何と関連付けられているのか、何と比べられているのか、そもそも重要なのか、誰がその良さに気づいているのか、そうしたことがわかると、モノありきの戦略・プランニングや競合対策の連鎖から、ちょっと離れて考えることができるのではないでしょうか?

ブルーオーシャン戦略、というほどの鮮やかなものでなくても、新しい切り口・インサイト、ブランドの拡張、消費者とのより強い結びつきのヒントは見つかるはずです。

 

 

では、どうやって考えればいいの?、ですよね。

以下は、私が今までに教えてもらったり発見したりしてきたことを、なんとなく(!!)こんな感じかな、と整理しているフレームワーク(もどき)です。

参考になれば。 (たぶん、なると思います。)

 

(先にお断りしておきます。 英単語が頻出してしまって、すいません。 ニュースでこいけさんを見るたびに「こういう風に見えてたらやだなぁ、かっこ悪いなぁ」と猛省し、常に最大の注意を払っているんですが、こういう「概念」の話をするときは、実は英語のほうが、手垢がついてない分、使いやすかったりするもので・・・。)

 

 

まず、第一に考えてほしいことは、Involvement(関与度)です。

あなたの商品・サービス(や狭義のカテゴリー)が提供しているモノ(ベネフィット・機能・役割など)は、お客様の生活や人生にとって、どれくらい関わりの深い・浅いモノなのか、です。

人生・生活における優先度合いと考えてもらっても問題ありません。

(結構ショック受けちゃったりしますけど、大事ですので、理解しましょう。)

 

Involvement(関与度)とは、2つの要素からできています。

ひとつは、関心度、要するに興味ですね。 重要度と考えてもらっても大丈夫です。 そのひとにとって、大切か、強い興味・関心を持っている、気にしていることかどうか。 もちろん、あくまで相対的なものですけどね。

もうひとつは、頻度、つまりどれくらい頻繁に使ったり買ったり目にしたりするモノか。

関与度とは、ざっくりこの二つの掛け算です。

あくまで一般的な傾向としての例ですが、例えば、めったに買わないけど、とても重要なものとしては、住宅とかクルマとか。 (って書くと、金額か?と思ってしまいそうになりますが、そうでもありません。 あとで、ちょっと解説します。)

人生においてさほど重要ではないが、頻繁に使う・買うもの。 食器用洗剤なんかが代表格でしょうか。

両方高いものも存在しますし、両方低いものも存在します。

 

すでに書きましたが、相対的なものですので、大事なことは、その関与度が、そのひとの暮らし・人生において、どの程度の強さなのかを知ってください。

例えば、食器用洗剤は毎日使う、毎月買うものなので、関与度は高めだけれど、「そのひとの、今生きている人生の中で重要か?」と考えれば、まぁ、おそらくかなり下のほうですよね。 

 

その昔、世界に名だたる某リサーチ大好き消費財メーカーさんが、衣料用洗剤の消費者意識を深層心理レベルまで探ってみたいと考えて、ついに催眠術みたいのをかけてインタビューしてみたところ、彼女たちにとって、「洗剤なんて本っ当にどうでもいい」ことがわかった、という都市伝説がありますが、まぁ、そうでしょうね。 そんな大それた調査しなくても、衣料用洗剤の関与度が、息子の学校の成績より高いというのは考えにくい。

 

また、保険の仕事って、大変だろうなぁとつくづく思う(やったことはありませんが)のは、滅多に考えない・使うシーンに出会わないし、いざことが起きない限り重要だったとも気づきにくい、気づいたときはもう遅い、想像して楽しいことではないことが多いので、Senses・感覚もHeart・感情も動いてくれないので、Mind・理屈か、常識というSoul・価値で攻めるしかないのか?・・・・。 Involvementの低いカテゴリーの代表な気がします。

 

一方、これまたよく受ける質問なんですが、「こんなに高い化粧品を使っている女性たちは、世帯所得・可処分所得が高い社会階層のひとに違いない」みたいな。 化粧品に限らず、いろんな商品群で調査していますが、ほぼ間違いなく「所得は関係ない」です。

答えは、関与度が高いから、です。 そのひとにとって、大切なことだから、なんですね。

 

これが、Involvement・関与度。

まずは、あなたのモノの、お客様の生活の中での関与度を知っておきましょう。

高くて困る、という方はいないでしょうが、低いんだけどどうするの?という方、ここからが重要です。

あなたの商品の関与度が低い場合、では、どうすれば高い関心を持ってもらえるのか=カテゴリーの定義あるいは再定義、そのための考え方に移ります。

 

えとじやフレームワークカテゴリー


ひとにとって、どの領域が「カテゴリー」なのかを探るうえでの指針になるのが、この4つの要素です: Community(ひとびと・関係するひとたち)、Task(こと・役割・目的)、Place(場・使用などに関連する場所)、そしてMoment(とき・関連する機会)。

すべてを埋める、というものではなく、どこが大事なのかを整理するための要素だと考えてください。 特にCommunityは、残りの3つすべてと関連することが多いですね。 逆に言うと、Communityは、常に考えておけ、ということでもあります。

(実は、もともと私は、TaskPlaceMomentで考えてたんですが、いつだったか、音部先生から「お。さん、カテゴリーとは、実はコミュニティなんですよ」との、まさに天の啓示をいただき、「おぉ~~~、すっきりした~っ!!」となったんですけどね。 音部さん、いつもありがとう。)

 

 

ひとつずつ説明しますね。

まず、おそらく一番わかりやすいであろうTask・こと、から。

Task=役割・使用目的なので、狭義のカテゴリーに一番近いです。

ただし、それをどう定義するのかが重要。

 

お風呂掃除用の洗剤を考えてみましょうか。 まさにその名前が、最も狭いカテゴリー定義ですね。 「お風呂の掃除をする」という仕事=Taskに紐づいているわけです。

ここで、ひとに「お風呂掃除はお好きすか?」と聞くと、大抵の場合、「嫌い」・「大変」と答えが返ってきます。 で、何が不満ですか、と入っていくと、「しょっちゅうやらないといけない」、「腰が痛い」、「服が濡れる」、「カビが落ちない」、「ニオイが消えない」、「ぬるぬるしたところを触るのがいや」、「旦那がやってくれればいいのに」とまぁ、予想にたがわない答えたち。 調査の必要もない。

が、一歩引いてみると、お風呂掃除も「家事」というより大きなTaskの一部でもあるわけですよ。

そこで、みなさんが大嫌いな皿洗いやアイロンがけなどと一緒に語ってもらうと、突然、「実はお風呂掃除は家事の中では、どちらかというと好きなほうだ」ということがわかってくる。 なぜなら、きれいになったお風呂に入って、自分の肌で「つるつる・キュキュッ」というのを味わえるから、というのを発見できたり。

「どちらかというと楽しい家事なんだ」と考えると、さらにいろんな発見がありそうですよね。

 

ちなみに、前述した「ガム=ひまつぶしカテゴリー」は、このTaskで理解することができますよね。 ひまをつぶす、というTask

 

 

次はPlace・場(関連する場所)に行ってみましょうか。

すごく簡単に言ってしまうと、置いてある場所、使う場所、ということなんですが、それだけでなく、ひとが特定の場と関連付けて考えたり記憶していたりする場合、Placeという視点で整理するわけです。

 

これもわかりやすい例を挙げておくと(日用品的なものばかりですいません)、洗面所とかお風呂場とかキッチンとか、そういうやつです。 シャンプーは、髪の手入れ(ヘアケア)というTaskですが、同時に、お風呂場というPlaceにも紐づいています。 台所用洗剤は、料理という(楽しい)Taskとはほぼ無関係で、皿洗い・後片付けという(いやな)Taskに強く結びついていますが、同時にキッチンというPlaceにも紐づいている。

古い例ですが、花王さんがピュアという台所用洗剤でヒットを飛ばしたのは、キッチンを少しでもかわいくして、楽しく使いたい、というPlaceの視点で発想できたからですね。 (当時、少なからぬP&Gマーケターたちが、こんなおもちゃみたいな洗剤売れるわけがないと高をくくっていて、あとで驚愕していたのを思い出します。)

 

 

しかし、どうしてもTaskPlaceでカバーしきれないエリアがあって、それがもうひとつの領域、Moment・ときです。

特定の機会、イベントや記念日、季節などに強く関連している商品やサービスは、この領域にひとの記憶・思い出・希望・不満・不安・ジレンマなどが一緒に潜んでいます。

 

一番わかりやすい例は、テーマパーク=家族や友人・恋人と楽しい時間を共有するというMoment、でしょうか。 あと、クリスマス、誕生日、卒業、夏休み、お盆、など。

お父さんが使う電気シェーバー、買い替え~トレードアップ(場合によってはスイッチ)が発生しがちなのが、父の日だけでなく、昇進や転勤などのMomentです。 そもそも最初に買ったのは就職したときだったりするので、たかが髭剃りですが、実は男性の人生の瞬間瞬間と大きくかかわっているカテゴリーなんですね。 「朝、ひげを剃る」というTaskだけで理解しているのとは、見えてくる世界が違いますよね。

あと、おもしろいのが、普段は「お風呂用洗剤」と「窓ふき用洗剤」は、わりと別々のTask、別のPlaceに収まっているんですが、年末だけは「大掃除」というイベントに集まってくる。 私自身は、この分野、あまり掘り下げたことはありませんが、何かおもしろいインサイトが転がってそうです。

 

 

そして、Community・ひとびとの話をしましょうか。

先述したように、Communityは、TaskPlaceMomentのすべてと重なり合う要素です。

あなたの提供するモノと関連している領域を探るときに大切な指標で、ごく簡単に言ってしまうと、ベネフィットをシェアできる、または、得ている・得ることができるベネフィットに気づく可能性のある重要なひと・ひとびとは誰で、そこではどんなことが起きているのか、ということでしょうか。

家族だったり、恋人だったり、職場の知り合いだったり、友達だったり、通勤ですれ違う知らないひとたちだったり、場合によっては「自分(だけ)」というのもありますし、実は「まだ見ぬ誰か」というのも立派なCommunity。 (今日に限って安いサンダルを履いてた♪、が、心に響く理由はここにありました、余談でした。)

どのコミュニティ・社会集団に属しているモノ・ベネフィットですか、という視点です。

 

お風呂掃除用の洗剤は、もちろんお風呂掃除~家事というTaskとの結びつきが強い商品ですが、同時に「家族のお風呂」でもあるわけです。 子どもと一緒にお風呂に入って、「キュッキュ!」って楽しくないですか?

お風呂場というPlaceに強く紐づいているシャンプーには、しかし同時に、「私が私をちゃんとケアしてあげているひとり時間」という「自分ひとりの世界」というCommunityにも属しています(Momentとも捉えられますが、特定可能な特別な「とき」というよりは、「ひとり」というCommunityと考えたほうがしっくりきます)。

たとえその商品・サービスの機能や使用シーンが、Communityと直接結びついていなくても、ベネフィットは必ず結びついています。 ファッションやクルマのような、「社会的」商品だけでなく、パーソナルな商品でも。

よく使う例で、耳にタコかもしれませんが、ガリガリ君は、友達や家族(との思い出を含む)というCommunity抜きには理解できないブランドで、その属するCommunityは、ハーゲンダッツとは全く違う領域です。

これも少し古いでしょうか、のどごし生は、「みんなでわいわい、がんがん飲むビールが一番うまいよね」という、ビールカテゴリーの大切なCommunityインサイトに立脚したブランドで、ベネフィットを味などの特性ではなく、カテゴリーのインサイトに紐づけたスマッシュヒット。

 

 

ふ~、やっと解説が終了。

すいません、簡単な話なのに、長くて。

 

これが、カテゴリーを捉える、整理するための、インサイトを見つける場所を見つけたり、ホントの理由を探ったり、ブランドのホントの存在価値を考えたりするための、私のフレームワークです。

商品の開発やマーケティング施策で何か打つ手はないかと考えるとき、調査などで得てきた発見や学びを整理したり、その中に新たなインサイトのタネを見つけようとするとき、新たなビジネス領域を見つけ・作り出すヒントを探したいとき、そして、自分は本当に消費者のことを理解できているんだろうかと不安を感じたとき、使ってみてください。

 

で、あとは、長い余談。

 

 

化粧品の世界では、謎の常識(?)ですが、スキンケアとカラーメイクにまたがって強いブランドを作るのは至難の業。 (そして、クレンジングだけは、さらに別、というのもあります。) これは、メーカーにとっては、ひとつの、または隣同士の業界であっても、ひとにとっては、かなり離れたカテゴリーだということが理由だと思います。

たとえ同じ場所に保管されていたとしても、TaskCommunityが全然違うからですね。 (クレンジングはPlaceも違う。)

だからお客さんに「同じブランドのほうがいいに違いない」と思ってもらえないし、片方にかけるマーケティング投資が、もう片方に波及しない。

 

同じことがシャンプー・コンディショナーとスタイリング剤の間でも起きます。

かたやお風呂というPlace、髪のお手入れというTaskなのに対して、もう一方は洗面所というPlaceにある身支度というTaskなので。 ひとつのブランドであることに「効率」はあまり期待できないんです。

さらに悪いことには、これは店頭に関することですが、一緒に売ってると売り上げも上がらない(下がります)。 売り手は「ブランドブロッキング」とか「クロス購入」とか言って、一緒に置きたがるんですが、これは買う立場からするといい迷惑。 頭が混乱するので、買う気が失せるんですよ。 (なので、結局、売り手も流通も得しない。)

逆の例は、野菜売り場の鍋つゆ、ですね。

 

こんなことも起きます。

より重要な、Involvementの高い領域に自分を押し上げて、価値を高めようとしたら、その領域には自分より重要なものが山ほどあって、すっかり埋もれてしまう、という例。

メガネは、視力を矯正するという明らかなTaskにくっついているモノで、とても多くのひとにとって「できればかけたくない」もの。 (私は違います、大好きです、30本くらい持ってます。)

でも、どうせかけるならおしゃれなものをかけたい、とは思っている、なにせ顔の真ん中にあって、印象を決めるものなので、Taskとは関連していない「他人に与える印象」=Community領域がのしかかってくるわけですよ。

なので、メガネはファッションです、と、そっちの領域に行きたくなる。 しかしながら、ここでものすごく注意しないといけないのが、そこにはメガネより重要なものがひしめいているわけです。 靴、服、カバン、メイクアップ、時計・・・・。 これらはみな超強敵です。 手元にお金があって、今かけているメガネに大きな問題がないとき、これらの中でメガネは何番目にくるのか・・・。 お財布はどれくらいぶっといのか。

 

タラレバの話をしても空しい気持ちになってしまいますが、私は、今、みなさんの手に握られているスマートフォンのブランド名が「Walkman」でないことが、ときどき、すごくすごく悲しくなります。 でも、実際にはリンゴのマークが描かれてますよね・・・。

携帯用再生専用カセットプレーヤーとして生まれ、空前のヒットだったのは事実。 しかし、残念なことにこのブランドはそのまま、その狭義のカテゴリーから出ることを許されず、やがて世の中から(ほぼ)姿を消していきました(あ、もちろんハイレゾの世界で生きてるのは知ってますが)。

製品機能とブランドを結びつけてしまって、ベネフィットに結び付けなかったから、ということだし、それがソニーの戦略だったわけですが、タラレバで語ることを許してもらえるなら、その狭いTaskをカテゴリーとして考えるのではなく、もう少し広いカテゴリーの再定義はできなかったものだろうか、と。 高い機能が自慢だったのはよくわかっていますが、機能の周辺・延長線上だけでカテゴリーを規定してしまわない手はなかったんだろうか、と。

そしたら今私はWalkmanという名のスマホを自慢げに使っていられたのに(この年代ですので、わたくし、SONYファンでございます・・・はい)。

 

長い!

これでも短くできないか、何度か手直ししたんですが、そのたびに長くなっていったのですわ。 (余談が多いしね。)

でも、さすがにここまで。

 

で、次はいよいよブランドを捉える・整理するフレームワークに、そして、Senses/Heart/Mind/Soul/Behaviorモデルに戻ります。

(モデルの名前も長いなぁ・・・・誰かいいネーミング、考えていただけませんか?)

 

お。

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「極意の」とか大きなタイトルで書き始めちゃいましたが、さらにFacebookで音部先生に投稿をシェアされてしまってしていただいて、続きから逃げられなくなってしまいを書く励みになりました。 がんばります。 (45回に分けて書くことになりそうです。)

 

さて、最初の記事では、「ひとを捉える」と題して、「私はこうやって整理してますよ」というのをご紹介しました。

簡単にまとめると:

ひとは「感覚」と「こころ」と「あたま」と「たましい」からできていて、でも、外から見えるのは「ふるまい」だけだと捉えたうえで(Senses=五感、Heart=情緒・右脳、Mind=理屈・左脳、Soul=主義・価値観・こだわり、Behavior=行動・表現、と言い換え可)、

当該商品・サービスの領域において、ひとは、どのように感じ、想い、考え、判断し、行動しているのか、を、把握する、あるいは、考える、想像してみる=つまり「深読み」する

という感じでしょうか。

 

で、今回はその、もうちょっと先にある「じゃ、どうやって捉えるの?」みたいな話を、調査を例に書いてみたいと思います。 (どうして弊社が定性調査、それも特に訪問調査が好きか、というのもご理解いただけるかと。)

 

極意2中村

 

~ひとを「捉える」ことの限界と可能性を知っておく~

 

もう少しぶっちゃけて言うと、調査でわかること、わからないこと、考えて深読みすべきこと、ということになるでしょうか。 ホントは調査だけじゃないんですが、わかりやすいと思うので、調査で話を進めてみます。

当たり前の話、調査はそのやり方によって、何がわかるかが違うということなんですが、調査そのものだけでなく、それを利用し、分析・理解するマーケター自身の考え方・行動・能力=深読みできる力に関わることなんだと思います。

 

 

とても大事な、まず、肝に銘じておかないといけないことは、

「ひとが話すこと(Behaviorの一部)は、そのひとのあたま(Mind=理解・解釈)を通って選択され加工され発信されたものである」

ということです。

つまり、そのひとの、ほんの一部に過ぎないのです。

 

ことばとは、様々な情報(理屈だけでなく、感覚・感情・価値・記憶などを含む)をMindが翻訳したものを外に発信(Behavior)したもの。

しかも、そのひとの意志によって。

なので、「感覚や感情に関することば」というのは、聞く・読むことができますが、それは決して感覚・感情そのものではない。

だから「言ってることとやってることが違う」のは、「おかしい」のではなく、むしろ「当たり前」と考えるべきなのかも知れません。

 

えとじやフレームワークひと

例えば、調査でよく出会う「『いいですね、買おうと思います』と答えても、買ってくれない」。

これには、様々な可能性があります。 あげるとキリがないんですが、例えばをいくつか。

インタビューやアンケートを受けた時点、その状況(家だったり調査会場だったり)においては「悪くないなぁ」くらいは思っているが、店頭やネット通販の場面ではなく、お金を支払うかどうかの判断を迫られていないのでそう答えていても、実際には競合との比較や、価格に見合う価値があるかどうかなどの判断において、「買う」をはじいてしまう「何か」がある、という場合。 (状況だけではない「何か」が大事。)

それにしても、「絶対欲しい~~~!!」ってHeartが動いてくれていたら、もう少しPositiveな反応・ことばが出てきたかも知れないですね。

いや、実は、さほどいいとは思っていない。 しかし、調査対象者さんって、やさしい人がほとんど。 なので、なるべく「いいですね」って答えてあげたいわけですよ。

調査における「いいですね」は、子どもが描いた絵を見たオトナが「あら上手ね~」って言ってしまうのと同じ・・・と思っておいたほうがいい。

(全く同じ動機で、さほど重要だと思っていなくても、たくさん文句をつけてくれる対象者さんも、同じくたくさんいらっしゃいます。 せっかく調査してるんだから、たくさん指摘してあげなきゃ、と。)

 

つまり、調査、特にアンケート調査のようなもので、知ることができるのは、こうして生み出された「ことば」=対象者が選択した判断だけなんです。 (あ、もちろん、属性とかは、わかりますが。)

 

 

んじゃぁ、どうすればいいのよ!?

 

ひとつには、ともかくたくさんやる、という解決法があります。 100人中何人が「買いたい」と答えたかを、ともかく大量にテストしてデータベース化していけば、やがて、「このカテゴリで、この調査手法で、これくらいの点数が取れたら、そこそこ売れるかも」という結果を得られるようになります。 が、しかし、それも「かも」です。 お金と時間と労力がかかって、しかも最初のうちは、テストするだけで結果は使えないし。 データベースを持っている調査会社さんにお願いする方法もありますが、これもお金がかかる。 そして、私自身何度も何度も経験していますが、いい結果を出したからといって、実際に売れるとは限らない。 20個あるアイディアを3~5つに絞るみたいなことには向いていますが。

ま、調査大好き大企業向きの解決法ですね。

 

 

「どうすればいいのか」に対する答え、精神論みたいに聞こえるといやなんですが、「ことばとは、そのひとの意志のもとに、あたま(Mind)で生み出され、選択され、発信された判断(Behavior)だけだ、と知ること」。 いつもそれを前提において考えるということ。

そして、そのうえで、

 

    察する力=深読みする力を身に着けて、ことばだけに頼らなくても判断できるようになること、そうすることで、

    得るべき反応が得られるように正しい質問・観察ができるようになること

 

の繰り返し。

 

    (さらに、えとじや全員が、ここで何度も何度も何度も書いてますが、調査結果とは、あなたが考えるためのヒントであって答えではない、と知っておくこと、ですかね。)

 

 

アンケート調査などの定量調査で得られる反応は、(特殊な手法を除けば)ほぼ「ことば」の領域です。

なので、表面的な、本音からはほど遠い結果だけで終わらない、効果的な定量調査をするためには、正しい質問ができなければならない。

定量調査を設計するためには、いい仮説が立てられていないといけない。

ちゃんとした仮説を立てて、正しい質問を組み立てるためには、そのひとたちの、あたま・Mind以外の部分を含めて理解していなければならない。

顕在しているニーズの順番をつけるだけでいいなら、そこまでしなくてもいいかも知れませんが、いまどき、そんな調査でわかることをやっても、お客さんには「で?」って言われるだけですから、彼らの経験や感覚、感情、ひいてはこだわりや価値観を知りたい。 そうしたもので、ターゲットを絞り、理解したい。

だからまずは定性調査的な理解が必須、なんですね。

 

でも、定性調査で、ひたすら対象者の発言をメモっているひと、すぐにやめましょう。 そんなことにパワーを使うのではなく、みなさんの表情やしぐさ、身に着けているものを観察してください。

「いいですね」が、どういうニュアンスの「いいですね」なのか、きちんと探りましょう。

感情は、しぐさや表情に出ることが少なくありません。

グループの中で、ひとりだけ違う話題にずれていってしまう人がいたら、(なんだこのひと、他人の話聞いてないじゃん、いけてない対象者だなぁ)じゃなくて、もしかしたらそこに彼のたましい(主義や価値観)に触れる何かがあったのかも知れません。

 

訪問調査やお買い物同行調査などの観察系の調査が優れているのは、ことばにならない・しない部分=感覚や感情、価値観みたいなことに触れられるチャンスが、会場での調査より圧倒的に多いからです。 手間はかかりますが、手間の幾倍もの情報を与えてくれます。

持っている洋服、冷蔵庫の中、玄関の様子、靴の数、壁に貼られたカレンダーや写真、隣の部屋の片づけ具合、食卓の椅子の配置、テレビやパソコンの置き場所、ティッシュにカバーがしてあるか、カセットコンロが取り出しやすい場所にあるか、洗面所の棚、トイレの窓の造花・・・・・・・。

何を見ながら話すのか、楽しそうに話すのか、生ごみをどう処理するのか、どこを見て歩いているか、どの順番にお店の棚を回るのか、パッケージの裏を見る買い物と見ない買い物、でっかいディスプレイがあっても「売ってませんね」と通り過ぎる、これはドラッグで買うけどあれはスーパーで買う、値段を気にするって言っててもコンビニで買ってしまう・・・・。

深読みのタネだらけです。

 

また、会場での調査であっても、ことばにされること以外に触れるチャンスを作ってください。

一番のお勧めは、それが許される場合には、あなたも調査会場に入って、同席することです。 生で感じられますから。

質問するだけではなく、写真や絵を使って説明してもらうようにすると、気分とか感情が出やすくなります。

それが調査に関連しそうで、許してもらえるなら、カバンやポケットの中身を出してもらうのは、とても参考になります。 (あるいは、スマホの中身をちょっと見せてもらう。)

 

もうひとつ、定性・定量に関わらず注意すべき点は、「知りたいこと」をそのまま質問にしてしまわないこと。

知りたいことを知るために、一番効果的な質問(群)は何かを考える。

商品の機能が理解しやすくて、十分に魅力的かを知りたいから、「わかりますか?」、「買いたいですか?」と聞いてしまう。 パッケージデザインが好きかどうかを知りたいから、「お好きですか?」と聞いてしまいたくなる。

しかし、自分が対象者の立場になって考えたらすぐわかると思いますが、ほとんどのひとにとっては(別に、どうでもいい)か(そんなの聞かれても困る)か(ま、使いやすければそれでいいんじゃないの?)なわけです。 たとえ実際には、デザインの好き嫌いが購入を左右していても、です。

だから彼女たちは「使ってみた友達の評判を聞いてから、近くで売っていて、手ごろな値段で、今使っているものがちょうど切れていたら、買うかもしれません」と答える。

(実際に調査対象者さんから、調査後にこっそり教えてもらったことがあるんですが、彼女は、

「そんなの、プロが考えればいいでしょ? なんで、素人の私に聞くんですかね。 自信がないのか、「私たちが良いっていいました」っていいたいのかな? サラリーマンって大変ですね。」

とおっしゃってましたよ。)

そんなことを聞くよりも、せめて例えば「これを見てどんなことを想像しますか?」とか「何を連想しますか?」とか聞いたほういい。 そうすると、少しは感覚や感情に近い何かが出てくる可能性が高まります。

 

 

話が調査に偏ってしまいましたが、こうしたことはマーケティングの戦略やコンセプト、コミュニケーション施策などでも同じです。

 

最初に買った理由として記憶に残っているのは、「しわを改善してくれる(かもしれない)から」だった化粧品、つまり、Mindが価格に見合う、試してみるべきと判断したこと。

その化粧品が気に入っている理由は、「使い心地・使用感がいい」から、つまり、Senses・感覚。 別にしわが減ってきているかどうかではない・・・。

そして使い続ける理由は、「(またいろいろ考えたり試したりするの、大変だし、面倒だし、しばらくこれでいいや)」というHeart・感情。 使い続けることでしわが改善されるからに違いないと信じているからではない。 そして、「化粧品以上に大切なことが、今の私にはある」というようなSoul・こだわりだったり。

とかね。

 

 

「ひとが話すことは、そのひとのあたまを通って選択され加工され発信されたものである」

質問して答えてもらえることは、結局、ことばというBehavior・ふるまいに過ぎない。

正しい質問をしない限り、Mind・あたま以外の部分を引き出すことはできない。

それでも、本人が意識的に選んだことばしか出てこない。

これが「捉えることの限界」。

 

しかし、観察すれば、ことばにならない・なっていない・しない部分を察することはできるし、(思わず)ことばにしてしまうような質問ができれば、表出しているMind部分以外のことがわかる、見えてくる。

結局は、あなたも調査対象者~消費者・生活者も「ひと」なんだから、ひととひと、と考えれば、わかってあげられること、わかってもらえることは、Behaviorとしてのことばよりも、もっともっと多い。

「察する力=深読みする力を身に着ければ、ことばだけに頼らなくても判断できるようになる」

それが「捉えられることの可能性」です。

 

だからマーケティングの仕事は楽しい、やめられない。

えとじやフレームワーク捉える
 

なんだか長くなってしまいました・・・。

次は、ひとをとりまく環境=広義のカテゴリについての考察(の予定)です。

 

お。

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    えとじや店員。兼フードコーディネーター・レシパー。兼マーケティングができる中小企業診断士。どんなことでもたいていやっているうちに面白味を見つけてしまい、ハマるタイプです。 リサーチ、マーケティング、料理など、それを繰り返して今に至ります。今度はえとじやでどんな面白いことが経験できるのか、わくわくしています。

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    えとじや店員。お抱え絵師(デザイナー)。パッケージデザイナーとしてメーカーで約7年働きました。マーケティングやリサーチはまだまだ初心者。デザインの力を使ってみんながニコニコできるようなものを作れたら嬉しいです。アニメ、漫画、手芸、落書き、クレイアニメーション…、ちまちま何かを作るのが好きですが、大雑把で不器用…。細やかさを欲しています。

  • えとじやお針子

    えとじやお針子(ライター)。マーケターを5年したあと、マーケティング博士号取得、その後、リテールサービス企業のマーケ部長に。なんと、えとじやクライアント&えとじやブログのライター。 理屈も現実もそのはざまも経験、マーケティングの仕事ってなんなの?どうしたらいいの?という悩みにはいちばん共感できる立場かも。

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