えとじやブログ - ひねくれマーケッターのひとりごと

ひねくれマーケッターのひとりごと

IMG_1699最初にはっきりとお伝えします。

隣の芝は青くありません。 むしろ真っ赤に炎上していたりします。

入ったこともない芝に無防備に入っていくのはやめましょう。

 

さて何のことでしょう、と思われるかもしれませんが、今日のお題は、「新規事業」です。

 

ここで、すでに心当たりのある方、そうです、あなたのことです。

(弊社のクライアントさんで、これを読んでらっしゃる方の中に、「え? 私のことを書いてるの?」と思っている方もいらっしゃるでしょう。 ご安心を。 あなただけではありません。)

大丈夫(?)。 驚くほどたくさんの会社さんで、「隣の芝は青いぞ、うちもいけるんじゃないか?! 偵察に行ってこい!」と社長に・会長に・エラい人に言われているのです。

(ちなみに偵察ならまだマシな方で、とりあえずやってみろ!も多いです。)

 

少し前で言うと、通販コスメ、健康食品、美容系、シニアなどが「みんなが青く感じる隣の芝生」でした、もう流行は終わった感じですが。 ここのところ、ともかく多いのが、「まずはネットで売ってみろ!」パターンでしょうか。 「販促費やインフラ投資をかけずに、口コミでじわじわヒット商品になったものがたくさんあるらしい…。 うちも同じことがしたいんだよぉ!」

大抵が今のビジネスで伸び悩んでおり、何か起爆剤がほしい、という背景があります。 そんな中で急成長する業界を見たり、異業種に入って成功した事例を耳にしたりすると、それだ!となるようです。 雑誌やTV、ネットでも、そういう成功例は、派手に取り上げられることも多いですし。

(「がっちりの朝焼け」とかの放映日の翌日は、朝礼前から社長がうるさい、というのを聞いたことありますね。 でも、ああいう成功例って、「あとから振り返ったから言える」話しだったり、実は企業のPRだったり、また、取材される側に回ってみるとよくわかるんですが、記者や編集者が「こうしたほうが受ける」という視点でまとめてて、実情とずいぶんかけ離れてて、「それ、ちょっと違うんだけどなぁ」なことが多いのも事実。)

 

さて、オーナー企業さんなど、強いトップダウンの場合は、仕方ないですね、やってみるしかないでしょう。 社長(会長)が言うことですから。 業種によっては、やってみてダメならすぐひっこめても、特に問題はないわけですし。

まぁ、がんばってください。

(「ご相談、お待ちしてま~す。」 by 店主。)

 

でも、少しでも抗えるならば…。 全く未知の、何の縁もゆかりもない新規事業への参入はかなり無謀だということをぜひお伝えいただき、それよりは成功の可能性の高い商品アイデアを作ります!と、かっこよく宣言ください。

 

そりゃあできることなら宣言したいけれど、そんなアイデアがなかなか思いつかないんだよ、というアナタ。 もちろん、難しいことです。

すぐ思いつくモノなら、もう世の中には出回っています。

(「ご相談、お待ちしてま~す。」 by 店主。)

 

そこで今日は、まずこんなことを考えてみてはどうでしょうか、というヒント集です。

(たとえ、あなたの部署に「新規事業開発本部」という名前がついていたとしても、ヒントになるはずです。)

 

1.あなたの芝は隣から見ると青い。

(残念ながら時々、青くない場合もあるにはありますが…)

私たちのお仕事柄、外からの視点で拝見するわけですが、実に多くの方が自分の芝生の青さを過小評価しています。

まずは自分たちのビジネスが、何で成り立っているのか、どういうお客さんがどのくらいついていてくれるのか、確認しましょう。 いいお客さんがたくさん支えていてくれるはずです。 他の会社が取り込みたくても取れないお客さんが、あなたの商品を買っていてくれるはずです。 ここでいう青さは売り上げではなく、顧客だとして考えてみるのもいいでしょう。

 

 

2.どこがどんなふうにどれくらい青いか知る。

ここが一番重要な、今日のポイントです。 弊社のほかの記事にもありますが、皆さん「自分の悪いところ探し」が得意・好きすぎる。

うちの芝生は青くない、あそこもここも枯れはじめている…。

(最近日本の教育について思うことが多いのですが、それはさておき、)

皆さんの会社にも青々とした芝生がある。 でも、どういう青さを持っているのか、知らさなさすぎです。 緑なのか、水色っぽいのか、深い青なのか、群青色かもしれない。 自分だけの素晴らしい青さを持っているのに、本人が気づいていない。

そして、今日も青々とした芝生の真ん中で、青くない場所を見つけてはため息をついている。

 

例えば。 「この商品はロングセラーでね」とか、「これはいい子なんですよ、放っておいても売れる」とか、結構聞きますが、「どうしてですか」と聞くと答えが出てこない。 下手すると「何でですかね、考えたことなかった」と言われます。

もしくは、知っているつもりでも知らないケースもあります。 「主婦に受けがいいんですよ。使い勝手がいいんでしょうね」、「これはこんな時に使う商品なので、そのニーズがあったということじゃないんでしょうか」。 でも、ちゃんと調べたことはない。 ユーザーが好きな理由と、送り手が思っている良さが一致していないのを、とても多く見かけますよ、ぜひ、知ってください。

 

この熟しきった市場において、ロングセラーとか、結構売れた、という商品があるならば、そこにものすごいヒントが隠れているわけです。 しかも自分の会社の能力(お金や人や規模や組織など)でそれが達成できているわけです。

そうしたら、まずはそこから学ぶべきですよね。 強みと成功パターンが何なのか。

 

さらに、選択肢の多い店頭で、自社製品を何度も買ってくれるお客さんがいるわけです。 その人がどんな人で、どんな生活を送っていて、どんな気持ちで製品を使っているのか。 その製品やサービスは、必ずちょっとした生活への潤いを与えているわけです。 それが消費者の言葉で言ったらどんなことなのか。 知るべきじゃないですか?

 

これらが分かると、自分の会社の強みが見えてきます。

どんなパターンなら勝てるか、見えてきます。

新規事業で新しいことをするのに、今までのやり方を知っても遠回りじゃないか、と思われるかもしれませんが、こうした作業を積み重ねていくと、意外と新しいアイデアが浮かんでくるものです。 手当たり次第思いつくよりも、起点があり、根拠があるほうが当然アイデアも思いつきやすいのです。

 

また、この作業をすることで、「いいアイデアだけど、どうやって売るんだい?」という罠を防ぐこともできます。 「まずはいいアイデアを作ることから。売るのは何とかなる!」と始めるケースが意外と多いですが、大抵の場合なんともなりません。 販路、営業力など、自社能力を超えている場合は、そこに大きな投資が必要になってきます。 自社の強みや資産を活かせないだけでなく、経験もないし、そもそも誰からも信頼されてないわけですし。

「いいアイデアなんだけど、販路の問題で止まったままプロジェクトが動きません!(私のせいじゃありません、言われたことはやりました)」

などという「新規事業あるある」、ぜひ、お気を付けください。

 

 

3.芝生の面積を広げればいいというものではない。

最後に。 今は焼畑農業的なアプローチは全く通用しないと思うんですが、それを戦略にしているケースを見ることがあります。 (ホントにお金持ちの大企業は、勝手にやってください、TAYOTAさんとか、asocomoさんとか。)

「うちの商品は40代より上にしか売れない。若者向けを作るんだ!」。

繰り返しますが、この円熟市場で、全世代に受けることって難しいです。 また「若者」って括れるような「若者」って存在するんでしょうか。 (ま、ちなみに今の人口構成で考えると40代は若者ですけどね。 ま、いいか。)

実際、じゃあ40代以上の人がどのくらい買っているのか、とデータを見たりすると、例えば、ターゲット人口の4%くらいだったりするわけです。 だったら若者に行くんじゃなくて、6%目指せば売り上げは1.5倍ですよね。 もしくは4%の人に、あともう一個商品を買ってもらえるようにすれば、十分な売り上げが作りだせるはずです。

 

今青い部分を起点に、そこからじわじわと広げること。 もしくは深みを増す、色を足す。 やり方はさまざまです。

その作業で発見できることは、実は、既存を伸ばすことに限りません。 新規事業になるアイデアもいくつか見つけられることでしょう。

 

社長に・会長に跳べと言われたから、と、塀を乗り越えて隣の庭にダイブする前に、ぜひじっくり考えてみてください。

(「ご相談、お待ちしてま~す」 by 店主。)

 

K

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定量分析についてのシリーズ記事、最終回です。

 

その①では、データを見るときに、“つい細かいところに気をとられて全体像を見失ってしまう”という落とし穴、 その②では、“十分な分析をせずもっともらしい理由づけをしたために、本質を考える機会をなくしてしまう”という落とし穴でした。

どちらも「あるある~」と読んでいただけたらうれしいです。

今回は、最近私の周りで最も多い“あるある”談なのですが、それは、

 


よくあるパターン③ 「低いものを何とかしたいという衝動を抑えられない」

 

これは、どうデータを見るかというよりも、どう結論付けて戦略をたてるか、という“考え方”の話です。

もし担当商品のシェアが、「Aエリアで25%、Bエリアで20%、Cエリアで20%、Dエリアで15%」だと言われたら、あなたならどうしますか?

Dエリアを何とかして伸ばしたい!という気持ちがわいてくるのでは?

頭では“そんなに単純じゃないハズ”と思いながらも、低いところが気になって気になって仕方ない、何とかしたいという衝動に駆られるのではないでしょうか。

低いほうが伸びしろが大きいから?

低いほうが伸ばしやすそうだから?

もしかしたら、デキの悪い子ほどかわいいから?(笑)なのでしょうか。 (ちなみに、この「下がっているから・低いから何とかしよう!」という反射的な分析方法を、店主は“体育会系分析”と呼びます)。

 

P1014908 (768x1024)実は、以前外資の会社で働いていたころは、この“体育会系分析”にお目にかかることは、ほとんどありませんでした。

頻繁に遭遇するようになったのは、日本企業のクライアントさんとお仕事をするようになってからです。 同じデータを見ても戦略が逆になることも少なくなく、初めのうちは「なんで??」と、頭の中がクエスチョンマークでいっぱいでした。

例えば、男女の売上比が7:3だった場合、“男性にうけているので、男性にもっと買ってもらうようにしよう”というのと、“女性に売れていないので女性向けにして5:5にしないと!”というのは真逆の方向性ですよね。 

 

ダメなところを改善したい、下がったところを元に戻したい、みんな横並びに揃えたい、と反射的に思ってしまうのは、もしかしたら日本人の性なのではないか?と思ったりします。

通知表で、もし国語4、算数3、理科3、社会2をとったら、十中八九“社会を頑張りなさい”、って言われますもんね。 社会はいいから国語で5を目指しなさい、と言う先生はなかなかいません。

 

ちなみに上記のABCDエリアの例では、もちろん、まずはエリア構成比を確認します。 Aエリアが5割、Dエリアが1割なら、Aをさらに伸ばせるか考えてみます。 投資効率がよい場所に投資する、強みを活かせる・勝ち方がわかっているエリアで戦う、が基本です。 シェアが低いのは低いなりの理由(ターゲットが少ない、とか、強い競合がいるとか)があるはず。 「低い=伸びしろが大きい」というマーケットはそう簡単には見つけられません。

ただし、なぜ低いのかは、確認しておきます。 その理由が大切な・伸びているエリアにも当てはまるものなら、低いDエリアをなんとかするためではなく、高いAエリアをさらに強くするための、または、気を付けないといけないヒントがあるかも知れないから。

ともかく、もちろんビジネスの状況によりますが、「売れていない商品に力を入れる・売れていないエリアやチャネルで頑張る・買ってくれない人に売る」ことは、たいていの場合、「売れているものをさらに売る」よりもずっと難しく、多くのリソースを必要とします。 低いところを何とかしたいという衝動のままに、投資効率の悪い“デキの悪い子”にはまってしまわないよう、気を付けてください。



それと関連して、分析を戦略に落とすプロセスでよく起こるもうひとつの問題が、「やらないことを決められない」ということ。

たとえば、上の例で言うと、「Aではシェア30%のエリアNo.1を目指し、BCエリアも伸ばしつつ、D20%に改善する」、なんていう目標を立ててしまったりします。

もちろん会社の規模や投資額にもよりますが、普通は人や予算が急増することはないので、どこかに力を入れるとどこかはおろそかにならざるをえません。 全部ちゃんとやる!というのは結局、やるべきところに力が注がれない=戦略を決めていないのと同じです。

でも、分析上(数字上は)理想的なシナリオを作ってしまえるので、要注意なのです。

戦略的である・戦略を決める、ということは、「やらないことを決める」と同義と言ってもいいと思います。 だから、Strategicという英語は、「戦略的」と訳すより「選択と集中」と訳したほうがしっくりきますよね。

 


データは客観的で、データさえあれば(だれでも)正しい決断ができると思われがちですが、そうではありません。 成功確率の高い戦略を導き出せるかどうかは、データの見方で変わってきます。

全く同じデータを見ても見る人の分析力、立場、情報量などによって結論は様々です。 きちんと分析できなかったがゆえに、成功のチャンスを逃してしまったり、背負わなくてもいいリスクを負ったりすることも(むしろ、データがないほうがよかったという場合も・・・)。

データさえ見れば答えがわかるというのは幻想。 やっぱり、使い方次第です。

定性調査で「消費者に聞けば答えがわかる」という誤解と同じですね。



この定量調査シリーズの冒頭に、多くの人のデータ分析を観察していると、「データを読むの上手だな~」という人と、「え…そんな見方するの?」という人がいて、データを上手に使う人と使えない人の違いは明確だと書きました。

何が違うんだろうとあらためて振り返ってみて、その違いは、数字(というただの記号)からヒトやモノの動きを読めるかどうか、つまり、数字の向こうにヒトの行動があることをちゃんと想像・洞察できるか、にあるのではないかと気が付きました。

データ分析は、数字が「高い(上がっている)」、「低い(下がっている)」もしくは「目標到達したかどうか」を確認するためだけにしているわけでありません。

数字は市場で起こった一連の出来事の結果であって、その原因(何が起こっていたのか)を知るためにやっていることなんですよね(スコアカードばかり見ているとついつい忘れがちですが)。

その意識や探究心、それから、数字からヒト・モノの流れの仮説を作り出せる(そして検証できる)力みたいなものがとても大切なんだろうな、と思います。

インサイト・洞察力というと、定性調査との関連で語られることが多いですが、実は、定量データの分析や戦略の開発にも必要な、とっても重要なこと、なんだということですね。

 


和。

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    えとじや店主。マーケティング一筋28年。世の中の様々な問題を「ブランド・マーケティング」で解決する腕利きコンサルになるのが夢。なかなか、そうはいきませんが。 ともかく、マーケティングに関わることはなんでも相談に乗ります。スノーボードと音楽が趣味ですが、「うんちく」と「説教」も大好きです。

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    えとじや番頭。消費者リサーチ歴15年。市場や消費者を理解することで、ブランドが強くなり商品が売れる、という経験を何度も味わってきました。 調査をどうやったらいいのかわからない、結果を見てもどう使っていいかわからない、そんなときにはぜひご相談ください。

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    えとじや店員。兼フードコーディネーター・レシパー。兼マーケティングができる中小企業診断士。どんなことでもたいていやっているうちに面白味を見つけてしまい、ハマるタイプです。 リサーチ、マーケティング、料理など、それを繰り返して今に至ります。今度はえとじやでどんな面白いことが経験できるのか、わくわくしています。

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    えとじや店員。お抱え絵師(デザイナー)。パッケージデザイナーとしてメーカーで約7年働きました。マーケティングやリサーチはまだまだ初心者。デザインの力を使ってみんながニコニコできるようなものを作れたら嬉しいです。アニメ、漫画、手芸、落書き、クレイアニメーション…、ちまちま何かを作るのが好きですが、大雑把で不器用…。細やかさを欲しています。

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    えとじやお針子(ライター)。マーケターを5年したあと、マーケティング博士号取得、その後、リテールサービス企業のマーケ部長に。なんと、えとじやクライアント&えとじやブログのライター。 理屈も現実もそのはざまも経験、マーケティングの仕事ってなんなの?どうしたらいいの?という悩みにはいちばん共感できる立場かも。

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