えとじやブログ - ひねくれマーケッターのひとりごと

ひねくれマーケッターのひとりごと

前回はマーケティング3大疾病の一つ、「ターゲットもやもや病」の主な3つの類型、①「絞り込んでいるつもり型」、②「移ろい型」、そして③「みんなに愛されたい型」についてお話ししました。

今回は、「ターゲットもやもや病」に罹患した場合の治療法です。

もやもや2
 

弊社にご相談いただく際、調子の悪い原因を自分でなんらか考察されたうえでお話いただくことが多いのですが、ターゲット・ターゲティングの課題にまで言及されるケースは極めて限定的です。

最初の検査として、ビジネスの不調が何によるものなのか、一つの仮説としてターゲット定義の弱さも念頭に置きつつ、ヒヤリングを重ねていきます。 特に売上低下は複合的な原因が多いですが、その根本に「ターゲットもやもや病」が潜んでいることが多くあるため、まずはその確定を行います。

 

ターゲットもやもや病の可能性が高いと判断した場合には、その治療の定石があります。

まず自分たちの上得意のお客様を知ることです。

 

自分たちはお客様が誰なのかよくわかっていないけれども、長年のビジネスの結果として、自然と長くお付き合いいただいているお客様が実は似通った人たちばかりだった(=セグメントを形成している)、ということは多々あります。

非常に興味深いところですが、商品特徴やブランドコミュニケーションのトーナリティなどに惹かれるお客様は実は万民ではなく、ブランドとの親和性の高いニーズや価値観を持った方たちに淘汰されているという現象です。また、自分ではなかなか気づきにくいですが、各会社がそれぞれの「らしさ」を無自覚的に持っており、その「らしさ」との親和性もお客様に共通することが多いです。

 

ですので、まずはその方たちの共通点を探ることからスタートです。お客様から教えてもらうのです。どんな方々がどんな生活を送りたいと思っていて、自分たちの製品はどうその生活に入り、役立っているのか。

 

経験則ではありますが、大半のケースでは上得意のお客様とブランドとの関係性の理解からターゲットの定義につなげることが可能です。

 

この時に、あきれるほどよく出る意見が、「そういうお客様はもうたくさん取っているから、ビジネスを広げるために違う人たちを狙いたい」。

気持ちはわかりますが、それほどに「そういうお客様」がたくさん取れているのか、精度の高い検証が必要です。 たくさん取れている場合、ビジネスは確かに頭打ちになりますが、「高値」頭打ちですので、滅多にありません。 (しかも、その場合は、ブランドを拡張するなどの方法でビジネスを大幅に拡大するチャンスがあるわけですが。)

こういうことを言われるケースほど、大抵はまだまだ伸びしろがあります。 何をやっても取れなくなって伸び悩むとき、それはお客様がいないからではなく、今のやり方に改善の余地があるからなのです。 (既存のお客様層が極めてニッチなため飽和になっている場合が例外的に存在しますが、それは別問題。)

 

まれに、既存のお客様をどう探っても共通してみられるような価値観やニーズが出ない場合があります。「うちにはいろんな人が来ている、って言ったでしょ?」と得意に思われるかもしれません。しかしこれは実は残念なお知らせです。 これといってなんの特徴もなく、万人に愛されることを目指した結果、無難になっている可能性が高いからです。 この場合、競合は100均、他社とは価格競争になっていきます。 お客様から見たら「なんでもいい」から「安い」「買いやすい」「よく行くお店で売っている」ものを買うのです。 治療はかなり抜本的に、自分たちの価値が何なのか、どんなお客様に選んでもらいたいのか、じっくり考える必要があります。

 

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前回少し触れました、「ターゲットを絞ることは機会損失ではないのか」。 これは根強い疑問です。

一つ誤解の可能性があるのは、「ターゲット以外の人に対し、排他的になるわけではない」という点です。

あくまでターゲットとは「購買促進のために積極的に投資をする相手」であり、結果としてそれ以外の人が買うことはあってもよいわけです。 実際に6-7割の購入者がターゲット層、3-4割はそれ以外の人、という比率であれば、立派なものです。

 

これまでも幾度となく触れている通り、モノが飽和状態にある現代において、購入してもらうにはお客様の心をいかに動かすか、が重要になります。 それがブランド作りの土台となる。そのためには相手がどんな人かを知り、考えつくすことが必要です。 そのためにもターゲットをきちんと定義することは欠かせません。 もちろんターゲット規模がきちんと存在していること、伸びしろがあることを確認することは重要です。

大丈夫。 ターゲットを決めることでマーケティングの精度はあがり、必ずビジネスは好転します。 ターゲット以外の人も一定数ついてきます。 魅力的なブランドなのですから。

 

それでもまだ、違うターゲットも狙いたい、ターゲットは全員だ、という場合。

唯一勝つ手段があります。

お・か・ね。

札束を用意して、八方美人戦法で全方位攻め続けましょう。 途中で弾切れなんて中途半端はダメですよ。 無尽蔵に用意してくださいね!

できれば、競合も買収してしまってください。

 

K。

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弊社は病院のようなもので、何かしら問題が起き、痛みなど症状があるときに皆さん駆け込んでいらっしゃいます。 コンサルは医者の役割。 どこに問題があるのかを診断し、最善の策を考えます。

 

今日ご紹介するのは、マーケティング3大疾病の一つ、「ターゲットもやもや病」。

体感する症状は、刺さらない広告・無難なPR・パッとしない商品・投資効率の悪さなど様々ですが、最終的には売上の低下・伸び悩みに至ります。

 

実は、来られる際にはこの病だと自覚していないケースが多く、問診で初めて診断がつきます。 

「ターゲット、もしくはお客様はどんな人ですか」という問いに対し、説明はあるがどうにもよく伝わらないというのが典型的な症状で、重度に悪化したケースではお客様の話が全くでず、「そんなことより、先生、競合が・・・あうあうあう」と続きます。

もやもや1

この「ターゲットもやもや病」、主に3つの類型に分かれます。

①「絞り込んでいるつもり型」、②「移ろい型」、そして③「みんなに愛されたい型」ですね。

 

①「絞り込んでいるつもり型」

ターゲットを定義してはいるものの、有効なマーケティングにつなげるには精度が欠けている状態。 例えば洗濯用洗剤のターゲットで「毎日洗濯している主婦」、化粧品のターゲットで「20-30代の働く女性」など、カテゴリーユーザー全体に属性を掛け合わせただけの定義が典型。 ターゲットの掘り下げが甘く、「人」としての具体的なイメージができていない。 なので、どう相手の心を動かすかを考えられず、結果として上っ面のコミュニケーションになり、往々にして「刺さらない」ものが生まれる。 もちろん、ビジネスは発熱が続く状態。

 

②「移ろい型」

ターゲットを安易に変える状態。 売上が頭打ちになり苦しくなってきたときに、今取れていない客層をターゲットと称して手を広げるケースが典型。 大胆な鞍替えを狙うほどに、それまでの顧客を手放して痛手を負うことが多い。 次は男性だ、次は若者だ、次はシニアだ、という話が役員会議で出始めたら要検査状態なのだが、既存顧客は離れないだろうと安易に進めて致命傷を負うこともあり、なかなかに危険度が高く、手遅れの場合もあるので要注意。

 

③「みんなに愛されたい型」

最近増加傾向にある型。 古くは「誰がターゲットかなんて考えたこともない」というのが主な病因だったが、そうでない場合、仮説としては、売上伸び悩み→「移ろい型」で失敗→最終的に「もう全員がターゲットだ」と行き着いたとも考えられる。 「うちの商品で喜んでくださる方全員がお客様だ!」という言葉が一理あるように聞こえるが、誰がお客様か相手がわからないので、結局お客様理解というよりは、ひたすら手を変え品を変えの自己アピールに努めることとなる。 「クラスのみんなに好かれたい」という願いが往々にして空回りするように、八方美人になって疲弊するか、だれに対しても無難なつまらない存在になるか、いずれにせよ人気者にはなれない。 この病の根底にはターゲットに関する過去の失敗や、ターゲットを絞ることによる売上機会損失への感覚的な恐れ、懸念があるため、患者が治療に専念しなかったり食事制限を守らない、さらには治療を拒否するなど、治療が難航する傾向が見られる。

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繰り返しになりますが、ターゲットもやもや病、病気であることを無自覚の患者さんが多い病気になります。

心当たりのある方は弊社までお問い合わせください。 早期発見、早めの治療が功を奏します。 特に②と③。

 

では、次回はターゲットもやもや病の治療法について、です。

 

K

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  • えとじや店主

    えとじや店主。マーケティング一筋30年。世の中の様々な問題を「ブランド・マーケティング」で解決する腕利きコンサルになるのが夢。なかなか、そうはいきませんが。 ともかく、マーケティングに関わることはなんでも相談に乗ります。スノーボードと音楽が趣味ですが、「うんちく」と「説教」も大好きです。

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    えとじや番頭。消費者リサーチ歴18年。市場や消費者を理解することで、ブランドが強くなり商品が売れる、という経験を何度も味わってきました。 調査をどうやったらいいのかわからない、結果を見てもどう使っていいかわからない、そんなときにはぜひご相談ください。

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    えとじや店員。兼フードコーディネーター・レシパー。兼マーケティングができる中小企業診断士。どんなことでもたいていやっているうちに面白味を見つけてしまい、ハマるタイプです。 リサーチ、マーケティング、料理など、それを繰り返して今に至ります。今度はえとじやでどんな面白いことが経験できるのか、わくわくしています。

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    えとじや店員。お抱え絵師(デザイナー)。パッケージデザイナーとしてメーカーで約7年働きました。マーケティングやリサーチはまだまだ初心者。デザインの力を使ってみんながニコニコできるようなものを作れたら嬉しいです。アニメ、漫画、手芸、落書き、クレイアニメーション…、ちまちま何かを作るのが好きですが、大雑把で不器用…。細やかさを欲しています。

  • えとじやお針子

    えとじやお針子(ライター)。マーケターを5年したあと、マーケティング博士号取得、その後、リテールサービス企業のマーケ部長に。なんと、えとじやクライアント&えとじやブログのライター。 理屈も現実もそのはざまも経験、マーケティングの仕事ってなんなの?どうしたらいいの?という悩みにはいちばん共感できる立場かも。

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